「今年は、絶対に品質をやります」と、スタッフに力強く訴えるのは、ソニーの中鉢良治社長。「ソニーショック」と呼ばれる、難題山積の時代に就任してから、2年。今、業績は急速に回復しています。中鉢社長は、「商品力」、「技術力」、「現場力」という、三つの「チカラ」を挙げ、ソニーの改革に乗り出しています。
「商品力」を象徴するのは、薄型大画面テレビ「BRAVIA」。ソニーは、液晶テレビの分野では、大きく出遅れていました。「トリニトロン」と名付けられたブラウン管タイプのテレビが、非常に評価が高く、市場でも絶大な力を誇っていたからです。しかし、時代は、「究極の薄さ」を競う時代に突入。ここ数年は、他社に先を行かれたソニーの苦戦が伝えられていました。
しかし、「トリニトロン」で培ってきた技術とノウハウを駆使し、韓国サムスンとの合弁会社から液晶パネルの供給を受けるという、「協業と内製のコラボレーション」戦略をとることで、「BRAVIA」を生み出したのです。2004年度には100万台だったソニーの液晶テレビの全世界出荷台数は、今年度の目標である、1000万台に手の届くところまで来ています。トリニトロンでさえ、30年かけて、やっと成し遂げた数字をわずか3年で実現してしまう勢いです。
第2のチカラ、「技術力」の向上ためには、様々な取り組みが行われています。そのひとつが、デジタル一眼レフカメラ「α」事業。ソニーは、コンパクトタイプのヒットにより、デジタルカメラ市場では国内2位のシェアを誇っていましたが、更なる可能性を求め、デジタル一眼レフ市場に参入。「コニカミノルタから資産譲渡を受ける」形で、新たな事業を去年から展開。コニカミノルタの持つ技術と、ソニーの得意とするデジタル画像処理技術の融合によって、新しいモノ作りを目指しています。一方で、薄さ3ミリという、世界初の「有機ELテレビ」も発表。「ブレイクスルーを生み出す」という技術力の高さ、新しい技術を生み出すDNAが健在であることも、世に示しています。
そして、最後のチカラである「現場力」。「とにかく、スタッフが、ソニーで働くことに誇りを感じるような現場にしたい」というのが、中鉢社長の強い思いです。そのために、自ら、世界中の現場を歩いて回っては、スタッフに声をかけています。最前線で働くスタッフの生の声を聞くことこそ、現場力強化の第一歩。そんな社長のバイタリティが、グループ内にすっかり浸透し、今、ソニーは、内側から元気を取り戻しつつあります。
ソニー社長・中鉢良治さんをゲストにお招きしました。
今年もアジア最大級の規模を誇る映像・情報・通信の国際展示場会、CEATEC(シーテック)が開催されています(10月2日〜6日)。そこでソニーは大注目を浴びているんです。その関心の的というのは世界で初めて市販化に成功した「有機ELテレビ」です。
スタジオにもその有機ELテレビを実際に持ってきて頂きましたぁ!とにかく薄くて薄くて、本当に薄くてびっくりしました。なんと3ミリしか厚さがないんですって!!!しかも、薄いだけではなくて、映像もとても美しく、黒が本当に真っ黒なので、そのほかの色もとてもきれいに映し出せるんだそうです。画面の大きさは11型とまだ小さいですが、こんなテレビが私の部屋にあったらと想像するだけでうれしくなってしまいました。これからの課題は、大画面化と量産技術の確立だそうです。手頃な値段で大きな画面の有機ELが買える日が待ち遠しいですね。
中鉢社長は、「現場力」が大事だとおっしゃっていましたが、今回の取材を通して社員の皆さんのことを細かく覚えていて、とても大切にされていることがよく分かりました。あんな素敵なリーダーだったらついていきたいと思うに違いありません。
ソニーの更なる進化に期待大です。