今週のドクターは、 駿河台日本大学病院 内科 小橋 恵津先生
【略歴】
日本大学医学部卒業 第三内科入局
【ドクターの一言】 野菜類を十分取り入れた食事と軽度の運動を心掛け、楽しく排便する習慣をつけましょう。一人便秘に悩まず、いつもと違う症状があ ったら、検査を恐れず、医者に相談しましょう。
女性のみなさんを悩ますもの。 便秘!あなたも、経験ありませんか? 便秘が続くと、お腹は張るし・・・肌も荒れてきます。落ち着かなくてイライラし…吐き気までしてきて・・・なーんにもいいことありません!!なぜか女性に多い便秘。実は、食生活の変化とともに年々増え続けており、いまや日本人の3分の1が「便秘」に悩んでいるといいます!では一体、なぜ便秘になってしまうのでしょうか? 原因は、一言でいうと「大腸のトラブル」。でも、たかが便秘、とあなどってはいけません。便秘という症状のかげには、大腸ポリープや…腸閉塞…そして年々増加している「大腸がん」といったコワイ病気も潜んでいます。 お腹が張ったり、肌が荒れたり、不快な症状を引き起こす便秘。ところで、20代から40代の女性に伺ったところ、4日以上排便がないという人はなんと全体の53.3%。17日間もお通じがないというつわものまで!では、この方々みんなが便秘ということになるのでしょうか?実は、便秘かどうかは排便の回数だけでは決められないのです。たとえ2〜3日に一回だとしても、気持ちよく便が出て、本人に満足感があれば、便秘とは言えません。逆に、お通じは毎日あるのに、排便した後に、便がまだ残っている感じがしたりおなかが張っている感じがあれば、便秘と考えられます。通常、口から食べ物を取り入れると、24時間から72時間で便となって排泄されます。そのため、医学的には、「気持ち良く排便できない状態」又は、「気持ちよく排便できても、4日に一度、もしくは一週間に2回以下しかお通じがない状態」を便秘というのです。ところで、一口に便秘といっても、いろいろなタイプがあります。あなたの便秘は、慢性?それとも急性でしょうか?旅行に行くと、便秘になる・・・こんな経験ありませんか?これは、典型的な「急性の便秘」。口から入った食べ物は、胃や小腸で消化されます。栄養分が吸収されると、残りカスとなって、大腸に入り古くなって剥がれ落ちた腸の粘膜や分泌物、 腸内の細菌の残骸などと混じります。その後、水分が吸収されて固まり始めて、便となるのです。食べ物が、このように腸の中を次々と送られていくのは、腸の筋肉が収縮して起こる「蠕動運動」によるものです。旅行などで生活環境が急に変化したり、精神的な緊張やストレスが生じると、腸の蠕動運動が弱くなり、便がうまく送られなくなって、急性の便秘が起こります。この便秘は、一過性のものですから、原因が取除かれれば、すぐに治ります。また、本来便秘ではないのに、ダイエットを始めたり、水分不足で便の材料が少なくなった時にも急性の便秘は起こります。ただし、もし便に粘液が混じっていたり、いつもより黒っぽい便が出て、その状態が一週間以上続く場合は、要注意!大腸炎や腸閉塞、大腸がんなどの病気が疑われます。急性の便秘に比べて、慢性の便秘には、がんなどの病気が隠されていることがあります。慢性の便秘のタイプは4つ。そのひとつが、一番多い「弛緩性便秘」。全体の4割を占めています。 ずっと便秘で、お腹の張りがひどく、食欲もない・・・こんな方はいませんか?頭痛や肩こり・手足の冷え・倦怠感なども感じていたら弛緩性便秘かもしれません。 大腸は、大きく分けると、盲腸・結腸・直腸の3つの部分からなっています。 結腸は、さらに、上行結腸・横行結腸・下行結腸・S状結腸の4つに分かれます。弛緩性の便秘は、腹筋が弱かったり、結腸が長かったり、結腸の緊張が緩んで起こります。蠕動運動が弱くなり、便が十分に押し出されなくなります。高齢者のほか、虚弱体質の人や内臓下垂のある人、また病気などで体力が低下している人に多く見られます。弛緩性便秘になると、太くて硬い便が出るのが特徴です。慢性の便秘で、次に多いのは「けいれん性便秘」。食後、下腹部が痛くなって、すぐトイレに行きたくなる・・・こんな方は、けいれん性便秘の可能性があります。 弛緩性便秘とは逆に、大腸の局所の蠕動運動が強すぎるために腸管がけいれんを起こして、狭くなる為に起こります。原因は、主に精神的なストレスです。これが自律神経に影響を及ぼし、腸がけいれんを起して、ところどころがくびれます。腸管が狭くなってしまうために、便の通過が妨げられてしまうのです。けいれん性便秘の特徴は、たべものを食べると下腹部が痛くなることです。便意も起こるのですが、うさぎの糞のようなコロコロした便しか出ず、まだ出きっていないという残便感があります。この便秘は、ストレスの多い比較的若い人に多く見られます。慢性の便秘。三つ目は直腸性便秘。朝、トイレに行きたいのに、時間がなくて断念したり、便意をもよおしていても無視したり、ついつい我慢してしまったことがきっかけで起こります。トイレに行きたいのに行かない、という繰り返しの中で直腸から伝達する神経が鈍くなり、 「たまった便を出しなさい」という命令を脳がいくら出しても、便意を感じないので排便が起こりません。これは、サラリーマンやOLなど、時間に追われている職業の人に起こりやすい便秘です。 「直腸性便秘」になると、直腸にたまった便がコチコチに硬くなり、 切れ痔になることも少なくありません。慢性の便秘。最後は「症候性便秘」。これは、何らかの病気や疾患があって、便秘をおこすものです。早期発見し治療が必要です。その中で重要なのが大腸ポリープや・・・大腸がん。そのために腸管が狭くなって便秘が起こります。腸のじゃばらがくっついて腸管が狭くなる病気、腸閉塞によっても、便秘は起こります。また、まわりの臓器によって腸が圧迫され、便秘を起こすこともあります。たとえば、子宮筋腫や前立腺肥大などが原因です。さらに、意外なところでは、甲状腺機能低下症など、神経やホルモンの病気で便意を感じにくくなり、便秘が起こることもあるのです。たかが便秘。 しかし、そこには重大な病気が隠されているかもしれません。 異常を感じたら、放っておかずきちんと原因を見極めましょう!女性の方が便秘になりやすいとは、よく言われることですよね…厚生労働省の調査を見てみても、便秘に悩むのは女性が大半となっています。一体、どうしてなのでしょうか?そのカギを握るのが、女性ホルモン。女性の排卵と月経をコントロールしているのは、黄体ホルモンと卵胞ホルモンという2つの女性ホルモンです。このうち、黄体ホルモンには、「大腸の蠕動運動を抑制する」という作用があるのです。そのため、女性は黄体ホルモンが活発になる、「排卵から月経までの時期」は、便秘になりやすいのです。さらに、女性は男性よりも筋力が弱く、大腸の蠕動運動も活発でないこと。そして、食事の量が少ないことなど、便秘を誘発する条件を多く備えていることも挙げられます。そして、もう一つ便秘を起す意外な原因が!!それは!女性におなじみ、「ダイエットによって腸が垂れ下がる!」という事実です。腹直筋という筋肉で支えられている私たちの内臓。この筋肉が、ダイエットをすることで痩せてしまい、胃を支えられなくなります。下がった胃に影響されて、腸も垂れ下がってしまいます。すると・・・腸全体が長くなって、便を送り出すのに時間がかかるようになるのです。食後、おへそより下のあたりが張ったり、押すと痛みを感じる方は、腸下垂の疑いがあるので、注意して下さい! "たかが便秘・されど便秘"便秘が続くと、様々な不快症状が現れます。中でも、多いのが「肌荒れ」。でも、一体どうして、便秘で肌荒れが起こるのでしょう?実は、便をためることで、腸内細菌が大量に増え、有害物質やガスが発生しているからなのです。このように便やガスが停滞していると余分な老廃物が再吸収されて血液中に溶け込み最終的に皮膚や肺から排泄されます。その時老廃物が直接皮膚にダメージを与えて、肌が荒れてしまうと考えられています。しかし! 肌荒れですめばいいほう!なんと、便秘が刺激になって、大腸ポリープや大腸がんといった病気を引き起こすこともあるのです!便には、消化管の中に生じた有害物質も混ざっており、発ガン物質も含まれています。便秘になると、有害物質の混じった便が腸の中に長くとどまるので、大腸ポリープや大腸がんが生じるリスクも高くなってしまうのです。肌荒れやイライラだけではありません。便秘が、命にかかわる病気を引き起こす可能性もあるのです!便秘が続いたら、とにかく早めに検査を受けるよう心掛けてください。
お通じがないと、手軽に便秘薬を使っていませんか?でも、薬局で市販されている便秘薬は、ざっと数えても300種類以上!いったいどれを選べばいいのでしょう。皆さん!、どうやって便秘薬を選んでいるんですか? 「たくさんあって、よく分からないんで…」 あらら! それは、いけません! 便秘薬には、入っている成分がそれぞれ違うんですよ。必ず成分を良く見て、あなたの症状にあっている便秘薬を選んで下さい。たとえば、お腹の張りがひどく、硬い便が出る弛緩性便秘の人にオススメなのは、「ビサコジル」「ピコスルファートナトリウム」「センナ」「センノシド」「ダイオウ」「カンゾウ」などの成分です。 これは、腸内細菌の活動を高めたり、大腸に刺激を与えたりして、蠕動運動を亢進させる作用がある薬です。 コチコチした便がかたまっている直腸性便秘の人にオススメなのが、「プランタゴ・オバタ」。硬い便に水分を浸透させる作用があり、便を柔らかくして、排便をスムーズにするものです。浣腸を使うのも良いでしょう。コロコロの便が出るけいれん性便秘の人には、「ビオフェルミン」や「酸化マグネシウム」。腸の中の水分を調整したり、腸内細菌を増やす働きがあります。 けいれん性便秘の人は、腸の蠕動運動が良すぎるので、もし、ビザコジルやセンナなどの便秘薬を使うと、お腹が余計に痛くなる危険性があります。くれぐれも注意して下さい。このように便秘薬には、色々な種類があります。成分を良く見て選ぶか、薬剤師に相談して、症状にあわせた便秘薬を選ぶようにしましょう。 ところで、このような便秘薬。皆さんはいつ飲んでいるのでしょう? 「夜寝る前に飲んでます。そうすると、朝出るので」便秘薬を夜飲んで、朝お通じがある。これは、正解です。便秘薬は、人それぞれ効き目が違います。自分に合った飲み方を自分で見つけることが大切なのです。例えば、自分が便秘薬を飲んでから、何時間後にお通じがあるか、休日に一度試してみましょう。もし、8時間で効果があれば、お通じを希望する時間の8時間前に薬を服用すれば良いのです。そうすれば、通勤時間中にトイレに行きたくなる…な〜んてこともありませんよ。では、そんな便秘薬を何で飲んでいますか? 「水で飲む。一口」 残念! 便秘薬を水で飲む。ここまでは、正解。ただし、一口では不十分なのです。便秘は、便が水分を吸い取られた状態なので、コップ1杯くらいのたっぷりの水で飲みましょう。ただし、牛乳と一緒に飲むことは絶対に避けましょう。必要以上に胃を刺激してしまうことになります! さて、最後の質問。どうなれば便秘薬が効いていると思いますか? 「便秘薬を夜飲んで、翌朝下痢になれば…」それは、あなたに合った便秘薬ではありません。夜中にトイレに行かなくてはならなかったり、おなかが痛くなったり、下痢をしたりするときは、薬が効きすぎている証拠です。薬の量を調整してみましょう。