人が歩くだけ、車が走るだけで電気が生まれる。日常生活の中で生まれるさまざまな振動から発電をする究極のエコ発電が今、注目されています。太陽光や風力に続く第3のクリーンエネルギー、その名も「振動発電」。開発したのは慶應義塾大学の大学院生でベンチャー企業、音力発電の社長、速水浩平さん、27歳です。「世の中には無駄に捨てられている振動がたくさんある。一つ一つは小さいがチリも積もれば山となる。それを有効に活用したい。」と話します。
4月初め、藤沢市役所の玄関に発電する床、"発電床"が設置されました。発電床では体重60キロの人が1秒間に2歩歩くと0.1〜0.3ワット発電できるといいます。では、なぜ床が発電するのかというと、その秘密は、床の中に仕込まれている圧電素子にあります。圧電素子は100円ライターやスピーカーなどに使われている素子で、外から力を加えると電気が生じる性質があります。速水さんは小学生時代にこの原理を知り、以来20年近くその可能性を追求し続けています。現在は発電床のほか、振動を利用した"電池のいらないリモコン"や歩くと発電する"発電下駄"、釣りに使う"発電ルアー"など夢のある商品を開発中。「発電効率を上げることが今後の課題。将来は今の発電効率の100倍を目指したい。」振動発電はまさに使うところで電気を作る地産池消エネルギーなのです。
2007年には首都高速道路の五色桜大橋に振動発電機を設置。自動車が走ったときに生まれる振動を利用し、橋のイルミネーションを灯す電気の一部を供給することに成功しました。また、昨年12月には渋谷駅前に発電床を設置するなど実証実験を重ねています。「仮に首都高の全てに発電床を敷き詰めた場合、東京の全家庭の電力の半分を賄える」と速水さん。将来、首都高が原子力発電所一基分に相当する電力を発電できるという試算もしています。そんな速水さんが描く振動発電の未来。それは、2020年には振動発電を普及させ、道路だけでなくビル、公園など街全体で発電が可能な社会をつくるというものです。