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2003年11月30日(日) テーマは
『胃の不快症状』

今週のドクター 今週のドクターは、
東京都立広尾病院 副院長
榊 信廣先生



【略歴】

’72年

山口大学医学部卒業

’82年 同大学医学部第一内科講師
’85年 東京都立駒込病院内科医長
’96年 同病院内視鏡科部長
’02年 東京都立広尾病院 副院長

【ドクターの一言】
最近ストレスによる胃の異常が注目されています。胃に不快な症状を感じる時、胃があなたに迷惑をかけているのではなくあなたが胃をいじめているのです。胃にやさしい生活をこころがけましょう。


【著書】

「Helicobacter pyloriと胃炎・胃癌」 医学書院 1996
「ヘリコバクター・ピロリ除菌治療ハンドブック」 医学書院 1997
「ヘリコバクター・ピロリ フォーラム 
病態と治療の最前線」
医学書院 1999
「ピロリ菌除去で潰瘍を治す」 講談社 1998




CONDITION OF ILLNESS 病気と症状のメカニズム

データ付き合いや接待の席で、ついつい暴飲暴食してしまった。そんな時に起きやすいのが「胃の不快症状」。しかし、一口に「胃の不快症状」と言っても、様々なタイプや原因があります。ついつい飲みすぎてしまった結果、翌日、胃がムカムカする。いい気になって食べ過ぎてしまい、胃がもたれる。データそれどころか、キューッと滲みるような胃の痛みに苦しめられる!飲みすぎや食べすぎの結果、起こってしまう胃のムカムカやもたれ、実はそれらの症状は全て、胃の運動機能が本来よりも低下する事で起こります。私達が何か物を食べて、胃に食物が運ばれると、胃の粘膜から、消化酵素のペプシノーゲン胃酸が分泌されます。この消化酵素と胃酸を合わせたものが、データいわゆる「胃液」。この胃液が食べたものと混ざり合って、消化が行われます。消化の際、胃は蠕動運動を起します。蠕動運動には、胃の内容物を十二指腸へと押し出すと食べものを小さく砕く働きがあります。このとき、ぜん動運動により食べた物と胃液はよく混ざりあうことで消化を助けています。通常、胃の中に食物がとどまる時間は、ご飯のような炭水化物でおよそ1時間弱、一方、肉など脂肪分の多いもので、およそ4〜5時間です。しかし蠕動運動が弱まると、食べたものの消化がスムースデータには行かず、十二指腸へもなかなか押し出されません。そのため、食べたものが必要以上に長い時間、胃に停滞!この停滞が、胃のムカムカやもたれ、といった症状を引き起こすのです。胃の蠕動運動が弱まってしまう原因は胃に対するストレス!このストレス、実は2つの種類があります。それは物理的なストレス精神的なストレス!物理的なストレスとは、熱いもの、冷たいもの、辛いものなど、胃の粘膜に刺激の強い物を食べた時、胃に掛かる負担のこと。胃の壁は、4つの層から出来ています。データそれぞれの層は、上から粘膜、粘膜下層、胃を動かす筋肉で出来た筋層、一番外側の奨膜、という順番になっています。刺激の強い食べ物が胃の中に入ると、まず粘膜が刺激されます。するとそこから粘膜下層、更にその下のぜん動運動を行う為の筋肉も影響を受けて、蠕動運動が正常に起こらなくなるのです。もう1つのストレス、精神的ストレスとは?例えば上司との付き合いや接待、こんな時は何かと気を使ってストレスを感じる方が、多いのではないでしょうか?強い精神的ストレスが掛かると、脳が興奮状態に陥ります。結果的に自律神経が正常に働かなくなってしまう!データ自律神経は交感神経と副交感神経の2つからなるもの。副交感神経が活発ならば胃の運動も活発化、交感神経が活発ならば沈静化します。本来、食事をすれば、まず副交感神経が活発となって、胃は運動する筈ですが、強い精神的ストレスがかかると自律神経の異常から胃の運動も正常でなくなってしまうのです。また、こんな症状を経験された事はありませんか?お酒を飲んだ次の日…翌朝目を覚ますと、胃の調子がおかしく、いつまで経ってもムカムカして気持ちが悪い。そして胃がキユッーと痛い。この痛み、実は胃酸の分泌が原因なのです!お酒の主成分はアルコールです。このアルコールが胃の中に入ると、胃の粘膜を直接攻撃し、ダメージを与えます。また同時にアルコールは「ガストリン」という胃酸を分泌させるホルモンを出してしまうことになるのです。この「ガストリン」は、データ胃酸のpHがアルコールによって中性に傾くことで分泌されます。つまり、アルコールの刺激によって、通常pH1の強い酸性である胃酸が中性になり、それを酸性に戻すために「ガストリン」が分泌され、胃酸の過剰分泌に繋がるのです。過剰に分泌された胃酸は、胃の粘膜までも消化する!という自己消化を起してしまいます。胃の粘膜が、自己消化によって攻撃されると炎症を起こして腫れたような状態に陥ります。これが胃痛を引き起こすのです。炎症を起した事によって、胃の粘膜は晴れ上がり、弱って行きます。さらに胃酸の攻撃が続けられると、データ粘膜が剥がれてしまった状態、「びらん」が起こることもあります。こうして粘膜が剥がれ、「びらん」が起きると、出血する事も珍しくありません。この出血部分が粘膜の表面に留まらず、粘膜の下まで深く抉れてしまったものが「潰瘍」なのです。「急性胃炎」により、粘膜が弱まると、潰瘍ができやすくなります。これに対して、ハッキリしたキッカケもなく、慢性的に胃が痛んだり、「びらん」や「潰瘍」を繰り返す場合は、「慢性胃炎」と呼ばれるのです。「慢性胃炎」は、かつて原因不明とされていましたが、近年、原因が明らかになってきました。ヘリコバクター・ピロリ、いわゆるピロリ菌です。データピロリ菌が胃の中に感染すると、胃の粘膜が出す粘液に入り込みます。そして、そこで粘膜を攻撃する毒素を出します。すると、胃の粘膜周辺に、侵入してきた外敵を排除しようと、白血球が集ってきます。白血球は攻撃を始めますが、ピロリ菌は粘膜の外にいるためなかなか排除出来ません。胃の粘膜はピロリ菌の毒素と、リンパ球のWパンチを受け、弱っていくのです。こちらがピロリ菌の感染した胃の粘膜。一見何も起こっていないように見えますが、実は肉眼では分からないような、組織的炎症が粘膜に起きているのです。顕微鏡による胃の粘膜細胞。たくさんある小さな黒いつぶつぶは白血球です。データ右の正常な粘膜細胞と見比べると、ピロリ菌に感染しているほうが黒点が密集しています。ピロリ菌に感染している胃には、白血球が密集し、目に見えない炎症を引き起こすのです。「萎縮性胃炎」は、粘膜が萎縮して薄くなるため、血管が浮き出ています。こうなると胃酸の分泌力も低下、胃は正常に働かなくなります。更に、この「萎縮性胃炎」が恐ろしいのは、胃潰瘍は勿論、胃癌へ進行することもあるということ。ピロリ菌を除菌せずに放置しておくと、遂には胃癌を引き起こしかねないのです。また「慢性胃炎」には、ピロリ菌に感染していなくても、胃の調子が悪くなったり、胃痛が起こるタイプもあります。その場合、患者さんの胃の中を見ても。何も異常は発見されません。こうした原因不明の「慢性胃炎」を、アメリカでは「潰瘍のない消化不良・NUD」と名づけ、研究が続けられています。このように「慢性胃炎」には、ピロリ菌感染によるタイプと、原因不明のNUDの二つがあるのです。一口に「胃の不快症状」と言っても、その原因は様々。原因によっては将来的に命の危険さえ出てくるのです。

胃炎の原因と症状
  原因 症状
急性胃炎 胃のぜん動運動の異常 ・胃がむかむかする
・胃もたれ
胃酸の過剰分泌 胃痛
慢性胃炎 ピロリ菌感染 ・慢性的な胃の不快症状
・胃潰瘍を繰り返す
原因不明(NUD) 慢性的な胃の不快症状
EXAMINATION 検査
胃の不快症状の検査法
血液検査 貧血胃潰瘍
白血球数 胆のう炎・すい炎
尿素呼吸反応検査 吐いた息からピロリ菌感染の有無を調べる
内視鏡検査 内視鏡(胃カメラ)で胃の中を調べる
MEDICAL TREATMENT&MEDICINE 治療と薬
胃の不快症状の治療
H2プロッカー
ヒスタミンが粘膜細胞に存在する受容体に結合するのを阻害することで胃酸分泌を抑える
プロトンポンプ阻害薬
ヒスタミンの他、アセチルコリンやガストリンが受容体に結合した後の胃酸分泌を阻害する
三剤併用療法
2種類の抗生物質とプロトンポンプ阻害薬の3つの薬でピロリ菌を除菌する
抗不安薬 NUDで胃に対する薬では効果がない時に用いる
FRONTIER 最先端技術
データ胃潰瘍や胃癌の原因となるピロリ菌。皆さん、このピロリ菌。実は、2つの種類があるという事をご存知だったでしようか?我々、日本人が感染しているのは「アジア型」というタイプ。そして、欧米人が感染しているのは「欧米型」と呼ばれています。「欧米型」のピロリ菌は、「アジア型」と違い、胃の粘膜に炎症は起しても、その程度が酷くはありません。更につい数ヶ月前、医学界にこんな報告もされました。沖縄の人が感染しているピロリ菌は「欧米型」が多く、その結果、胃癌の発生率が低いというのです!では、「アジア型」と「欧米型」では、同じピロリ菌でも、データ一体どういう点が違うのでしょうか?その違い、実は「CagA」という遺伝子を持つか持たないかにあるのです。「CagA」を持つ「アジア型ピロリ菌」は、胃に感染すると、注射針のようなもので粘膜の中に「CagA」を注入して、胃壁に炎症を引き起こしていたのです。北海道大学の遺伝子病制御研究所で、畠山教授が率いる研究グループはこの「アジア型ピロリ菌」が持つ独特のメカニズムに注目! ピロリ菌が、正常な胃の細胞を癌化させるメカニズムの1つを、世界で初めて解明しました。まず、ピロリ菌によってデータ胃の細胞に注入された「CagA」は..細胞増殖を制御している分子SHP−2」と結合を開始します。その後、「SHP−2」の活動が活発になると胃の細胞が次第に変化して、癌化するという訳です。畠山教授は、今回の発見を期に「このSHP−2を制御する薬を開発すれば、有効な胃癌治療の効果が期待出来るかもしれない」と、更に研究を進めています。ピロリ菌の発見から20年。最新のピロリ菌研究は今、胃癌治療を大きく塗り替えようとしているようです。
SELF MEDICATION 自己管理






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明日からいよいよ12月。年末を向かえ、何かと、食事やお酒の機会も増えてきます。という事は、皆さんより一層、胃に大きな負担を掛ける事になってしまいますね。そこで、この時期皆さんの手助けとなる胃薬に注目!道行く皆さんに、普段胃薬をどのように飲んでいるか、伺ってみました。
胃が、どんな状態の時に胃薬を飲んでいますか?
皆さん、飲みすぎ食べすぎの時に飲んでいるみたいですね。
ではいつも、胃薬はどんなタイプのものを飲まれていますか?
どうも、あまり胃薬に気を使ってないみたいですね。
次の方は如何でしょう?
この方もこだわってませんね。
胃薬といっても、種類や効き目は様々なんですよ。
お酒を飲みすぎて二日酔いをしたり、食欲不振に陥った時に向いているのが「健胃剤」! 芳香のあるウイキョウや、ビールの原料ホップなど、植物から抽出した生薬成分が入っており、胃の働きを活発にしてくれます。お酒で胃が荒れている時は、「粘膜保護・修復剤」。この薬は、胃の粘膜細胞の血流をよくして、弱った粘膜を回復させたり粘膜にある胃腺が分泌する粘液の量を増やすなどして、粘膜の防御力を高める作用を持っています。胃痛を起しているようならば、「制酸薬」をお勧めします。胃痛の原因は、分泌されすぎた胃酸が粘膜の細胞を攻撃すること。現在主流の制酸薬「H2ブロッカー」は、胃酸が分泌される原因「ヒスタミン」が、粘膜細胞の「ヒスタミン受容体」と結合しようとするのを妨げる事で胃酸の分泌を抑制する薬です。その他にも、胃痛の痛みを和らげる「胃腸鎮痛鎮座剤」、消化吸収を促進する「消化酵素剤」など、胃薬の種類は正に様々なのです。「総合胃腸薬」の場合も、「健胃」「消化酵素」「制酸」「粘膜保護」「鎮痛」と五つの成分が配合されていますが、各商品によって、配合成分や割合が違います。購入の際は、薬剤師と相談して、症状や体質に適った薬を選びましょう!
ところで、薬はキチンと水で飲んでいますか?
皆さん、まだそんなことを言っているんですか!?薬は、基本的に「」か「ぬるま湯」で、飲むように心がけてください。お茶やコーヒーに含まれる「カフェイン」は、薬の成分に悪影響を与えてしまいます。特に、お茶に含まれる「タンニン」は薬の成分と結びつき、薬が体に吸収され難くしてしまいます。
では皆さん、「薬の使用量」は守っていますか?
これはダメ!「薬の使用量」は必ず守って下さい。決められた量以上飲むと、場合によっては副作用があらわれるなど、危険なことになります。例えば、胃酸を抑える「H2ブロッカー」の場合、強力な薬であるため、一回の服用量だけでなく、一日の服用回数も、決められている程。

市販薬の中でも、胃腸薬は種類が豊富
それだけに、目的に応じた薬を選択して、正しく服用して下さい

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