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第350回 2007年9月22日 放送

年金記録の紛失に保険料の着服…不祥事が相次いだ社会保険庁への不信感は高まるばかりですが、少子高齢化が加速する中で制度として維持していけるのか、という年金制度の根幹に関わる問題があります。実際、国民保険の保険料納付率はわずか66.3%(06年度)。およそ3人に一人は支払っていないという、所謂「年金の空洞化」が進行しているのです。

年金の財源をどのように確保していくかが、これからの課題ですが、政府は既に04年の年金改革で税金負担割合をこれまでの3分の1から09年度までに2分の1に引き上げることを決めていて、その財源の候補として、消費税が検討の遡上に乗りそうです。また、より根本的な制度改革を求める意見もあって、民主党は基礎年金を全額消費税で賄う「税方式」を主張。日本経団連の御手洗会長も、「例えば基礎年金は税金でやった方がいい」と発言、税方式への理解を示しています。

橘木教授が提唱するのは消費税15%による年金改革です。月々の年金として単身者に9万円、夫婦に17万円支給するとしますと、必要な費用は消費税10%分に相当します。現行の5%と合わせると15%という税率になりますが、その代わりに保険料を支払う必要がなくなります。また、食料品など生活必需品への税率を抑える「累進消費税」を導入して暮らしへの影響を抑えるとしています。これにより未納問題や世代間の損得論議が解消されるとしています。橘木教授の改革案は一つの例ですが、年金制度の信頼と安心を取り戻すためには早急且つ抜本的な改革が必要なのです。

もう一つの大きな問題、格差がここ数年拡大しています。企業が労働費用の節約を図ったためで、06年は非正規雇用者が過去最多を更新、その数は1677万人です。働く人の3分の1が非正規雇用ということになります。その結果所得格差が発生し、"ワーキングプア"働く貧困層などという厳しい現実が生まれています。橘木教授も政府の対策に「掛け声だけで実態が伴っていない」と批判しています。

更に、所得格差の拡大は子どもの教育にも影響を及ぼしています。首都圏の中学校受験者は5万人を越え、07年は過去最高を記録。約5人に1人が受験しています。橘木教授は「親の所得が子どもの教育を決めるという時代は機会の平等に反する」と指摘。奨学金制度の充実、公立学校のレベルアップ、職業教育を充実させるべきだと主張しています。

年金改革と格差問題。福田新政権は有効な対策を示すことが出来るでしょうか。

今、日本の国民は「自己責任のアメリカ型」か「高負担高福祉のヨーロッパ型」か、選択を迫られている。

同志社大学経済学部の橘木俊詣教授をお迎えして、年金問題と格差の拡大についてお話を伺いました。

橘木さんの年金改革案はその財源に消費税を充てるというもので、月々の年金として単身者に9万円、夫婦に17万円支給できるとしています。今の国民年金が満額でも単身で6万6000円、夫婦で13万2000円程ですから、安心度はかなりアップしますが、そのために必要な費用は消費税10%に相当。現在の5%と合わせ、15%という税率になります。皆さんはこれをどう思われますか。消費税率が上がる代わりに保険料を支払う必要はなくなります。食料品などの生活必需品への税率を抑える「累進消費税」を導入すれば暮らしへの影響も抑えられる、ということです。

年金制度を今後どうするのか、という議論はこれから盛んになっていくと思います。税金にしても保険料にしても、負担をする人と年金を受け取る人がみな納得できて、安心できる制度になればと思います。

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