円相場でもドル高円安が鮮明になってきた。2007年前半は一時122円台をつけたドル円相場であったが、その後、上海株式市場が急落したことによる円の急騰の影響で115円台にまでドル安円高が進んだ。しかしその後、日本の低金利を背景とした、国内から海外への投資資金の流出が続き、円相場も徐々に円安が進行。今週の木曜日にはとうとう121円台にまで上昇した。
今回のドル高円安の背景には、日銀による早期利上げ観測が大きく後退したことが背景にある。今週木曜日に発表された国内実施GDP成長率07年第1四半期の結果は、前期比年率で+2.4%となったが、これは市場予想の+2.7%を若干下回っている。2月に日銀が利上げへ踏みきった時は、直前に発表された06年第4四半期の実質GDP成長率が予想を大きく上回ったことが、決定打になったといわれている。そのため、今回の07年第1四半期のGDPに市場の関心が集まったが、結果は予想より低かったということで、日銀による早期利上げ期待が後退したわけである。
また、金融市場も冴えない。株式市場を見ると、世界各国の株式市場の多くが史上最高値を連日更新している一方で、日本の株式市場は伸び悩みを見せている。日経平均株価は17000円台で膠着状態に入り、新興市場に至っては、年初来最安値を更新する展開が続いている。また、長期金利も上昇してこない。10年物国債利回りを見ても、4月に一時1.7%台まで上昇する局面はあったものの、その後は1.6%台での低位安定の動きが続いている。
一方の米国経済であるが、こちらは一時期に比べると再び回復の様相を呈している。今週発表された米住宅着工件数は年率換算で予想148万戸のところ、153万戸と改善を見せており、住宅市場の落ち込みがやや落ち着いてきたことを示唆する結果となった。また、新規失業保険申請件数が大幅に減少していることで雇用環境が改善してきている可能性もでてきている。こうした相次ぐ好調な経済指標を受けて利下げ期待が急速に後退し、長期金利は再び上昇してきている。それに伴って、為替市場でのドル買いムードが高まってきていることも、ドル円相場でのドル高円安に拍車を掛けることとなっている。
注目の国内GDPの発表も終わり、市場には目新しいテーマがなくなってきている。政治的には6月6−8日にサミットがあるが、ここでも最近の円安に関しての踏み込んだ議論がされる可能性は低くなってきた。足元の米国経済の堅調さと、円の低金利を背景とした、ドル高円安の基調は継続するであろうが、動きはかなり緩慢なものとなる公算が高い。材料難の中、当面動意の薄い市場展開が続きそうだ。