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第379回 2008年4月19日 放送

「ストップ地球温暖化」…全世界で256億トンといわれている温室効果ガスの排出を抑制するために、1997年に議決された京都議定書。1990年当時の排出量を基準として、2012年までに、EUは8%、アメリカは7%、日本は6%という、CO2の削減目標が設定され、その目標達成にむけての三つの手段、いわゆる「京都メカニズム」も議定書の中に盛り込まれました。

1.CDM (クリーン開発メカニズム)
 → 先進国(の事業者)と途上国(の事業者)が共同で温室効果ガスの削減に取り組み、排出権(温室効果ガスを、これだけなら排出しても良いという権利)を生み出す仕組み
2.JI (共同実施)
 → 数値目標を課せられた国(の事業者)同士が、排出権を作り出す仕組み
3.排出権取引
 → 温室効果ガスを排出できる権利の売買

この「排出権取引」には、様々なケースがありますが、例えば…

(1)CO2を排出するAという企業と、Bという企業がある

(2)企業Aは、削減目標が設定されているにもかかわらず、CO2の排出量が上回ってしまった

(3)企業Bは、技術革新によって、目標よりも大幅な削減に成功

(4)企業Aは目標達成のため、企業Bに対し金銭を支払い、排出権の買い取りを申し入れ

(5)企業Bは、「排出権」(排出しても良い量の権利)を企業Aに売却

こうした取引を行うことができる制度なのです。

すでに、ヨーロッパでは、京都議定書の枠組みの外でも、これらのルールを駆使しての地球温暖化対策が進められています。2005年にスタートしたEU域内の排出権取引制度によって、すでに市場も形成され、CO2 1トンあたり16ユーロ、日本円にして4000円ほど(CDMクレジット)が相場となっています。「空気はタダ」という時代は終焉を迎えたのです。

しかし、深刻な公害問題と2度のオイルショックを経験し、それを教訓として省エネや環境対策が進み、世界トップクラスの技術を持った日本企業にとってみれば、「これ以上、改善する余地が無い」ケースもあり、「不利だ」という悲鳴も上がっています。「長年、努力をしてきたのに報われず、さらには、金銭まで払わなければならない」ルールになっているのは、理不尽だというわけです。

こうした不公平感を解消することこそ、最優先課題。北海道洞爺湖サミットでは、いわゆる「ポスト京都議定書」についても議論が交わされることになっています。「切り札」と期待されながらも、まだまだ話し合いが必要な「排出権取引」…地球の温暖化対策は「待ったナシ」の状況にあります。

「ポスト京都議定書への議論では、明確な未来社会へのビジョンの提示を」


まるで、黒板に書きながら講義されているように理路整然とお話しになる松尾さん。頭がとても切れる人なのだろうな、という印象の強い方でした。また、排出権に対する想いは熱く、放送が終わった後もいろいろと教えて下さいました。個人レベルでの排出権取引もお考えのようで、軌道に乗れば、国や大企業が対象に思いがちな排出権はかなり身近な存在になるのでしょう。

最近、取り上げられる機会が増えている排出権取引ですが、その仕組みはまだまだ広く理解されてはいないのではないでしょうか。確かに簡単とは言えないですが、松尾さんのこの一言でその狙いがよくわかりました。それは「環境に配慮している人が損する仕組みは上手くいかない。配慮している人が得するシステムを作り上げた。その一つが排出権取引」。なるほど!頑張らないと損をするなら、人は頑張ってしまうでしょうね。

国ごとの事情や考え方が違うため、なかなか前へと進まないことも多い地球環境問題。キレイな地球を次世代に残す一つの手段として、排出権取引に一層注目していかなければと思いました。

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