榊原・嶌のグローバルナビ


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第370回 2008年2月16日 放送

サブプライム問題によって、アメリカの大手金融機関の業績が急速に悪化しています。 2007年の下半期に計上された損失額はシティグループで3兆1000億円相当。メリルリンチでは2兆5000億円相当にものぼり、モルガン・スタンレーとバンク・オブ・アメリカも巨額の損失を出しています。

サブプライム関連の損失はどこまで膨らむのか。終わりの見えない恐怖に株価の下落が止まりません。NYダウ平均株価は昨年10月のピーク時から、一時2000ドル以上も下落し、市場心理は冷え込んでいます。厳しさを伝える数字は株価だけではありません。今月発表された雇用統計を見ると景気動向を敏感に反映する非農業部門の就業者数が前の月に比べ1万7千人減少、4年5ヶ月ぶりにマイナスへと転落しました。ブッシュ政権は、個人の所得減税を柱にした総額18兆円の緊急経済対策を打ち出しましたが、その評価は今一つ。FRBは、1月だけで1.25%という大幅な利下げを実施しましたが、市場は満足せず、追加利下げへの期待を強めているのが現状です。

一方、商品相場も緊急事態を迎えています。サブプライムショックで混乱が続く金融市場から投資マネーが逃げ出し商品市場へと流入。原油や穀物価格が急騰する一因となっているのです。景気の減速と物価の上昇が同時に起きるスタグフレーションは最も避けたい事態。しかし今、その危険性だけが日に日に増しています。

また、サブプライム問題の影響は世界経済の成長のエンジン、新興経済国にも及んでいます。『中国の金融機関がサブプライム問題で巨額の損失を受けた…』そんなウワサから、先月22日、上海や香港の株式市場で株価が急落しました。その影響はすぐにインドへと飛び火し、ムンバイの株式市場では過去最大の下げ幅を記録。まるでパニックに陥ったかのように売り注文が殺到したのです。

そして、日本の株価も深刻です。昨年7月、1万8000円台をつけていた平均株価は2年余り前の水準まで下落。景気回復によって積み上げてきた貯金を吐き出してしまいました。

こうして世界同時株安が深刻さを増し景気減速への懸念が強まる中、「G7=先進7か国財務大臣・中央銀行総裁会議」が東京で開かれました。共同声明には、世界経済が困難で不確実な環境に直面している」との危機感が示されましたが、具体的な政策となると「適切な行動をとる」とするだけ…。結局、会議を通して浮き彫りになったのは各国の政策協調が如何に難しいか、ということ。世界は、いつになったらこの混乱を乗り越えられるのでしょうか。そのシナリオがなかなか見えてきません。

「アメリカの景気は悪くなるのは避けられない。ドル暴落も懸念されるが、緩やかであれば輸出で取り戻すことができる。その点が日本のバブルとの違い。」 。


ほんの半年前まで、世界経済は行け行けドンドンでしたが、サブプライム問題で状況は急転。それまで聞いたこともなかった「サブプライム」という言葉が、お茶の間でも使われるようにもなりました。世界中の株価も大幅に下落し、やっぱりアメリカの存在は大きいんだな、と実感せざるを得ない状況です。今回のゲスト、櫨さんのお話しによるとサブプライム問題が収束するには2年はかかる、とのこと。日本の「失われた10年」ほどの長さはなくても、2年もすると世界も相当変わってしまうのではないでしょうか。

サブプライム問題は、ドル安を引き起こしています。あるスーパーモデルが「ギャラはドルではなくてユーロで」と言ったとか。ドルを持っていれば安心な時代ではなくなってきているようです。世界の中心はアメリカ、という時代でもなくなってきているようです。

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