「常に、総需要を拡大するような商品をメーカーが提案していかなければならない時代」
と、キリンビールの三宅社長は語ります。
少子高齢化時代、若い世代の「お酒離れ」、さらには、原材料の高騰に伴う値上げ…今年に入り、ビール類の出荷が落ち込んでいるのです。
定番商品であるラガービールが120周年を迎えたキリンビールは、そんな厳しい状況下、戦略の見直しを進めています。そのキーワードは、ズバリ、「健康志向」。例えば、発泡酒では初めてとなるカロリーオフ、糖質を0におさえた新商品「麒麟ZERO」。夏の売り上げピークを前に、年初来の売り上げ目標を発生するほどのヒット商品となりました。こうした取り組みによって、発泡酒、新ジャンルの分野で、キリンビールはトップシェアを維持しているのです。
2007年7月に、持ち株会社制が導入され、キリンビールは、キリングループの中で国内の酒類事業全般を担う中核カンパニーに位置づけられました。三宅占二社長は、徹底した現場主義を唱え、社内だけでなく、関連会社のスタッフも巻き込み、横の連携を強化するなど、様々な改革を推し進めています。
すでに、小売店の店頭では、新たにグループ企業となったメルシャンの営業マンと連携を取ることによって、新しい売り場作りを提案。嗜好の多様化する消費者に、グループ会社が一体となって幅広い商品の魅力をアピールする…といった相乗効果を狙った試みも始まっています。
さらには、グループ以外の食品メーカーや、ときには、ライバル企業とのコラボレーションも展開。サッポロビールと一部の地域で共同配送、そして、サントリーと資材の共同調達を実施したり…など、「競争と協調」という戦略を打ち出しています。 「一つの企業だけで出来るコスト削減には限界があるし、コラボレーションには、配送などで排出されるCO2の削減といった面で、大きな効果が期待できる」(三宅社長)
「食と健康」というトレンド、そしてグローバリゼーションが進む中、キリンビールは様々な戦略を打ち出し、新たな需要の掘り起こしを目指しています。