今週のドクターは、 九段坂病院診療部長 兼整形外科部長 東京歯科医科大整形外科 臨床教授 中井 修先生
【略歴】
東京医科歯科大医学部卒
同大助手
【ドクターの一言】 頚痛、腰痛をはじめ、脊柱の病気は、よく分かっていないものですが、できるだけ原因を探り、それに即した治療を心掛けています。
朝起きてみると・・・首がまったく動かない!無理して動かすと、アイタタタタッ・・・みなさんも一度は経験があるでしょう。寝違え!これは首の骨『頚椎』の病気なんです!大切な頭を支えている首には頚椎という骨が7個あります。首が長い人も短い人もみんな平等に7個。じゃあ、長〜い首のキリンさんもやっぱり7個。人間と同じ数の頚椎であの首を支えているのです。さて、その7個の頚椎のどこかに障害が起きると頭、手足、さらに全身あらゆるところにまで様々な症状があらわれてしまいます。残念ながら、日本人は「首が弱い」民族であることもわかってきました。頭と体をつなぐ首には、人間の生命を支える重要な器官がたくさんつまっています。なかでも一番大切なのが神経の束である「脊髄」。首の骨、頚椎の中を通っている最重要器官。つまり首の骨、頚椎は、この脊髄を守るという大きな役割も果たしているわけです。脊髄からは、全身にいきわたるいくつもの神経がむかでのように枝分かれしています。脳からの指令を体に知らせ、体で起こった情報をまた脳に知らせるという役割をはたしています。たとえば、熱いものに触れたとき、「熱い」という刺激が知覚神経を通り脳に送られて初めて「熱い!」と認識するのです。そのほかにも、心臓の拍動を調節している「自律神経」。手や足を自由に動かす「運動神経」などなど脊髄からは31対もの神経が全身に伸びていって様々な役割を果たしているのです。頚椎には、脳の指令を全身に送る伝達網が集結しているといえます。ですから、頚椎に障害が起こると、脊髄にもダメージが加わり、頭、手足、そして全身に障害が現れるのです。実は私たち日本人は首が弱く、頚椎の病気を引き起こしやすいと言われます。それは、神経の束である脊髄が入っている「脊柱管」という組織が深く関係しています。そもそも日本人は欧米人に比べて骨が小さくできていますよね。首の骨も小さめ。そして、この脊柱管も小さいため、脊髄の入るスペースが狭いのです。通常15ミリほどある脊柱管ですが、日本人の中には11〜2ミリの人も多く、ちょっとした刺激を受けただけで頚椎の病気になってしまうことも少なくありません。頚椎の病気を原因別にみると、一番多いのは老化!長年使っている頚椎は「変形性脊椎症」という病気になることが多くなります。7個の頚椎のそれぞれに椎体と呼ばれる部分があります。この椎体と椎体がぶつからないように、クッションの役割を果たしているのが「椎間板」。「椎間板」が薄くなってしまうことで起こります。これは正常な頚椎のレントゲン。骨は規則正しく並び、椎間板の厚さも十分あります。老化のため、椎間板から水分が失われると椎間板は薄くなり、骨は変形 して骨棘(こつきょく)という棘のようなものができます。老化のせいで、頚椎はこんなにダメージを受けるんです。骨が変形してできた棘のような骨棘。この骨は、神経の束である脊髄や神経根を圧迫します。6番目だと親指と人差し指。7番目だと中指。8番目の神経根が圧迫されたときは薬指と小指に痺れが出ることがわかっています。脊髄そのものが圧迫を受けたときは手や腕以外にも障害が起こってきます。「どうも足がつってしまう」「足に力が入らなくて歩けない」など日常生活に支障のある症状も少なくありません。続いては「頚椎後縦靭帯骨化症」これは、靭帯の老化が原因で起こります。7つの頚椎を上下に結び付けている組織が靭帯。老化によって、この靭帯がだんだんと硬くなり最後には骨に変わってしまうのです。初期には、首の痛みや、よく回らない、動かしにくいといった症状があらわれます。これは、骨化した靱帯がひとかたまりとなって首の動きを 著しく制限するため起こるものです。さらに骨化した靱帯は、脊椎、神経根を圧迫して手足や全身に障害を起こします。老化や、外部からの衝撃が原因で起こる頚椎の病気が「頚椎椎間板ヘルニア」です。私たちは頚椎のおかげで、首を自由に動かすことができます。このとき、一番負担がかかっているのは・・・第5と第6頚椎の間の椎間板と第6と第7頚椎の間の椎間板です。そのためこの部分は一番椎間板ヘルニアを起こしやすいといわれています。もし、外部から首に大きな衝撃が加わり、椎間板が飛び出してしまいます。その飛び出した椎間板が脊髄や神経根を圧迫して、手足をはじめ、全身に障害を与えることになるのです。脳と全身をつなぐ経の通り道、「頚椎」。頚椎の病気は、思わぬところにまで影響を及ぼしてしまうのです!
装具療法