円形脱毛症は、爪程の大きさから手の平サイズまで、円形に髪の毛が抜ける病気。治ったかなと思っていても１〜２年おきに場所を変え、繰り返し発症する場合も少なくありません。またひどい場合は、毛の抜けてしまう部分が、頭全体に及ぶ場合があるだけでなく、眉毛、睫毛、更に全身の体毛まで抜けてしまうこともあります。私たちの髪の毛。その総数は平均でおよそ十万本と言われています。そのうち、６０〜８０本は毎日、自然に抜けて行きます。実は、我々の頭には成長期、退行期、休止期の髪が混ざり合って、生えています。頭皮の下の部分にあたるのが毛根です。髪の毛の成長で重要な役割を果たすのが毛乳頭。血液中の栄養分やホルモンを髪の毛のもとになる毛母細胞に送ります。すると毛母細胞は細胞分裂を繰り返します。髪の毛は毛母細胞の分裂によって伸びてゆくのです。この黒い部分が毛母細胞。実は髪の毛とは細胞分裂を終え、既に死んだ毛母細胞なのです。こうして細胞分裂により１日に０．３５ミリずつぐんぐん伸びてゆく成長期が２〜５年続くことになります。やがて毛乳頭に寿命が来ると細胞分裂が徐々に止まる退行期が訪れ、２週間ほどで髪の成長は完全に止まります。それから、髪の毛は休止期に入ります。この段階になると既に毛乳頭は死んでいますからもう髪の毛はいつ抜けてもおかしくない状態になっています。そして、この不安定な状態が３ヶ月も続くのです。このように、髪の毛は発生から抜けるまで３つの時期を繰り返すヘアサイクルで成り立っているのです。退行期、休止期の髪は全体の１５％。残りの８５％は成長期。こうして、髪の毛の量は保たれているのです。では、異常な抜け毛とはどんなものなのでしょう。皆さんが直ぐに思い浮かべるのは、男性特有の薄毛、男性型脱毛症でしょう。男性型脱毛症の最大の原因。それはテストステロンという男性ホルモン。テストステロンが毛乳頭や皮脂腺に運ばれてくると、そこで更に強力な男性ホルモンが作られます。この強力な男性ホルモンは毛母細胞へと運ばれてしまいます。この強力な男性ホルモンは毛母細胞の分裂を阻害する働きを持っています。やがて毛母細胞の分裂がストップ。髪の毛が抜けていき生えなくなります。もっとも、この男性型脱毛症には１０〜２０年かけてユックリと進行する特徴があります。では、急に髪がなくなる円形脱毛症は何が原因なのでしょう。現在のところ、円形脱毛症は自己免疫疾患と考えられています。免疫とは、体の中に侵入してきた有害な細菌やウィルスといった外敵から、我々の体を守ってくれる働きの事です。この時、外敵を体の細胞と区別して攻撃命令を出すのがＴリンパ球です。そして、円形脱毛症とは、このＴリンパ球が毛根を外敵と間違えて誤った攻撃命令を出すことによって起きてしまう病気なのです。一度攻撃が始まってしまうと更に多くのＴリンパ球が毛根に集まり激しい攻撃を繰り広げます。そのため毛根が破壊されてしまい、本来は成長期にあった筈の元気な髪の毛でさえ、突然抜け落ちてしまいます。これが円形脱毛症の基本的メカニズムと考えられています。また円形脱毛症でも症状によって、毛根の壊れ方に様々な形状の違いが現れます。でも何故円形に毛が抜けるのでしょう。また何故再発を繰り返すのでしょう。実はその謎は未だに解明されていないのです。しかも、ただ円形に髪の毛が抜けるだけではありません。１番目は単発型。単発といっても数箇所に脱毛が起こることもあります。次は多発融合型。円形脱毛症では最も多いタイプです。３番目はびまん型。頭全体に渡って脱毛が広がってしまったタイプ。決して全体的な抜け毛ではなく、よーく見るとそれぞれの部分で円形に毛が抜けているのです。次は全頭型。数箇所の抜け毛がつながって行き、ついには頭全体の毛が全て抜けて、髪の毛がなくなってしまうタイプです。最後は汎発型。頭全体から睫毛、眉毛、腋毛等、全ての体毛が抜け落ちてしまいます。ご覧のように円形脱毛症の症状は大きく５つに分けられます。特に、汎発型の場合、単発型から始まり、全てのタイプを経ている事が多いようです。また円形脱毛症は大人の病気と考えられがちですが、発症例が最も多く、症状も重くなりがちなのが実は子供たち、それも幼児期の発症例が多いのです。特に幼児の場合、５０〜７０％がアトピー性皮膚炎、喘息、アレルギー性皮膚炎を併発している特徴があります。このことからも、Ｔリンパ球の異常な働きによる自己免疫疾患の影響や関与が深く疑われているのです。円形脱毛症は自己免疫の異常が関わる厄介な病。単なるストレスが原因なんて軽く考えては、間違いの元ですよ。

【どんな薬を使ってますか？】
『血行をよくする薬、発毛剤か育毛剤かわかんない』
自分の使っている薬が分からない。これは×。医薬品である発毛剤と医薬部外品である育毛剤。この２つは目的が全く違う薬である事をご存知でしょうか？発毛剤は男性型脱毛症の治療、つまり髪の毛を生やす効果を目的とした薬。頭皮の毛細血管を広げ発毛に必要な栄養を送ったり、髪の毛の元になる毛母細胞に直接働きかけて発毛を促します。一方、育毛剤は育毛、フケ・痒み等を抑える効果が目的です。髪に栄養を送る為血行を促進させる成分や頭皮の汚れを分解する成分が主に含まれています。いわば髪の健康を保つ為の薬。
【どんな使い方をしていますか？】
『こだわってないよ。自然に使ってる』
是非説明書を読んでください。発毛剤も育毛剤も一度にたくさん使ったり、決められた回数を超えて使っても薬の効果が高くなるわけではありません。また発毛剤も育毛剤も一度に大量に使ったからといって、薬の性質上、多大な効果がもたらされるというものではありません。むしろ、過剰な使い方をすると、痒みや炎症といった副作用を引き起こす可能性さえ出てくるのです。種類によっては男性専用の薬もありますから、最初に使用上の注意をよく読んでから使いましょう。
【薬を使った後、何かしていらっしゃいますか？】
『ブラシで叩いてマッサージしてるよ』
ブラシで刺激。これは△。確かにマッサージ等で血行をよくするのは悪いことではありません。但し、強すぎる刺激は頭皮はおろか毛細血管を傷つけ、毛乳頭への栄養分の運搬等を妨げるといった危険性も出てきます。頭皮に薬を塗った後等、指の腹、中側の柔らかい部分で軽くマッサージする程度で十分なのです。
【どのくらいの期間使ってます？】
『効果がないから３ヶ月でやめちゃった』
気が短すぎて大×。前にも申し上げたように我々の髪の毛は１日に０．３５ミリしか伸びないもの。１ヶ月でやっと１センチ。薬にしても最低、半年〜１年は使わないと、目に見えるような効果が現れる訳はないのです。特に発毛剤の場合、使用を止めると元に戻ってしまう場合もあるので注意して下さい。