Self Docter Net
BS-i TOP

健康DNA ロゴ
ONAIR
CONTENTS TOP番組紹介今週のDNA!!
今週のドクター
ドクターQ&A
ご意見募集
バックナンバー
著書紹介

バックナンバー
2003年10月12日(日) テーマは『肥満』

今週のドクター 今週のドクターは、
慈恵会医科大学 内科学講座

阪本 要一先生



【略歴】

1972年

慈恵会医科大学卒業

1988年

英国ロンドン日本クラブ診療所所長

2000年 慈恵会医科大学附属柏病院
糖尿病代謝内分泌内科部長
2002年 慈恵会医科大学内科教授 現在に至る

【ドクターの一言】
肥満は生活習慣の代表です。このストレスの多い時代、生活環境や行動など二次的影響が大です。そこで、患者さんの言葉に耳を傾ける事を大切にし、癒しの医療を目標にしております。

【著書】

「糖尿病、専門医に聞く最新の臨床」 中外医学社
「糖尿病療養指導士のための糖尿病生活指導ガイドライン」 金原出版
「糖尿病療養指導二項の秘訣:
私はこう指導する」
金原出版
「生活習慣病シリーズ:糖尿病治療ガイダンス」 メジカルビュー社


CONDITION OF ILLNESS 病気と症状のメカニズム

データ肥満」。この言葉に反応したあなた。自分は太り気味・・・と自覚しているあなた。あなたのような方は、日本に2300万人もいるのです!「肥満」は、体のあちらこちらに影響を及ぼします。膝や腰の痛み、さらには、糖尿病、高血圧、高脂血症などなどいろいろな病気の原因を作ってしまうのです。そんなに太っているわけではないのに、肥満が原因で病気をかかえやすい体になってしまう。データそれが、日本人に多い「ハイリスク肥満」。決して太りたいわけじゃない!しかし、脂肪細胞はどんどん脂肪を蓄える。ちょっと太ってはいるけれど、体は丈夫!と胸をはっているヒトは多いもの。世界の中でも、日本人は特に太りやすくやせにくい。その原因は…?倹約遺伝子。倹約遺伝子とは、普通の遺伝子が突然変異を起こして「省エネ型」になったもの。いったいなぜこのような遺伝子が生まれたのでしょうか?その昔、データ人類の課題は、「食べもの」を確保することでした。常に「飢え」に備えておくことも必要です。そこで体の中では、摂取したエネルギーは最大限に吸収して消費するエネルギーは最小限に抑えようという工夫がなされました。そのために生まれたのが「倹約遺伝子」。厳しい環境を生き抜くために生存本能が生んだ遺伝子なのです。日本人には、この倹約遺伝子が多いことがわかっています。つまりエネルギーを溜め込みやすい体質なのです。では、代表的な倹約遺伝子は、データ脂肪細胞にある「β3‐アドレナリン受容体」が変異したもの。私たちの体の「脂肪」は、脂肪細胞が集まってできていますが、ここには、使われないで余ったエネルギーが中性脂肪というかたちで溜め込まれます。これがのちのち「肥満」の原因となるわけです。脂肪細胞というのは、とても柔軟な構造をしていて、溜め込まれた中性脂肪が増えると大きくなり減ると小さくなります。つまり、エネルギーが使われずに余った分が中性脂肪として脂肪細胞に溜め込まれると、一つ一つの脂肪細胞が大きくなって「肥満」という結果につながるのです。「β3−アドレナリン受容体」は、データ脂肪細胞の表面についているのですが、刺激を受けると、エネルギーを作るために、蓄えられた中性脂肪を分解します。つまり、この「βアドレナリン受容体」というのは、体を痩せさせてくれる、貴重な受容体なのです。ところが、突然変異して倹約遺伝子となってしまった「β3アドレナリン受容体」は、そう簡単にはエネルギーを作ろうとはしません。ですから、脂肪細胞の中には中性脂肪が好きなだけ溜め込まれていきます。つまり、どんどん太ってしまうのです。さらに京都府立医科大学の吉田俊秀教授は、この倹約遺伝子をもっている人は、安静時に消費される基礎代謝のカロリーが 平均より200キロカロリーも少ないことを突き止めました。肥満を判断する基準は、ボディ・マス・インデックス データBMI という数値で表します。体重(kg)÷身長の二乗(m)、これが BMI の出し方。25以上は「肥満」です。身長165センチ、体重70キロのヒトのBMIは25.7。すでに「肥満」ということになります。実は、BMI25を肥満の基準にしているのは日本だけ。WHOでは、データ肥満はBMI30以上としているのです。日本だけ肥満のハードルが高いのは、ものすごーく太っているわけでなくても、糖尿病・高血圧・高脂血症・動脈硬化を抱えてしまう、死へとつながるハイリスクな肥満。それが、日本人の肥満の特徴なのです。これは、肥満による病気が発症した数をBMI別に表したグラフ。データBMI25を超えると、発症した病気の数がグングン増えています。つまり、日本の肥満の基準であるBMI25というのは、病気にかかりやすくなる数値だったのです。太りやすい上に、ちょっと太ると病気にかかりやすくなる日本人。「肥満」の中にハイリスクをかかえる日本人の体質の中にはもう一つ肥満に弱い理由がありました。関係していたのは、インスリン。ご存知のように、すい臓から分泌されて血糖値を下げるデータ働きをするのがインスリンというホルモンです。このインスリン、細胞のインスリン受容体に働きかけて、血液中のブドウ糖を細胞の中に取り込む、いわばスイッチのような役割をしています。もし、スイッチの役割がうまくできていないと、ブドウ糖を細胞にとりこむことはできなくなります。この状態を引き起こす犯人が、肥満!!これをインスリン抵抗性といいます。こうなると血液の中にあるブドウ糖が増加する、いわゆる高血糖データ状態となり、すい臓はインスリンの量を増やしてなんとか対処しようとします。そして! なんと日本人はすい臓が弱い、という悲しい現実が!やがてすい臓が悲鳴をあげてインスリンを分泌しなくなってしまうのです。こうして糖尿病が引き起こされます。「ハイリスク」の肥満をかかえる日本人。すい臓も弱い日本人。ほんの少しの肥満でも、あなたを病気に近づけます!

肥満のメカニズム(1)
■肥満の基準 
BMI = 体重(kg)÷身長×身長(m)
25以上が肥満
■倹約遺伝子
  β3-アドレナリン受容体の遺伝子が変異したもの
脂肪の分解・エネルギーの産生がうまく行われない
■インスリンの抵抗性
 

太るインスリンの効きが悪くなる
血糖値が増加インスリンが増加
悪循環

データ皮下脂肪内臓脂肪。これが、私たちの体に溜め込まれる二種類の脂肪です。皮下脂肪はつきにくく、落ちにくいのが特徴ですこれに対して、内臓脂肪はつきやすくて落ちやすい脂肪だといわれています。内臓脂肪というのは、このように胃や腸を支える膜にたまります。データ実は、この内臓脂肪から多くの生活習慣病の原因となる物質が送り出されているのです。まず、脂肪細胞は、溜め込んだ中性脂肪を「遊離脂肪酸」と「グリセロール」というエネルギー源に分解します。そのエネルギー源はすべて肝臓に運ばれます。この肝臓に運ばれる遊離脂肪酸に、病気を招く危険が潜んでいるのです。内臓脂肪型の肥満になっていると、濃度の高い遊離脂肪酸が作られます。濃度の高い遊離脂肪酸が肝臓に運ばれると、データ大量のコレステロールが作られてしまいます。コレステロールが大量に血液中に運び出されると血管の中でたまりはじめます。これが、動脈硬化を招く「高脂血症」です。また、コレステロールの運び出しが不十分だと中性脂肪の形で肝臓の中にたまることになりこちらは「脂肪肝」の原因になります。その上、「遊離脂肪酸」が大量に肝臓に運び込まれるだけでインスリンが効かなくなってきて糖尿病の原因になるとも言われています。さらに、大きくなった脂肪細胞が、積極的に病気を起こしていたことも明らかになっています。病気の原因となる様々なホルモンを分泌していたのです。このホルモンが原因で、脂肪細胞は血液を固まりやすくする、データPAI‐1というホルモンを分泌します。血管の壁からは、血液の流れをスムーズに保つため、血液を固まりにくくするホルモンが分泌されています。それを妨害し、血液を固まりやすくするのがPAI‐1です。このため、血栓が作られて、血管が詰まってしまう可能性も出てきてしまうのです。続いては、血管の壁を厚くしてしまう物質。血管の壁というのは、3つの層にわかれています。データHBEGFは、中膜の、血管平滑筋細胞を増殖させてしまいます。壁が厚くなると血管の通り道が狭くなります。これが動脈硬化の原因になります。脂肪細胞から分泌されるホルモン。続いてはインスリンの効きを悪くする物質。細胞はインスリンの刺激によって栄養素であるブドウ糖を細胞内に取り込みます。データしかし、TNF-αは、インスリンの刺激をシャットアウト!その結果、血糖値が上昇して糖尿病を引き起こすことになります。脂肪細胞が大量に分泌するホルモン。高脂血症、動脈硬化、糖尿病は太りすぎが原因、といわれる理由はここにあったのです!
肥満のメカニズム(2)
内臓脂肪から作られる
■遊離脂肪酸

  肝臓でコレステロールや中性脂肪に変化 高脂血症
脂肪肝
脂肪細胞が分泌する
■PAI-1
  血液を固まりやすくする 血栓を作る
■HBEGF
  血管の壁を厚くする 動脈硬化
■TNF-α
  インスリンの効きを悪くする 糖尿病
EXAMINATION 検査
肥満の検査
BMI 25以上は肥満
腹囲測定 男性85cm以上 女性90cm以上
問診 問診表から 肥満の診断・さらに詳しい検査が必要かどうかを調べる
血液検査 特に中性脂肪の増加・HDLコレステロールの減少 インスリンの増加を調べる
FRONTIER 最先端技術
データ今から30年前、アメリカのコールマン博士がマウスを使ってある実験をしたのです。その実験とは、正常なマウスと肥満のマウスの血管をつないで、互いの血液を行き来させるというもの。結果、肥満のマウスの食欲は減退し、正常に戻りました。この実験から、血液中にやせる物質が存在し、その物質を持っていないマウスが太る、という仮説が立てられました。データさらに、別のマウスを使い、実験を重ねると…。正常なマウスが痩せすぎて死んでしまう、という結果がでました。この事から、正常なマウスの血液中にある、やせる物質が、肥満のマウスを正常に戻したのだと考えられました。つまり、肥満のマウスは、もともとやせる物質を持っていなかったために太ったのではないか、という仮説が立てられました。さらに、別のマウスを使って実験を重ねると…、今度は、正常なマウスがやせすぎて死んでしまう、という結果が現れました。これは、何と肥満のマウスがやせる物質を大量に持っていて、正常なマウスがそれを受け取りすぎて死んでしまったことを意味します。データ研究者たちは、やせる物質があってもうまく働かず、肥満になる場合がある、という仮説を立てました。これらから、やせる物質を持っていない、またはやせる物質そのものの異常やうまく働かないなど、そのいずれかに、肥満の原因があるという仮説に達しました。なぜやせる物質を持っていても太るのか?やせる物質は本当にあるのか?その正体、実は脂肪細胞から分泌される、レプチンという物質だったのです。このレプチンは脂肪細胞に中性脂肪がたまると分泌されます。レプチンは、脳の視床下部にデータある摂食中枢に送られます。ここは言うまでもなく、やせるための命令を送る場所。視床下部からの命令により、食欲は減退。さらに脂肪組織にも作用して中性脂肪を分解させるのです。では、なぜ太るのか?考えられるのは、レプチンが分泌されないから。そして、レプチンそのものに異常がある場合。また、分泌しても、うまく作用しない場合や、視床下部からの刺激が上手く伝わっていないことも考えられます。つまり、そのどれかの原因が特定できれば、「やせる薬」を作ることができるのです。夢のやせ薬。レプチンという物質が今最先端の注目を浴びているのです!
SELF MEDICATION 自己管理
データ太らないためにはどうしたらよいか。食べ過ぎてはいけない、運動不足もいけない…。わかってはいるものの、ついつい・・・・そこで、よい方法をご紹介しましょう!行動療法データこれは実際の肥満の治療にも使われています。その目的は、肥満をもたらし、維持させていた生活習慣を見直して、変化させることにあるのです。実際にどういうことが行われるのでしょうか。


データデータ


データデータデータ



データデータ

【ケース1】
身長153.4センチ、体重90.3キロ。かなり太の40代のA子さん。行動療法の基本は毎日の体重、食事、行動や運動量の記録です。毎日つけることで、自分の数字の変化に興味がわき、太る習慣を断ち切る意識が高くなります。また、記録をつける、という行動が励みになりなんとA子さんはたった6ヶ月で16キロの減量に成功したのです!
【ケース2】
身長170.8センチ、体重82.6キロ。コンピューターエンジニアである40代男性の場合は、3ヶ月で5キロの減量に成功!記録によって、自分の運動量が少ないことに気付いたのだといいます。この記録をチェックしてくれた管理栄養士からのアドバイスは?「駅のエレベーターを階段にする、できますか?」「はい、そのぐらいならできます」それぐらいならできる!そう、行動療法のポイントは、決して無理しないこと。形から入る。これも行動療法のポイント。楽しくやせるために、スポーツウェアを揃えてみます。するといつのまにか運動量が増えて・・・納得の減量成功!
【ケース3】
身長155.3センチ、体重66.6キロ。何をやってもやせなかった40代の女性は見事4ヶ月で12キロの減量に成功。彼女の場合、なかなかビールの量が減らせなかったようですが・・・そんなときのプロからのアドバイスは?ずばり、冷蔵庫で冷やすビールの量を減らすこと。飲み頃のビールがたくさんあるとついつい飲みすぎてしまいます。冷えたビールがなければあきらめもつきます。大瓶を缶ビールに変える努力もして、減量成功へと導かれたのです!
毎日の習慣を記録して、太る生活習慣に気付ければ、
健康的なダイエットの目標を立てることができます。
それは、あなたの生活そのものをグレードアップ
させることにもつながります。

copyright(C)