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第338回 2007年6月30日 放送

1987年、国鉄の分割民営化によって生まれたJRグループ。その中で、国内の鉄道貨物輸送を一手に引き受けることになったのが、JR貨物です。バブル崩壊以降、国内の物流量が減少したこともあり、90年代には経常赤字に苦しみ続けた時代も経験したJR貨物ですが、今、追い風が吹いています。国や企業の「環境対策」に対する意識が高まり、鉄道輸送が脚光を浴びているのです。

鉄道は、輸送単位あたりのCO2を営業用トラックの8分の1しか排出しません。環境負荷の小さな輸送機関なのです。トラックから鉄道へ、幹線貨物輸送の転換が、推し進められるようになりました。この物流革命を、「モーダルシフト」と言います。  このモーダルシフトの波に乗って、トラック輸送を得意とする、ヤマト運輸、佐川急便、日通などのフォワーダー(利用運送業者)と共に、JR貨物は、新しい物流サービスを次々と生み出しています。

例えば、「スーパーグリーン・シャトル列車」。これまでJR貨物は、貨物列車のサイズに合わせ、「12フィート」という大きさのコンテナをメインに、物流サービスを展開してきました。しかし、大型トラックで運ぶことができる「31フィート」という大型のコンテナを使うことで、これまで以上に、スムーズな「鉄道輸送とトラック輸送」の連携が可能となったのです。

さらに、トヨタが、国内の自動車部品輸送に専用列車を走らせるようになるなど、国内のメーカー各社が、この「モーダルシフト」に積極的に取り組むようになっています。

「環境に優しい」貨物列車ですが、課題が無いわけではありません。  そのひとつが、「輸送コスト」。トラックのようには小回りの利かない鉄道は、近距離輸送では、どうしても、コスト高となってしまいます。現状では、500キロまでの輸送の場合、コスト的には、トラックの方が有利。その対策として、JR貨物は、荷役作業にかかる時間や労力を 大幅に短縮することのできる、最新鋭の貨物駅への転換や、全ての業務をガラス張りにするIT化にも力を入れて取り組んでいます。

さらに、アジア経済の急速な発展を睨み、コンテナ船や、高速貨物船を利用した、国際物流サービスも展開しています。東京からソウルに荷物を届けるために、これまで、6日ほどの時間が必要でしたが、JR貨物のRAIL-SEA-RAILと名付けられた新しいサービスならば、わずか4日で、 荷物を届けることができるようになりました。東京から福岡までと同じように、釜山からソウルまでも韓国の鉄道輸送を使うため、積み替えなどの作業もスムーズになったからです。キャッチフレーズは、「飛行機よりも安く、コンテナ船よりも早く」。  「モーダルシフト」という時代の流れに乗ったJR貨物は、こうした様々な取り組みによって事業領域の拡大を目指す、まさに、「環境型企業」なのです。

人流のあるところに、物流アリ。今後、東京〜大阪などの物流も、環境に優しい鉄道へシフトしていくならば、新しいインフラ整備が国の課題となるだろう。

伊藤会長は今月の株主総会で会長に就任されたばかりです。大学を卒業されてから日本国有鉄道に身を投じ、国鉄の民営化後はJR貨物へ籍を移され99年から8年間社長を務められました。

JR貨物は民営化後、飛行機やトラックに押され相当苦しんだ時期もあり、諸先輩方からは「つぶれるのは時間の問題」などといわれていたそうです。しかし、物事はそうシナリオ通りにはいきません。厳しい状況を打ち破った立役者の一人が伊藤会長です。放送中も、会長のあまりの元気ぶりとあまりの前向きな精神がひしひしと伝わってきました。CMの時間やVTRが流れているときでも、いかに貨物がすごいかというお話しがとめどなく出てきます。「これは映像ではたいしたことないが、実際見ると凄い」「貨物の可能性はまだまだ無限だ」などなど・・・。

確かに、我々の周りのほとんどが、何かしらの形で運ばれてきたものばかりです。それがどう生産されているのかは気にしたりはしても、どう運搬されるのかなんて考えたことがありませんでした。ところが、1日の貨物列車の総走行距離は地球6周分に相当するとか。ちなみに新幹線は4周分。しかも、貨物列車一編成でトラック65台分の荷物を運べ、一方、二酸化炭素の排出量はトラックの8分の1に過ぎません。まさに環境と効率の両立を図ろうとしている今にぴったりです。

ちなみに、日本で初めて走った列車も貨物列車だったそうです。なのに、列車といえば人を乗せる電車しか連想できていませんでした。これからは、環境の時代の“主役”にも注意を向けるようにしたいと思います。

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