中国政府が、環境対策に躍起になっています。今年開催される北京オリンピックを機会に、「環境汚染大国」という不名誉なレッテルを拭い去ろうと、新たな政策・規制を次々と打ち出しているのです。しかし、そんな決意とは裏腹に、北京に青空は帰ってきません。
連続して2桁成長を遂げる中国経済の発展の速さは、環境にも、同様の速さとスケールで負荷をかけています。事態を深刻にしている最大の要因は、「日本の8倍」というエネルギー効率の悪さにあります。石炭燃料に頼らざるを得ない中国。しかし、石炭は石油に比べてみても、20%も多くCO2を排出するのです。この「石炭依存」という体質からの脱却こそが、緊急の課題ではあるのですが、コストやインフラ整備といった点から、「遅々として進まない」というのが実情です。
こうした状況に目をつけたのが「チャイナ・ボーチー」という中国で、今、最も勢いのあるベンチャー企業。石炭火力発電所をターゲットに、脱硫装置といわれる、硫黄酸化物の除去装置を設置するビジネスを展開し、ここ数年で、年商を日本円で330億円にまで伸ばしている会社です。
このチャイナ・ボーチーは、日本企業とライセンス契約を結び、レベルの高い環境対策技術を導入することで急成長を果たしました。中国国内で圧倒的なシェアを誇り、東証に1部上場を果たした「初めての中国企業」です。この会社を率いるのは、32歳という若さの白雲峰(バイ・ユンフン)総裁。「中国の環境問題を解決するために、日本の技術を導入するのは必然だ」と、そのビジネスモデルの強さに、絶対の自信を持っています。
ゲストの日本貿易振興機構(ジェトロ)の林理事長も、「中国の現状打破のため、高い技術力を誇る日本企業にとって、ビジネスチャンスは広がっている」と語ります。環境対策はコストがかかるために、企業にとっては負担に過ぎなかった時代は、中国でも終わりを告げ、その問題解決のための技術が「売れる」ようになってきているのです。
一方で、市民の環境に対する意識をもっと高めていこうという動きも、ようやく出てきました。日本企業も、その後押しを始めています。例えば、ソニー。中国国内でソニー製品が1台売れるごとに、10元(およそ150円)を寄付。その寄付金は、中学や高校の「環境教育」のテキスト購入に使われたり、環境教育の教員育成などに役立てられています。
深刻化する一方の中国の環境問題ですが、日本が、その解決のために果たすことが出来る役割は、どうやら、「技術の提供」だけではないようです。
2008年は北京オリンピックの年。ということで、中国の話題を聞かない日はないような気がします。ただ、それは楽しい話ばかりではなくて、その一つが中国の環境問題です。中でも北京の大気汚染は深刻です。私も去年、北京を訪れましたが、晴れている日でも、スモッグがひどく空はどんより。マスクをして外出をすると、そのマスクの表面が灰色に。林さんも「北京の青空を見られることは稀。私は幸運にも青空を見ました」、と話されていましたが、本当に運が良くないと青空が見られないのです。
しかし、中国政府も本腰を入れ始めました。「北京オリンピックのときは青空をみせる」そうです。オリンピック期間中だけでは、ずいぶんと短い間ですが、見方をかえれば、空気をきれいにしようと思えば出来るのでは?と思うんです。目指すのは『藍空』。できればオリンピック以降も藍空が広がる北京であって欲しいと思います。