今週9日の木曜日、仏大手銀行のBNPパリバが、サブプライムローン証券に投資していた傘下のヘッジフンド3本の資産を凍結すると発表した。大手金融機関のこうした措置に金融市場では不安が広がり、短期金利が急上昇した。
こうした事態を沈静化するために、欧州中央銀行(ECB)は短期市場での約15兆円をいう巨額の緊急資金供給を実施。その後、米連邦準備銀行(FRB)やカナダ中央銀行なども、それぞれ、緊急資金供給を実施している。また、10日の東京市場では、日銀も約1兆円の資金供給を実施したが、こうした各国中銀の対応が、事態の深刻さを逆に鮮明にしてしまっている。
今回のサブプライムローン問題は、サブプライム担保証券の問題だけに留まらない。ここ数年、過剰流動性によって、各証券市場での信用スプレッドが非常に低水準で推移していたが、7月から8月にかけてスプレッドが急拡大した。その後若干スプレッドは改善したものの、週後半の混乱によって、再び拡大している。
こうした各証券でのスプレッドの拡大によりサブプライムローン担保証券以外の証券の価格も低下し、その結果投資家の損失は更に広がる結果となっている。
(※信用スプレッド・・・リスクプレミアムを反映して金融商品間に生じる金利差)
米国株式市場も今週の前半から半ばにかけては回復基調を見せていた。投資家の中にもダウ平均株価も再び14000ドルに向かうのではないかとの期待が広がっていた。しかし、木曜日に発生した信用不安の再燃により再び株価は下落、米ダウ平均株価は前日比387ドル安という大幅な下落を記録した。これで再び米株式市場は不安定な状態に後戻りしてしまった。
最近の円相場は米国株式市場の動向に非常に敏感に反応する。米国株式市場が上昇すれば円売り安心感から円安、逆に米国株式市場が下落すれば、円売りの巻き戻しから円高という非常に単純な構図が続いている。米国株式市場が再び混迷の度合を強めたことで、円相場でも不安的な動きが再発し、金曜日の東京市場ではドル円は再び117円台にまで下落した。
各国中央銀行が短期市場での緊急資金供給を実施するなど、サブプライムローン問題の影響が深刻化している。これから先、この問題に関して新たな損失などが発表される可能性は否定できない。影響の全貌がある程度はっきりと見えてくるまでは、市場は混迷を続けるであろう。
投資家に不安心理が広がっている中、市場の取引も縮小し、値幅も非常に荒い展開が続いているが、来週もこうした傾向は続くであろう。サブプライムローン関連ニュース、それによる米国株価の動向に振り回され、円相場も乱高下をする展開が続きそうだ。