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2003年9月28日(日) テーマは『心不全』

今週のドクター 今週のドクターは、
板橋中央総合病院 内科

田村 勤先生



【略歴】

’72年

東京大学医学部卒業

’79年

筑波大学臨床医学系講師

’85年 帝京大学第2内科助教授
’92年 三井記念病院循環器センター内科部長
’00年 板橋中央総合病院副院長 現在に至る

【ドクターの一言】
心臓病は生活習慣を原因とする事が多いです。病気になってから治療するというのもやむをえないのですが、病気にならないように、二度と同じ病気にかからないように予防することが大切です。


CONDITION OF ILLNESS 病気と症状のメカニズム

データ何だかダルい。少し動くだけで息が切れる。そんなありがちな体調不良に、実は心不全が隠れているのです!命に関わる事も多い心不全。私達の心臓は一分間におよそ80回の拍動を繰り返し、全身に血液を送り出しています。その際、心臓を出入りする血液の量はおよそ5リットル。「心不全」とは、このポンプの働きが低下し、我々の体に必要な酸素栄養が全身に行き渡データらなくなった状態の事です。心臓の正常な働きが保たれていれば、送り出したのと同じ量の血液が心臓に戻ってきます。しかし、ポンプの働きが弱まると、送り出す血液より、戻る血液の方が少なくなります。何故なら、戻りきれない血液が体のあちこちに滞ってしまうからです。まるで、血液が体の中で渋滞を起こしたようになる。それが心不全という病気なのです。心不全の初期には、階段をのぼるなど軽い運動が辛くなり、息切れを感じるようになってきます。やがて症状が悪化するのに連れ、静かにしていてもデータ息切れするようになり横になるのさえ辛くなってきます。更にひどくなると、全身の浮腫みや呼吸困難が現れます。心臓の中は右心房・右心室・左心房・左心室という、4つの部屋に別れています。血液は左心室の収縮、ポンプの機能によって大動脈へと送りだされ、全身へ運ばれてゆきます。血液は静脈を通って右心房に戻り、右心室へ移動。データ右心室が、この血液を肺へと送り出します。肺で酸素を補給した血液は、左心房から左心室へ。血液はこうして体内を循環しています。血液を送り出す働きが低下すると、十分な量の血液が全身にむかわなくなったり、体のあちこちに滞るようになってしまうのです気をつけなければならないのが高血圧!血管の中の圧力が常に高い状態。それが高血圧。高血圧の場合、心臓は普段より強く血液を送り出す必要が出てきます。これでは荷物を持って山に登るようなもの。こんな状態が続けば、データ心臓のポンプの機能も低下します。心臓の働きを大きく低下させる病気は高血圧だけではありません。その病気とは糖尿病!血液中の糖分が増えすぎて、全身に様々な障害が引き起こされる病気。糖尿病によって起きる動脈硬化が心臓に大きな負担をもたらします。動脈硬化になると、血管が狭くなります。当然心臓は、より強い力で血液を送り出さざるを得なくなります。心臓はこれまた働きすぎで疲労困憊。ポンプの働きも低下してしまいます。また、糖尿病は動脈だけでなく、全身の抹消血管にもダメージを与えます。特に、心臓を動かすための血液を送る冠動脈に動脈硬化が起こりやすいのです。血液不足によって、心臓の筋肉がダメージを受ける為、重症の心不全を起こしやすいとも言われています。このように、高血圧と糖尿病は心不全の元と成ってしまう訳です。実は右心室の働きが低下する場合と、左心室の働きが低下する場合とでは、違った症状が現れるのです。もし、データ左心室のポンプの働きが弱くなると?血液を全身に送り出す機能が低下します。すると、全身に送られる酸素や栄養分の不足からダルさや疲れ等の症状が現れます。また、脳の酸素や栄養不足から頭痛等が現れる場合もあります。同時に、左心室から送り出されなかった血液が肺の血管へと逆流し、たまり始めます。やがて、血液中の水分が、肺の組織へと漏れ始めます。悪化すると肺が水浸しになったような状態、肺水腫を引き起こします。まるでおぼれたような状態になり、呼吸困難に至ります。データ夜中に突然、呼吸困難になることも少なくありません。また「夜間頻尿」も、特徴的な症状です。夜、寝床に入って横になると全身に滞っていた血液が心臓へと戻ってきます。心臓から腎臓に送られる血液が急激に増加、大量の尿が作られます。夜間に何度もトイレに通う結果に成る訳です。右心室の働きが弱くなると、血液を肺に上手く送り出せないと、データ全身から右心室に繋がる、全ての静脈に血液が滞り始めます。この時、体の表面に近い静脈が大きく腫れて見える事もあります。また、胃や腸の静脈に血が滞ると、食欲低下や吐き気が起こります。やがては静脈からも血液中の水分がジワジワと漏れ始めます。その結果、酷い浮腫みが体全体に起こったり…胸部に水が溜まる胸水を起こします。一方、腎臓の血管に血液が滞ると腎機能が低下して尿が作られなくなります。その結果、体から水分が出なくなり、体重が急に増加データ酷い場合は、僅か一日で1キロ以上も体重が増えることすらあるのです。実は「不整脈」も心不全の原因あり!不整脈は、心臓の筋肉を動かす電気信号が何らかの原因で乱れ、脈の速さが不安定になる病気です。その際、脈が遅くなると心臓が送りだす血液の量も減ってしまいます。逆に、脈が速すぎても心臓の筋肉が十分収縮出来ず、送り出せる血液の量は減ってしまいます。こうして、不整脈が引き金となって血液が滞り、心不全が引き起こされてしまうのです。心臓に大きな負担を掛ける全ての病が心不全の原因となってしまうのです。

心不全のメカニズム

心不全とは、全身が必要とする血液を
心臓が十分に送り出せない状態

心臓が送り出す血液の量が減少し
同時に心臓の上流に血液が溜まる

それを補うため、心臓の働きを元に戻そうとする

それでも働きが戻らない

全身には血液不足、肺に血液が溜まる

EXAMINATION 検査
心不全の検査
■問診 息切れや疲労の原因が心臓にあるのか
その他の臓器、例えば、呼吸器にあるのかを見当付ける
■聴診・触診 心不全特有の、肺の雑音・むくみの有無を調べる
■心電図検査 不整脈や心筋梗塞などを調べる
■胸部X線検査 心臓の拡張、肺のうっ血や胸水の程度を調べる
■胸部
  超音波検査
心不全の原因となる心臓病が何かを調べる
特に心臓の動きを調べる
■心臓
  カテーテル検査
原因疾患である狭心症や心筋梗塞の診断や心臓の動きを調べる
MEDICAL TREATMENT&MEDICINE 治療と薬
心不全の治療
■利尿剤
余分な血液を尿として排出して
 心臓の負担を軽くする

■アンジオテンシン
  変換酵素阻害薬

血管を収縮させる物質が作られるのを
 防ぎ、血管を拡張する
■ベータ遮断薬
心臓の働きを活発にする刺激を抑え
 心臓の疲労を和らげる
■塩分・水分制限  
FRONTIER 最先端技術
データ心不全の原因の一つでもある心筋梗塞。心筋梗塞は血管が詰まった結果、心臓の筋肉が血液不足から壊死を起こす病気。このように心臓の組織がダメージを受けると、再生は不可能とされてきました。しかし、それを覆すかもしれないのがES細胞です!ES細胞。それは骨髄で作られる幹細胞という、データまだ未分化な状態の細胞の一種。この幹細胞が分裂して、赤血球や白血球、血小板等へ変化する事は既に広く知られていました。その幹細胞の中でも、特に多種多様な細胞に変化する能力を持っているのがES細胞です。近年、このES細胞を使って血管を再生する研究が、ラットの実験で進められてきました。そして今年2月、遂に人間の心臓の治療にES細胞が使われたのです。この世界で初めての治療が行われたのはアメリカのウィリアム・ボーモント病院。まず、体内でES細胞をたくさん作らせるための薬が四日間に渡って患者に投与されました。大量に生産されたES細胞を、今度は血液の中から濾過装置によって取り出します。続いて取り出したES細胞を、カテーテルを使い、心臓を取り囲む冠状動脈に移植。そのまま冠状動脈に着床させて心臓の回復を待ったのです。データ深刻な発作を繰り返し、心臓移植しか治療の道は残されていなかった患者さんがなんと、治療から僅か一週間後には退院。自宅で療養が出来るまでに症状は回復したのです。勿論、「ES細胞のおかげかどうかを判断するのはまだ難しい」という慎重論もあります。とはいえ、新たな一歩を踏み出したES細胞を使った移植治療に対する期待がますます高まっているのは事実です。
SELF MEDICATION 自己管理
命に関わる心不全を予防データする方法。それには何よりもまず、心臓に余計な負担を掛けない生活習慣を常日頃から心がける事です。日常生活で意外と心臓に負担をかけているもの。それはお風呂!入浴中、心臓にはどんな負担が掛かるのでしょう?入浴中に心臓が受ける負担、血圧と脈拍の変化を耳たぶに取り付ける測定機で測ります。まず入浴前の安静時の血圧を測ります。この実験では最高血圧、最低血圧を平均した値を使います。安静時の血圧は87でした。

データ




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【お風呂の温度40度】
時間と共に血圧はどのように変化するかをチェックしてみましょう。お湯に入ると同時に我々の血圧は上昇をはじめます。尤もこの時、誰でも入浴してから2分後に血圧がピークに達するという事を皆さんはご存知だったでしょうか?確かに、入浴2分後の血圧は安静時に比べると50も上昇していました!お湯に入ると、急激な温度変化から、交感神経が働き、血管が収縮します。血管内の圧力が上昇し、血圧も上がります。6分後の血圧はピークより少し下がって100。それでも安静時と比べて10以上高くなっています。
【お風呂の温度38度】
最も血圧の上がる筈の2分後でも、血圧は約10の差しかありません。6分後の血圧に至っては89と、安静時とほぼ同じ数値に戻っていました!当然心臓に与える影響も少ない筈。という事は?入浴するならば、少しぬるめのお湯に入る方が心臓の負担は軽くなる!これが結論!
【脈拍】
では、脈拍はどうなっているのでしょう?血管が収縮すると、心臓はより激しく動いて血液を送り出す必要があります。こうして脈がはやくなります。入浴直前の数値を0とすると、脈拍は時間と共に上り続けているのが分かりますね。実は皆さんも経験がおありの「のぼせ」もこの脈拍上昇が原因です!
さらに、心臓の負担となるのが水圧です。肩までお湯に浸かる、胸と背中は、なんと500kgもの圧力で、押されていることになるのです。心臓への負担を軽くする為、浴室の温度を25度に保ち、38度のお湯半身浴で入ると、脈拍数はどのように変化するのでしょう?入浴直後に測ってみたところ、脈拍数は入浴前より僅かに4ポイント上昇しただけ。では5分後では...。なんと安静時よりも脈拍数は下回っていました!今回の実験によると、脈拍に関しては、半身浴の方が心臓に与える負担は、はるかに軽い事が分かります。実は半身浴では血圧に関しても、全身浴に比べて変化が小さく、安静時に戻りやすいのです。
ぬるめのお湯での半身浴が心臓のためにはベスト
心臓に気をつけながら、皆さんもお風呂でリラックスして下さい!

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