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2007年12月15日放送

米連邦準備制度理事会(FRB)と欧州中央銀行(ECB)、そして、英、スイス、カナダの5つの中央銀行は12日、共同で短期金融市場に資金供給を行うと発表した。これら5つの中央銀行がサブプライム問題で協調するのは初めてで、極めて異例な措置である。FRBは最大400億ドルの資金供給を実施する予定で、ECB、スイス国民銀行はFRBと半年間にわたりドル資金を融通し合う。  欧米の短期金融市場では、サブプライム問題の余波で信用収縮への懸念が強まっているうえ、年末にかけて金融機関の資金需要が急速に高まっていることから、市中金利が急上昇していた。各国中央銀行は緊急に大量の資金を供給することで、金融システムの維持を図る考えだ。

こうした中央銀行の対応を受けて、市中金利も徐々に低下している。ロンドン銀行間市場の米ドル1ヶ月物の金利水準を見ると、一時は5.2%まで上昇していたのが、今回の発表後、木曜日の段階で5.0%近辺まで低下してきている。中央銀行による大量の資金供給は足元の金利を低下させるという点では一定の効果があったということになる。ただし、資金供給は、サブプライムローン問題の根本的な解決にはつながらないことは頭に入れておく必要があるだろう。

11月にシティグループがアブダビ投資庁から75億ドル(約8400億円)の出資を受けることを明らかにしたが、スイスの大手金融機関であるUBSもシンガポールの政府系ファンドと匿名希望の中東投資家から合計130億フラン(約1兆3000億円)の出資を受けると発表した。UBSはサブプライムローンに関連して100億ドルの追加損失を明らかにし、その同日、資本増強策を発表するという形をとった。政府系ファンド、オイルマネーなどが民間の金融機関経営危機を救済するということで金融市場にもやや安心感がでてきている。しかし、今後も損失が拡大する可能性があるため、依然として予断を許さない状況にあるので間違いない。

米国金融市場も依然として不透明な状況が続いているが、中国でも景気拡大への懸念材料がでてきた。インフレ率の上昇である。直近11月の消費者物価指数を見ると、前年同月比で+6.9%と急上昇している。資源価格の高騰や食料品の値上がりなどが物価を押上げているためだ。中国人民銀行はインフレ抑制のために金融引締めを継続的に実施しているが、効果は今のところ見られず、今後さらに引締めを強化する必要がある。また、インフレ抑制のために人民元の上昇速度を速める必要もあるかもしれない。そしてこうした金融の引締めや人民元の上昇は景気拡大の阻害要因となる可能性がある。

来週はクリスマス休暇前ということで、市場の取引も徐々に閑散となっていく。米国大手証券会社の決算発表など、波乱要因が残されているものの、基本的にはクリスマス休暇に向け、動きは鈍ってくることが予想される。サブプライムローン関連で新たな材料が出てこない限り安定した動きをする可能性は高いと考えておきたい。ドル円は110-114円、ユーロ円は162-166円内でのレンジ相場となると予想する。

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