日本酒の味を極限まで追求し、酒好きを唸らせる純米大吟醸「獺祭(だっさい)」。その最高級品は、白米を100時間以上かけて精米。77%を削り、残りの23%を使ってつくる、その名も「二割三分」という酒です。
この究極の味を生み出したのは、山口県の酒蔵「旭酒造」です。230年以上の歴史がありますが、従業員14人足らずの小さな酒蔵。しかし、非上に革新的な酒造りをしています。
年に一度冬の寒い時期に、酒造りの職人・杜氏が1年分のお酒を仕込む…というのが、よくある普通の酒造りですが、「旭酒造」は、この長年の経験だけに頼った伝統的な酒造りをやめてしまいました。旭酒蔵のポリシーは「酒は“技術”で作る」ということ。杜氏を置かず、平均年齢31歳という若い社員が各工程を分担し、データに基づく品質管理を徹底。こうすることによって、年間通して安定した品質の酒造りが可能になりました。また、日本酒造りでは初めて「遠心分離機」を本格的に導入。新たな味を創り出すことに成功しています。
しかし、なぜこれほどまでの大改革を遂行し得たのでしょうか。それは、旭酒蔵が廃業寸前の危機的な経営状態にまで追い詰められていたからです。それは1980年代のこと。過去にとらわれず、最高の品質だけを追求して、「獺祭(だっさい)」ブランドを創り上げていったのです。
「良い酒は、誰が飲んでもおいしい」と言う桜井社長は、今も酒造りの“革新”に挑戦しています。