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2003年9月14日(日) テーマは『大動脈瘤』

今週のドクター今週のドクターは、
東京女子医科大学附属第ニ病院
心臓血管外科
新浪 博先生



【略歴】

’86年

群馬大学医学部卒
東京女子医科大学附属 第ニ病院日本心臓血圧研究所循環器外科入局
米国、オーストラリア留学を経て

' 99年

東京女子医科大学附属第 ニ病院心臓血管外科講師

【ドクターの一言】
大動脈や心臓血管の手術では、切開を小さくしたり麻酔方法を工夫するなどできるかぎり患者さんへの負担を軽くし早期退院早期社会復帰ができるようにしています。


【著書】
「循環器疾患 最新の治療 96〜97」
(分担執筆) 安田 寿一 監修
南江堂
「心臓外科学―The21st century」
(分担執筆) 小柳 仁 監修
自然科学社
「Diseases of the Aorta」
(分担執筆) 
University of Moon
アルゼンチン


CONDITION OF ILLNESS 病気と症状のメカニズム

データ心臓から出た全ての血液を体全体に送る大動脈。この大動脈は、出発点である心臓から上に伸び、Uターンして胸部、腹部を通り、体全体血液を送る大切な血管です。心臓のすぐ上の大動脈弓部からは3本に枝分かれし、頭、右手、左手にデータそれぞれ血液を運びます。これは、手術に使われている大動脈弓部の人工血管。これを見るとその形がよく分かります。大動脈の直径は実に2.5〜3センチとかなり太い血管です。大動脈は、上半身、そして下半身に、血液を送る血管の主要ルート。絶えず大量の血液を運ばなくてはならないという重要な役目をしているのです。この大事な大動脈が膨らんでしまうのが、大動脈瘤です。タイトルの写真が大動脈弓部の大動脈瘤です。データコブといっても中には血液がながれます。こちらは、腹部大動脈瘤。上に見えるのは腎臓ですが、大動脈瘤は腎臓とあまり変わらない大きさにまでなってしまうのです!大動脈瘤になってしまうのは血管の構造に秘密がありました。データ血管の壁は3層からできていて、内側から内膜、中膜、外膜に分かれ、それぞれに役割があります。常に血液に触れている内膜は内皮細胞という特別な細胞でできていて、血液が固まらないように流れる構造になっているのです。そして中膜は、平滑筋という筋肉で出来ています。この中膜により伸び縮みするのです。そして外膜は内膜、中膜に比べ、硬い繊維組織でできています。外膜の役目は血管の保護なのです。動脈が膨らむ動脈瘤は、あることが要因で引き起こされます。それが成人病の代表、高血圧。そして動脈硬化です。実は高血圧の人は、動脈硬化を起こしやすく、動脈硬化は高血圧を起こしやすい嫌な相関関係があります。大動脈の中膜に脂肪が付着すると、元々は弾力のあった中膜が硬くなってしまいます。すると硬くなった血管に血液の圧力がかかって押し広げられ、データ広がっても元に戻らなくなってしまうのです。中膜に付着した脂肪が、多くなると血管全体を硬くもろくしていき、さらに動脈硬化を起こす人は、高血圧の場合が多く、より強い圧力が血管の内側にかかり、血管を押し広げ大きな動脈瘤をつくってしまうのです。これが大動脈瘤発生のメカニズムです。この大動脈瘤は、真性瘤と言う名前が付いています。そしてこの真性瘤には出来やすい場所があります。それは心臓から足の付け根まである、データ大動脈のこの辺り、ちょうど腎臓に伸びる動脈の下が出来やすい所です。瘤が大きくなるスピードには、個人差がありますが、数年かけて大きくなっていきます。ただし、時には半年で1センチ大きくなることもあります。こんな場合は要注意です。これが5センチを超えると破裂する可能性が増し、もし破裂すると大量出血を招き、命の危険を招くのです。しかも真性瘤は、ほとんど自覚症状がありません。そのため気づかないうちに瘤が大きくなってしまう事が多いのです。これが真性瘤の特徴であり、危険な点です。ただし、瘤が拡大してくると瘤の圧迫によって、異常に気付く場合もあります。例えば、胸部の大動脈瘤が大きくなると食道が圧迫されて、ものを飲み込むのが困難になったり、声帯につながる神経を引き延ばしてしまうことから「かすれ声」になることがあります。腹部大動脈瘤の場合は、たまたまお腹を触わって、コブのようなものが脈を打つのがわかり、コブに気づくことがあります。そして大動脈瘤の中には、激痛を引き起こすものもあります。データそれが、解離性瘤という大動脈瘤です。形は真性瘤が、丸い砲弾型なのに対して、解離性瘤は片側が出っ張った形をしています。この大きな違いは、真性瘤は動脈硬化と、高血圧ができるのに対して、解離性瘤は高血圧によって、引き起こされる大動脈瘤です。データ解離性瘤は高血圧の血流により血管の内膜が傷つくことから始まります。そして強い圧力によって、そこから中膜が裂けてしまうのです。すると、裂けた所にもう一つの血管がバイパスのように通ってしまい、血管が瘤状に膨らんでしまうというものです。こちらはCTによる解離性瘤の画像です。この白い部分が血管なのですが、データこのように血管が2つに分かれているのが分かります。さらに内膜には血液を固まらせない役割があるのですが、中膜に血液が通ってしまうため、この部分は血液が固まりやすく血栓を作ってしまうという特徴があります。この解離性瘤は、真性瘤が年単位でできるのと違って、一瞬で出来てしまいます。例えば強いストレスなどによって、急激に血圧が上がった場合です。この急激な血圧の上昇で、中膜が裂けてしまうのです。この時、血管が裂けることで、まわりの神経を刺激してしまい、血管痛が起こり、胸や背中に突然、痛みがでるのです。そして真性瘤も解離性瘤も、最も恐いのが破裂です!腹部大動脈瘤が破裂した場合は、内臓があるので、時には出血によってショック状態になり、突然死を起こすこともあります。そして、一番危険なのは、胸部大動脈瘤の破裂です。胸部の場合、全ての血液が出てしまい出血多量で、ほとんどの場合、死につながってしまうのです。動脈瘤が出来やすいのは、50代以上男性、そして、動脈硬化を起こしやすい糖尿病患者などです。大動脈瘤は、「動脈硬化」と「高血圧」が原因で起こる、いわば生活習慣病です。

大動脈瘤の特徴と症状
真性瘤
特徴 ●動脈硬化と高血圧が原因
●数年かかって膨らんでいく
症状 ●症状は基本的には出ない
●胸部大動脈瘤が大きくなると、ものを飲み
  込むのが困難になったり、かすれ声がでる
●腹部の場合は触ると拍動する瘤が分かる
  ことがある
解離性瘤
特徴 ●高血圧が原因
●強い圧力がかかる事で一瞬で中膜が裂   けてできる
症状 ●中膜が裂けるときに激痛(血管痛)がでる
EXAMINATION 検査
大動脈瘤の検査
問診 血圧を計る 聴診 触診
胸部X線検査 単純レントゲン写真により胸部の大動脈の大きさを見る
超音波エコー検査 超音波によって大動脈を観察する
CT検査 X線で人体を輪切り状に撮影し、
コンピュータで解析する
* 現在では3Dの画像も作り出すことができる
血管造影検査 血管に造影剤を入れ、X線で撮影する
冠動脈のような細い血管でも観察できる
MEDICAL TREATMENT&MEDICINE 治療と薬
大動脈瘤の治療
■薬物療法
  降圧剤
血圧を下げて大動脈瘤が
これ以上大きくならないようにする

コレステロール値を低下させる薬
スタチン系製剤

肝臓でコレステロールが作られるのを阻害し、コレステロール値を抑える
■外科療法
  人工血管置換術
大動脈瘤ができた血管を人工血管に置き換える
FRONTIER 最先端技術
データ大動脈瘤の外科的治療法と言えば、人工血管置換術です。ところが最近、臨床試験中の期待されている治療法があります。それがステントグラフト内挿術です。この手術術では、人工血管と形状記憶合金でできたスプリング状のステントを組み合わせたものを使用します。この人工血管をたたんでカテーテルに挿入します。そして、太ももの動脈からカテーテルを入れ大動脈瘤のある所で、人工血管を開き、血管の内部を保護します。たとえば、腹部大動脈瘤の手術では、カテーテルを太ももの動脈に挿入します。人工血管を広げる前に造影剤を流し、コブの位置を確認します。データそして、人工血管はコブの前後の正常の大きさの動脈にかかるように、広げます。この手術では、動脈瘤が大動脈の二股のすぐ上の所にできている為、人工血管は二股になった所を含めて設置します。もう片方の太ももから もカテーテルを挿入して、二股の両方に人工血管を設置データするのです。人工血管広げた後の映像です。造影剤の混じった血液が人工血管の内側を流れているため、コブが見えなくなりました。人工血管が正常に設置された証拠です。これにより、膨らんだ部分に圧力がかからなくなり、破裂の心配はなくなりました。これにより、通常は半年〜1年かけて膨らんだ血管は元に戻るのです。このステントクラフト内挿術は現在、臨床試験中ですが、一日も早い認可が待たれるところです。
SELF MEDICATION 自己管理
死に直結する恐ろしい病気、大動脈瘤。この大動脈瘤にならないためには、どんな生活を心がければ良いのでしょうか?そのためには、動脈瘤につながる、動脈硬化の予防が大切になります。


データ
データデータ





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データ

動脈硬化の引き金と言えばコレステロールです。血管にコレステロールが付着することで動脈硬化が引き起こされます。ではコレステロールの多い食品を控えればいいのでは?と思いがちですが、実は体内のコレステロールの8割は、肝臓で作られているのです。そしてコレステロールの中でも問題なのは、体内にコレステロールを運んでいるLDLコレステロール、俗に言う悪玉コレステロールの数です。そしてこのLDLコレステロールを増やしている原因の一つが、中性脂肪です。中性脂肪は肉の脂身などに含まれているものですが、摂取することで私たちのエネルギー源として脂肪という形で体内に蓄積されます。体内に中性脂肪が多いと、悪玉コレステロールの数が増えてしまいます。ですからこの中性脂肪を少なくさせることが大事になってくるのです。肉などの動物性脂肪はもちろん、気を付けなければならないのが糖分とアルコールです。実は中性脂肪は肝臓でも作られているのですが、この時、材料となるのが、糖分やアルコールなのです。甘いものやコレステロールの取り過ぎには、気をつけましょう。では一度とりこんでしまった中性脂肪はどうすれば、減らす事が出来るのでしょうか?有効なのが有酸素運動です。有酸素運動とは、ゆっくり時間をかけて酸素を消費する運動のこと。有酸素運動をすれば、体内に脂肪として蓄えられた中性脂肪を燃焼させることが出来るのです。そのため時間をかけて歩く、ウォーキングが最も適しています。そしてこのとき目安となる時間は最低20分以上。脂肪が燃焼されるようになるには20分以上の運動が必要なのです。そして控えたいのが喫煙です。喫煙は血圧を高め、血液中の中性脂肪と悪玉コレステロールを増やします。タバコは大動脈瘤には最も悪い影響を与える、可能性があります。

生活スタイルを見直すことが、
大動脈瘤を予防する何よりの方法です。

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