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2003年8月31日(日) テーマは『食道がん』

今週のドクター
今週のドクターは、
国際医療福祉大学付属
熱海病院 内科
川口 実先生



【略歴】

’75年

東京医科大学卒業

’76年〜2年間 国立がんセンターで研修
その後、東京医科大学第4内科助教授
’01年2月〜 国際医療福祉大学教授・山王病院勤務

【ドクターの一言】
構造改革では医療の世界でも「痛み」を伴います。医療費の自己負担は確実に増えます。真の病気の人、家族の痛みは大変です。病気にならないように注意して、ストレスをためない事が基本です。


【著書】
「内視鏡のよみ方と鑑別診断」 医学書院


CONDITION OF ILLNESS 病気と症状のメカニズム

データ食道…あなたが食べた物を、胃に送るための大切な管。この食道があるからこそ、私達は食べたり飲んだりすることができるのです。この「食べものの通り道」に悪性の腫瘍ができるのが「食道がん」。これは、内視鏡で見た食道の写真です。データ白く膿のように映っているのが、食道がんです。健康な食道は、ピンク色の血管が縦に見えますが食道にがんができると、血管は見えず、通り道が塞がって、食べ物や飲み物が通りにくくなってしまいます。食道は、長さおよそ25cm太さ2〜3cmの臓器。口から入った食べ物を胃に送る管の役割をしています。データ内視鏡で、食道の中をのぞいてみましょう!のどのあたりを過ぎて・・・胸のあたりを通過・・・そしてここが、食道と胃の境目噴門、ここから先が胃になるので、食道はここまでです。食道は、筋肉で出来ています。この筋肉が収縮して蠕動運動を起こし、食べ物を胃に送っているのです。筋肉の内側は、食べ物が通りやすいように粘膜で覆われ、データ6つの層から成っています。食道がんは、一番内側にある粘膜の細胞「扁平上皮細胞(へんぺいじょうひさいぼう)」に、何らかの刺激で傷がつき、遺伝子に突然変異が起こることで発生します。そして、がん細胞が増えるにしたがって、粘膜の奥へと広がっていくのです。喉につながる「頸部食道」、データ胃につながる「腹部食道」、そしてその間の「胸部食道」の3つにわけられるわたしたちの食道。食道がん全体の半分以上が、真ん中「胸部食道」で発症しています。食道がんは、ごく初期には、ほとんど症状がありません。そのため、粘膜層にとどまっているような早期のがんは、発見が難しいのです。がんが進行して、食道の壁をつくる筋層にまで入りこんでくると、食道が塞がれて狭くなるため、食べ物が喉に「つかえる」ようになります。自覚症状が現れるのは、この頃。最初は、硬い食べ物を飲み込んだときに、喉のつかえを感じますが、そのうちやわらかなものでも、だんだんつかえるようになります。また、熱い物を飲んだ時に、「しみる」ような感じがします。食べものがつかえたり、しみるようになるとかなり進行している状態です。さらに、がんが進行すると、データ食道の壁を突き破り、大動脈・心臓・肺など、食道のまわりの臓器に転移します。進行すると、食道が完全に塞がり、食べ物はもちろん、飲み物や唾液さえも飲み込めなくなります。また、がんが食道のそばにある声を調整する神経、反回神経を圧迫すると、声がかすれるといった症状がでてきます。早期発見がむずかしく、しかも進行が早い。食道がんは本当に「恐ろしいがん」なのです。食道の、がんではない「ほかの病気」を放っておいて、食道がんになってしまうという場合もあります。その一つが、「逆流性食道炎」。最近増加傾向にある病気なんです。食道には、胃から食べ物や胃液が逆流しないような仕組みが備わっています。逆流性食道炎は、何らかの理由でその仕組みがうまく働かず、胃液などが食道に逆流して、食道の粘膜が赤く炎症を起こす病気です。胃液には、強い酸をもった胃酸がたくさん含まれています。胃の壁には、胃酸の刺激から身を守る仕組みが備わっていますが、食道の粘膜はその仕組みがなく、逆流してきた胃酸で粘膜が傷ついてしまうのです。逆流性食道炎の特徴は、なんといっても強い胸やけを起こすこと。噴門機能が低下する高齢者、肥満の人に多くみられます。太っていると、脂肪によって腹圧がかかり、胃の内容物が食道へと押し上げられてしまうのです。この逆流性食道炎を放っておくと、データなんと食道がんを発生する確率が40倍も高まるといいます。逆流性食道炎から発症するがんは、通常の扁平上皮がんと異なり、「腺がん」と呼ばれるもの。今まで、腺がんは日本人に少なく、欧米人に多いといわれてきました。しかし、今後この食道がんが増えるといわれています。データ放っておくと食道がんになってしまう病気。もうひとつは「アカラシア」。食べものや飲み物がスムーズに通らなくて、なんだか胸につかえる・・・なんていう方は要注意。食道には、下部食道括約部があり、これが緩むことで、食べ物や飲み物を胃に送っています。ところがアカラシアは、この下部食道括約部を開かせる神経に異常をきたし、一時的に痙攣を起こして、開かなくなる病気なのです。20代や30代の若い人に多く発症し、10年以上放っておくと、食道がんになる割合が高くなるので注意が必要です。ところで、食道がんは、圧倒的に男性に多く発症します。なんと男性は、女性のおよそ6〜7倍も多く食道がんになると言われるほど。データ年代別で見ると、50歳代から急速に増え始め、60歳代が発症のピークとなっています。これはいったいなぜなんでしょうか?食道がんの原因は、まだ明らかではありませんが、危険因子としては、「強いアルコールを好む」、「熱い食べ物や辛い食べ物を好む」、「毎日20本以上のタバコを吸う」・・・などが挙げられます。 つまり慢性の刺激が誘因の一つと考えられています。また、国立がんセンターなどによる最新の研究では、なんと「お酒に弱い人は、食道がんになりやすい」ことが判明したのです!お酒をのむと、顔色が赤くなる人と、まったく変わらない人がいますよね。あなたはどちらのタイプですか?お酒をのんで赤くなる人は、変わらない人に比べて毎日1.5合以下の飲酒量で6倍1.5〜3合程度だと、驚くべきことに61.2倍も、食道がんになりやすいことがわかったのです!顔が赤くなるかならないかは、アルコールを分解する酵素の数で決まります。お酒を飲んでも顔色が変わらない人は、一般にアルコール分解酵素が多く、体内からアルコールが早く消えるので細胞に障害が起こりません。ところが、飲むと顔が赤くなる人は酵素の数がデータ少なく、アルコールが体内に停滞して、細胞に障害を起こしやすくなるのですちなみに毎日に3合以上お酒を飲む習慣のある人は食道がんになるリスクが92.7倍にはねあがるといいます。飲みすぎにはくれぐれも注意してくださいね!食道がんは、自覚症状が少なく、早期発見が難しいく、転移の早い恐ろしいがんなのです。

EXAMINATION 検査
食道がんの検査
問診・・・症状や飲酒・タバコなどの生活習慣を調べる

内視鏡検査・・・がんの有無・場所・範囲・進行の程度を調べる
(ルゴール染色法)

生検・・・がんかどうかを確定する

超音波内視鏡検査・・・がんの深さを調べる

CT、MRI検査・・・がんの転移を調べる
MEDICAL TREATMENT&MEDICINE 治療と薬
FRONTIER 最先端技術
データ進行した食道がんや、高齢で大きな手術に耐えられない人、また、糖尿病など重い合併症のある人には、手術が適応できない場合があります。その場合、これまでは放射線療法化学療法が行われてきました。放射線療法は、高いレベルの放射線を体の外からがん細胞にあてることにより細胞そのものを殺してしまおうという治療法ですがん細胞はまわりの正常な細胞よりも早く成長し、分裂するので、放射線療法は、がんには有効な方法です。データしかし、同じ場所への照射は一回に限られ、「白血球の減少や倦怠感、吐き気・発熱」など、被爆により副作用があまりにも多すぎるのが欠点でした。一方、点滴で行われる、抗がん剤による化学療法も、がん細胞の分裂や増殖を抑えるもので、やはり、食道を失うことがないというメリットがあります。しかし、治療が長びくとがん細胞がだんだん薬に対して強くなってしまい、全身の正常な細胞にもダメージを与え、免疫力が低下するなどの限界がありました。データそこで、最近注目されているのが、「放射線化学療法」・ケモラジです。これは、放射線と化学療法をそれぞれ少なくして同時に行う治療法です。この方法を行うと、副作用も少なく、しかも短期間で食道がんの治療に高い効果があることが分かりました。治療期間は、だいたい3〜4ヶ月。実際に、かなり進行した食道がんの治療に放射線化学療法を行ったところ、3ヶ月後には、きれいにがんがなくなったという結果が出ています。さらに、最近では、データ手術ができない人ばかりでなく、広い範囲にできた早期がんに対しても効果があることが分かり、大きな期待がよせられています。放射線化学療法・ケモラジのメリットは、身体的負担が少ないこと。そして、食道を残せるということです。そのおかげで、治療後も以前と同じような食生活を送ることができ、体重が減る事もありません。ただし、治療効果の面では、個人差がある上、治療法そのものの歴史がまだ浅く、長期的な効果や副作用については、研究中です。早期発見がむずかしく、進行の早い食道がん。その最新治療として、ケモラジの期待はますます高まっています。
SELF MEDICATION 自己管理
データ自覚症状が少なく、早期発見のむずかしい食道がん。まずは、放っておくと食道がんになってしまう病気、逆流性食道炎や、アカラシアを防ぐことから始めましょう。そこで!食道がんにならないための5か条!


データ


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【その1】
お酒を飲みすぎないこと!お酒を飲むと、アルコールの刺激によって食道の粘膜に傷がつき、粘膜に炎症が起こります。これを放っておくと、食道がんになるおそれがあるのです。
【その2】
脂っぽいものを食べ過ぎないこと! 脂ものの摂りすぎには十分注意しましょう。とくに飲酒と喫煙、ふたつの習慣がある人は要注意!国立がんセンターの調べでは、食道がん患者の実に75%が飲酒と喫煙の習慣があったといいます。お酒とたばこ・・・少し減らす気になりましたか?
【その3】
体重を減らすこと!太っていると、腹圧が高まります。その圧力で、胃の内容物が食道の方に逆流して押し上げられてしまいます。太っている人は、運動をして体重を減らすようにしましょう。
【その4】
長時間前かがみの姿勢をとらないこと!そしてさらに、逆流性食道炎を誘発する意外な原因が!それは、普段何気なくとっている姿勢。パソコンを長時間打ったり、風呂掃除などをするときなど、前かがみになることは意外に多いものです。この姿勢は、腹圧がかかり、胃から食道への逆流を起こしやすくなるのです。 2時間に一回は休憩を入れましょう。そして、寝るときの姿勢に気をつけるのも大切!
【その5】
寝るときに上半身を高く、そして右を下にする! 寝るときに、胃よりも食道を高くすると胃液が逆流しにくくなります。首だけでなく、食道に傾斜がつく姿勢で横になりましょう。さらに、できるだけ右側をむいて寝るのもコツ。胃の出口は、身体の真ん中より、やや右側にあって食べたものは胃の出口付近にたまっています。そこで、体の右側を下にして寝れば、胃液が十二指腸に流れるので、逆流を防ぐことができるのです。でした。
【大切なこと】
日常生活に気をつけることも大切ですが、食道がんの予防で、一番大切な事は「内視鏡検査を受けること」。これに尽きるかもしれません。このがんは、自覚症状があまりなく進行するため、一年に一回は検査を受けることをお勧めします。特に、50歳以上の男性で、飲酒や喫煙の習慣がある人、胸焼けやつかえ感を感じる人は、受診するようにしましょう。

食道がんを予防するには、日頃の生活習慣を改善して、
食道に負担をかけないこと。
そして、きちんと検診を受けることが何より大切なのです。

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