今週のドクターは、 虎の門病院 耳鼻咽喉科 熊川 孝三先生
【略歴】
順天堂大学医学部卒
【ドクターの一言】 患者さんが感じている症状には、一つの病名では説明できない、他の病気の大事なキーワードが隠されていることがあります。遠慮しないで症状を並べたてて下さい。 【著書】
最近、なんだか声の調子がおかしい・・・。声がかすれてしまう。大きな声が出せない。息がもれたような声になってしまう。声が低く、ダミ声だ。大切な声に異常が現れたら、それは喉の病気かもしれません。話すことは、私たちにとって、とても大事なコミュニケーションの手段です。しかし、しゃべり過ぎたり、大きな声を出したりした後は、声がかすれてしまうことがありますよね。では、どうして声がかすれてしまうのでしょうか?声を出すのに必要な器官の声帯は、「のどぼとけ」と言われる甲状軟骨の中にあります。声帯は筋肉と粘膜からできています。普段、黙っている時の声帯は、肺に空気を送りやすくするために、Vの形に開いています。逆に、声を出している時は、声帯を閉じている状態。吐き出される息によって、声帯の粘膜が振動して、声が出るのです。ところで、男性と女性では、声の高さが違いますよね。これは、声が低い男性の声帯の長さが、17〜21ミリなのに対して、声が高い女性の声帯の長さは12〜17ミリの長さ。つまり、声の高さや低さは、声帯の長さが左右しているのです。例えるなら、弦の長さが短いバイオリンと弦の長さが長いコントラバス。弦が短い方が高い音が出ていますよね。人間の声帯も同じ原理なのです。この声帯の粘膜に負担をかけ炎症を起こしてしまうと、声がかすれるなどの、声の異常が現れます。例えば、私たちが風邪を引いた時、のどが痛くなって、声がかすれたりしますよね。その時、声帯は炎症を起こし、真っ赤に腫れています。この病状を「急性声帯炎」と呼びます。ただし急性声帯炎は、風邪の症状が治まると、声のかすれも自然に治るのが普通です。ところが、声帯炎を起こしているのにかかわらず、仕事などで電話を掛け続けたり、タバコを吸い続けていたり、またお酒を飲み過ぎるなど、声帯に負担をかけ続けていると、声のかすれは治らず、慢性的な炎症になってしまいます。その結果声帯が変形してしまうのです。その一つが、「声帯ポリープ」です。皆さんも、名前は聞いたことがあるはず。割れた声が特徴的な症状です。声帯ポリープは、「声が大きい人」や「カラオケが好きな人」、がなりやすい病気。人間は、吐き出す息で、声帯を振動させ、音を出しています。そのため、大きな声を出すには、声帯を強く振動させなければなりません。強い振動を繰り返すと、粘膜が内出血を起こし、盛り上がったコブ状のもの「腫瘤」ができます。この腫瘤が「声帯ポリープ」です。ポリープの大きさは2,3ミリ程度の小さなものから、気管を塞いでしまう大きさのものまで様々です。しかし、大声を出さなくても、声帯に炎症を起こすことがあります。それが、声帯にタコのようなものができる「声帯結節」です。息がもれているような声が特徴です「声帯結節」は、「保育士」や「バスガイド」など声をよく使う職業の人がなりやすい病気。「低い声の男性より高い声の女性」に多く見られます。実は、声が高いと声帯の振動する回数が多いのです。声帯が振動する回数を調べてみると、声が低い、男性の場合は、毎秒100回振動します。ところが、声が高い女性では、2.5倍の毎秒250回も振動しているのです。声帯結節は、声帯の振動する回数が多いために起きます。例えば、鉛筆やペンなどを使う回数が多い人の指にペンダコができますが、声帯もこすれ合う回数が多い女性の方が、「結節」というタコができやすいのです。声帯結節の多くは、声帯の両側の同じ位置にでき、大きさは1ミリ程度と小さく硬いのが特徴です。そして声に現れる病気で一番恐ろしいのが、「喉頭ガン」です。「喉頭ガン」の声荒々しい声が特徴です。この喉頭ガン全体の80%を占めるのが、声帯に悪性の腫瘍ができる「声門ガン」です。声帯にガンができると、声帯を完全に閉じることができません。そのため声の異常が現れるのです。喉頭ガンの患者の比率は実に10対1と、男性に圧倒的に多い病気です。調べてみると男性の患者のほとんどに喫煙習慣がありました。喫煙と喉頭ガンの発症には、何らかの因果関係があると考えられています。風邪や喉の病気以外でも、ある日突然声が出なくなることがあります。声帯を動かすために必要な神経を「反回神経」と呼びますが、この反回神経が麻痺することで起こる病気があるのです。それが「反回神経麻痺」です。反回神経とは脳から伸びた神経が、喉頭のそばを通り、胸の中まで届きます。心臓の近くでUターンして、再び喉頭に入る神経のことです。この反回神経の通り道には「心臓」「食道」など、大事な臓器がたくさんあります。そのため「心臓肥大」や「食道ガン」。さらに「甲状腺の腫瘍」などが原因で、声帯を動かす反回神経が圧迫され、麻痺してしまい、声のかれや、声が出なくなってしまうのです。反回神経麻痺による声のかすれは、重大な病気の警告でもあるのです。声がかすれているだけだと思っても、思わぬ重い病気にかかっている可能性もありますので、注意が必要です。
風邪を引きやすく、また乾燥しているこの季節、喉のケアは特に必要なシーズンです。その喉を守るためには、このような薬が使われます。 喉を守るために、薬は使っていますか? 「のどスプレーをしている」 この使用方法は正解です。息を吸いながら使うと、液体が気管支や肺に入ることがあります。ノズルを喉の患部に向けて、軽く息を吐きながら2,3回噴射するようにしましょう。また、のどスプレーの種類によっては、銀製ものを変色させる成分が、含まれているものがあります。歯に銀を詰めている人はご注意下さい。 トローチは使っていますか? 「寝る前にトローチをなめながら寝ます」 トローチは噛まずになめて溶かすのが正解。 その時もできるだけ長く口の中に含み、唾液でゆっくり溶かすことで効果が得られます。ただし、寝ながらトローチをなめるのは危険。間違えて気管に入ってしまう可能性もあります。尚、効果を持続させるためにも、なめてから30分程度は、飲み物や、食べ物を控えるようにしてください。 喉の健康を維持するために、毎日行っていることはありますか? 「うがいはします」 うがいはもう少し回数を増やした方がいいでしょう。特に空気が乾燥しているこの季節、のどを守るためにも、小まめにうがいをすることはとても大事です。うがいの効果を高めてくれる「うがい薬」。 使い方をご紹介しましょう。 (1)食べかすや、口の中の雑菌を取り除くために、口に含んで、強くうがいをします。 (2)上を向き、喉の奥までうがい液が行き渡るように、15秒程うがいをします。 (3)さらに同じように、15秒間程度、しっかりとうがいします。これを1日数回行いましょう。