北京オリンピックを終え、2010年に開催される、次のビッグ・イベント「上海万博」のための準備が着々と進む中国。
しかし、オリンピックをきっかけに、中国は、環境問題、民族問題をはじめ、様々な問題を国内に抱えていることを露呈しました。「食の安全」も、そのひとつです。8月に入って、「毒ギョーザ問題」が再浮上。一旦、回収したはずの商品が流通して、消費者が健康被害を訴えるという事件も起きました。こうしたトラブルの絶えない中国では、「食の安全」に、不安を抱える人々は少なくありませんが、一方で、それはビジネスチャンスであると言えます。
「安全な有機野菜を中国の人にも食べてもらいたい」という思いで、ひとりの日本人社長が、上海市内で、ベビーリーフ野菜の生産・販売ビジネスを始めています。工藤康則社長が、ベジタベというブランドで売り出した野菜は、有機栽培で育てられています。水は自らの施設内でろ過、浄水し、土は、2000万円以上も投資して、内モンゴルやカナダから運び込むという念の入れようです。値段は、一般市民が市場で買い求める野菜に比べて、30倍も高いのですが、高級ホテルを皮切りに、外資系のスーパーなどへと販路を拡大し、年々、売り上げを伸ばしています。
中国の 大手食品メーカーも、極力、農薬を使わずに栽培する「緑色野菜」というカテゴリーの野菜を生産し、市場に投入。大きな成功をおさめています。生活レベルが飛躍的に向上している上海などの大都市圏では、徐々に、「安全はお金を出して買うもの」という意識が芽生え始めているようです。
青島大学で中国の「食の安全」について研究をしている大島一二教授は、現状について、「かなり改善されてきてはいる」としながらも、「輸出用の検査基準が厳しい安全な野菜」と、「国内用の検査基準の甘い野菜」が流通しているという「ダブルスタンダード」こそが、最大の問題と指摘しています。
多くの食糧を中国に頼らざるを得ない日本であるだけに、生産技術面でのサポートもさることながら、品質管理といった面でも、さらなる協力を提供する必要に迫られています。