北京オリンピックを無事に終え、世界の表舞台へ大きな一歩を踏み出した中国。しかし、株価は下落する一方で、高水準のインフレが続いています。新興経済大国としての勢いにブレーキがかかってきました。
「中国は多くの懸念材料を抱えている」と、多摩大学大学院の沈才彬(ちん・さいひん)教授は、言います。中でも、「2つの8%」を中国政府は警戒しているというのです。それは、インフレ率の上昇、経済成長率の低下。いずれも8%が危険水域であり、今、そのふたつの8%を突破寸前だというのです。このため、中国政府は、2010年の上海万博を迎えるまで、「インフレ率を上げないようにする防止策」、それと同時に、「8%の成長を確保」という非常に難しい舵取りを迫られているのです。
また長期的に見ると、「2013年に、中国は日本を抜き、アメリカに次ぐGDP世界第2位の経済大国になる」(沈才彬教授の予測)というのですが、そこにも二つの危険が待ち受けています。「米中摩擦」と「民主化運動の高まり」。このふたつの難題を、いかに乗り越えることが出来るかが、重要になってくるとのです。しかし、中国は工業化、都市化が未完成であり、富裕層の増加による市場の拡大によって、一時的に経済が沈没することがあっても、そのダメージは比較的、軽微なものとなるとも予測しています。
沈教授は、今後の日中関係には、お互いに「揚長避短」(自分の長所を活かして、自分の短所を避ける)という戦略が必要だと言います。日本は「高い技術力」という長所を持ち、「コスト高」という欠点を持っています。一方、中国は「技術力は未熟」ですが、豊富な労働力を背景にした「価格競争力を持っている」だけに、お互いが補完関係を築きあげることができるというのが、沈教授の見方なのです。