日本の景気が少し足踏み状態にある。今週発表された国内鉱工業生産は前月比で予+0.9%程度と予想されていたが、実際は-0.4%という結果となり、これで3ヶ月連続で前月比マイナスになった。2月は前月比プラスであったがこれは1月の落ち込みが大きかった反動によるものであり、今年に入ってから弱めの状態がずっと続いているということになる。
昨日の金曜日に発表された国内消費者物価指数(除く生鮮品)は前年同月比で-0.1%と予想通りの結果となった。4月も指数は-0.1%で、5月も同様の結果となったことで、物価は依然として上昇していないということを確認することとなった。昨年は6月から8月にかけて原油価格が非常に高かったことを考慮するとおそらく6月の数字も上昇には向かわない可能性が高い。
日銀の福井総裁は、6月15日の政策決定会合後の会見で「先行きの経済・物価の動きについてより確証を持つ必要があり、現段階では確認すべき事項が非常に多い」と発言している。その後発表された鉱工業生産、消費者物価指数ともに低調で、確認すべき事項が利上げに踏み切るにはマイナスという結果になってしまっているわけである。これで、経済・物価動向から利上げを早期に実施することは非常に困難になった。
日銀の利上げが後ずれするという観測から、為替市場では円安が更に進行している。しかし、こうした動きに対して、各方面から懸念の声が出始めている。IMFは以前より円が長期的に強くなる必要性を主張していたが、先日BISが年次報告書の中で「現在の円安の動きは異常である」と最近の円安傾向に懸念を表明した。また、国内でも円安について若干憂慮する動きが出てきている。尾身財務相は会見で「(現在の)為替相場を注意深く見守っている」と発言した。また、G7では偏った動きは望ましくないという見解で一致しているという点を強調するなど、全体的に円安懸念を若干持っていると取れるような表現を使った。今後、国際間での円安に対する懸念は徐々に高まってくるであろう。
来週2日に日銀短観第2四半期分が発表される。市場関係者の予想は第1四半期並みというのが体制を占めているが、短観も驚くほどの改善を見せていない限り現状の円安傾向を止める材料になりそうもない。7月利上げの可能性が低くなってきた現状では円安傾向が依然続くと考えておいたほうが自然であろう。しかし、円安が進めば進むほど各国の円安に対する警戒感は高まる。各国の要人発言に注目をしておきたい。