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2007年8月25日 放送

今週に入ってから、金融市場全体が徐々に落ち着きを取り戻し始めている。先週の金曜日に米連邦準備銀行(FRB)が公定歩合の0.5%引き下げを決定して以降、米国株式市場が安定してきたことが背景にある。今週もサブプライムローン関連の新たなニュースが出てはきたが、市場がこうしたニュースに反応しなくなってきているのは、FRBが金融沈静化に向けてのスタンスをはっきり示した効果だと言えよう。

こうして米国の株式市場の動揺が落ち着いてくると、各国の株式市場でも株価が上昇に転じた。日経平均株価は一時1万5200円近辺まで下落する局面があったが、今週に入って1万6000円台にまで回復してきている。為替市場も先週の金曜日にはドル円が一時111円60銭までドル安円高が進んだが、今週に入って急速に値を戻し、先週の大幅な円高が進行する前の水準である117円台を回復する場面も見られた。

こうした急激な円安傾向の背景には、先週までの大幅な円高によって、投資家のリスク(円ショート)がかなり軽減していたということが挙げられる。米国のファンドなどが活用しているシカゴ先物市場IMMの通貨先物における、非商業部門の建て玉の推移を見るとその傾向がはっきりとわかる。ドル円が124円台にまで上昇する局面では円売りのポジションが急増していたが、直近の8月14日時点では円ショートが急減していることがわかる。8月15-17日にかけて大幅に円高が進行していることも考慮に入れると、先週末の時点ではほぼ投機筋の円売りは解消されていた。そうした状況下でFRBが公定歩合の引き下げを決定したため、より効果が高かったということが推測できる。

今週、日銀は政策決定会合を開催し、政策金利の据置きを8:1で決定した。本来であれば今回0.25%の利上げが実施されるとの見通しであったが、金融市場の混乱に配慮して、今回は利上げを見送らざるを得なかったということであろう。ただ、会合の後の会見で福井総裁は、早期利上げの可能性については言及しなかったものの、景気や物価など日本経済に対する見方はこれまでのものを踏襲しており、市場環境が落ち着けば、利上げを実施する可能性は残した。

サブプライムローン問題が巻き起こした市場の混乱は一旦は収まった。しかし、9月以降にサブプライムローン問題の影響が再燃する可能性は残されていることなどから、投資家も新規投資に慎重になってくるであろう。今週は、行き過ぎた相場の修正が起きたものの、ここからの更なる円安進行はやや難しそうだ。来週は市場が落ち着きどころを探る一週間となってくると考えられる。

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