360万人の巨大都市、横浜の電力の4割を賄っている磯子火力発電所はJ−POWER(電源開発)が運営する発電所です。その電気を起こす燃料となるのが黒いダイヤ「石炭」です。石炭は世界的に広く採掘場所が分布していて、今後133年も採掘が可能と言われる化石燃料ですが、同時にデメリットも抱えています。CO2の排出量が極めて多いのです。この大きなデメリットを緩和してくれる方法が磯子発電所にはあります。蒸気タービン発電機の温度と圧力を限界まで高める「超々臨界圧」という技術で、燃料を燃やして得たエネルギーからどれだけ電気をつくれたかを示す発電効率は、世界最高水準の43%を達成しています。効率が良ければそれだけCO2の排出量も少なく、磯子発電所では従来比で1割減を実現。まさに環境型の火力発電所なのです。
そしてもう一つ、この発電所には特長があります。磯子発電所の敷地面積は僅か12ヘクタールで、J−POWERが所有する発電所の中では最もコンパクト。それにもかかわらず、横浜の電力の4割を賄う発電能力を持てるのはなぜなのでしょうか。その答えは発電所の設計にあります。石炭を燃やすボイラーをビルのように縦長に設計。従来比で2割も面積を削減しました。立地条件が限れるエリアにも対応可能な、まさに都市型発電所なのです。
環境重視&都市型という石炭火力のニューモデルは、今後、大きな可能性を秘めています。石炭火力は、二酸化炭素排出大国の中国やアメリカなどで主流の発電方式ですが、もし中国、アメリカ、そしてインドの火力発電をこの磯子モデルに置き換えることができれば、年間13億トンにものぼる二酸化炭素の排出削減につながると試算されています。ちなみに13億トンというのは日本の年間排出量と同等です。
J−POWERの火力発電は、環境の時代だからこそ求められる技術。その海外展開が期待されます。