11月26日に発売された東洋経済新報社発行の週刊東洋経済「サブプライム危機と真相」が好調な売れ行きを見せています。週刊東洋経済の1週間の平均の売上部数は8.5万部ですが、この号はすでに11万部を突破、書店では完売のところが続出し、3万部も増刷をしたほどです。
週刊東洋経済は明治28年に創刊され113年の歴史を誇る日本で最も古い週刊誌なのですが、いまライバル各誌との激しい競争の中にあります。部数自体は日経ビジネス、週刊ダイヤモンドに続く第3位ですが、部数の伸び率(07年上期)では前年同月比12.1%と、経済誌では唯一2桁をマークしました。
部数競争の勝敗の鍵を握るのは、巻頭を飾る特集記事です。特に、表紙を飾るタイトル如何で売上部数が大きく変わってくるため、編集長を始めとする編集部のスタッフは、タイトルをどうするかに一番悩みます。反響を呼んでいる「サブプライム危機と真相」も、企画の最初の段階では「徹底解明!暴落の始まり」というタイトルでした。経済の専門用語を打ち出した号は売上が平均に届かないことが多いため、サブプライムという言葉が読者に受け入られるかどうか不安があったのです。
編集長曰く、売れるタイトル作りは「読者に当事者問題だと思わせるような言葉を選ぶこと」が秘訣とのこと。経済専門誌に於いても読者の視点に立つことが大切なのです。実は、この号のタイトルが決まったのは発売の1週間前。サブプライム問題がより深刻化し、日本でも株価が大幅に下落、景気への懸念も強まったことから「サブプライム」という言葉を前面に打ち出していくことになりました。結果としても、その直球勝負が功を奏したのですが、編集長は入稿直前まで悩みに悩みました。
また東洋経済新報社がもう一つの柱としている雑誌が「会社四季報」という投資情報誌です。3ヶ月毎に年4回発行されていて、毎年平均245万部も売れる大ベストセラーです。そこには3946社にのぼる上場企業の情報が掲載されていて、特に最大171字という限られた字数の中で書かれる業績予想が投資家の注目を集めます。その業績予想を書くのはおよそ100人の記者で、一人当たり40社〜50社程度の企業を担当していますが、株価を動かす影響力を持つだけに責任は重大です。
記者歴7年目の風間さんは「企業の株価を大きく左右するため、取材する側のプレッシャーは大きい」と話します。しかし、風間さんはこうも語ります。「ただ数字を羅列するのではなく、記者としての感覚、主観を短い行数の中に全面的に織り込んでいけるようなものを作ることが我々の付加価値であり、存在意義」と。会社四季報は記者一人一人の視点が支えているのです。
ところで、出版不況とよく言われるように雑誌の販売が振るいません。市場全体の売上部数は95年の39億冊をピークに下降していて、昨年は27億冊まで減少しました。こうした逆風の中で経済誌は意外なほど元気なのですが、その理由について柴生田社長は「独自の取材」が評価されているからと分析しています。インターネットでは入手できない情報、記者一人一人の取材力と独自の視点こそが強さの源泉なのです。
柴田さんも生田さんも知り合いにはいますが、その二つが重なった柴生田(しぼうた)さんという方は初めてです。それが私の社長への最初の印象でした。下のお名前も晴四(せいし)、これもまたはじめて聞くお名前、勝手に「晴れた日に生まれた四男なのかな?」と想像しています。ということで、お会いする前から私の中ではインパクトの強い方でした。
実際にスタジオでお会いすると、『週刊東洋経済』と『会社四季報』という看板雑誌の編集長を歴任されただけに非常に機動力のありそうな方でした。なぜなら、靴は黒のゴム底。鞄は雑誌が立てにジャストフィットするものを持参。スタジオには広報の方などの付き添い無しに一人でいらっしゃいました。また、話し方は非常に真面目で静かな感じですが、ご自身の意見をかなりきっちりとお話しされ、かなり骨太な感じでした。
さて、今回驚いたのは一般雑誌の部数の急激な減り方。雑誌全体の売上げ部数はピーク時に比べ3割ものマイナスです。確かに電車に乗っていても以前のように雑誌を見ている人は少なくなったと思いますけど、本屋に行けば目に付く所にずらっと並んでいて、書棚の前では何人もの人が立ち読みしています。ですから、そこまで減っているとはおもわなかったのです。
まあ、確かに、雑誌って結構たまってしまい、捨てるのも重くなってしまいがち。携帯で情報を得る方が「狭い部屋フレンドリー」です。だから一度読んだらだいたいの内容が分かってしまう雑誌は…。その一方で週刊東洋経済は女性読者も開拓し、部数は右肩上がりで伸びているとのことです。景気にも左右されるそうですが、何度も読み返したくなる、という点も経済誌が好調な理由かもしれません。雑誌の見方が少し変わりそうです。