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2003年8月24日(日) テーマは『難聴』

今週のドクター
今週のドクターは、
虎の門病院 耳鼻咽喉科
熊川 孝三先生



【略歴】

’76年

順天堂大学医学部卒
付属病院脳神経外科学研修医

’80年 東京大学付属病院耳鼻咽喉科医員
’90年 虎の門病院耳鼻咽喉科医長
’99年 初めて脳幹電極インプラントにより聴力を取り戻す手術に成功
現在に至る

【ドクターの一言】
患者さんが感じている症状には、一つの病名では説明できない、他の病気の大事なキーワードが隠されていることがあります。遠慮しないで症状を並べたてて下さい。


【著書】
「補聴器と人工内耳」 中山書店
「耳鼻咽喉科」 六法出版社


CONDITION OF ILLNESS 病気と症状のメカニズム

データボリュームをいっぱいあげないと、テレビの音が聞こえない。どうも最近、電話の声が、聞き取りにくい。そう感じる方がいらしたら、もしかするとそれは、「難聴」かもしれません。人は誰しも年をとるにつれて、徐々に聴力は衰えていきます。そのため、難聴の中でも一番多いのが老化による難聴です。ところが近年、若い人が何の前触れもなく突然、音が聞こえなくなる難聴が増えているのです。そして何と、命に関わる難聴もあるんです!では、データどの程度音が聞こえなくなると難聴と呼ばれるのでしょうか?例えば、新聞をめくる音。これが聞こえづらくなったら要注意です。耳は大きく分けて「外耳」、「中耳」、「内耳」に分かれています。音とは空気の振動です。その振動は外耳を通り、中耳の鼓膜を振動させ、内耳へと伝わります。データ音の振動は内耳で電気信号に変えられ脳へと送られ、初めて「音」として認識されるのです。ですから「音を聞き取る」経路のどこかに障害が起きると、音が聞き取りにくくなります。この障害を起こす部分によって、難聴は2つに分かれます。その1つが「伝音難聴」です。この難聴は、音の振動を伝える「外耳」や「中耳」に障害がある時に起こります外耳に起こる難聴の大きな原因が、耳垢のつまりです。音の通り道である外耳が、耳垢でふさがってしまうと、空気の振動が鼓膜に伝わらず、難聴になってしまうのです。そして、中耳に起こる難聴の一つが「耳硬化症」という病気です。音は空気の振動となって、外耳を通り鼓膜を振動させます。データその振動は、さらに3つの骨でできている「耳小骨」で増幅されて、内耳へと伝わります。耳硬化症では、耳小骨の一つのアブミ骨が硬くなって、動きが悪くなります。その結果、内耳に音が伝わります。子供の頃によくかかる「中耳炎」も、伝音難聴を引き起こします。こちらは正常な鼓膜。データ乳白色に光るきれいな状態です。一方こちらは中耳炎の鼓膜。赤く腫れ、鼓膜に孔が開いています。鼓膜に穴が開くことで、正常に動かなくなり聴力が低下してしまうのです。そして、もう一つの難聴が「感音難聴」です。この難聴は、外耳や中耳から伝えられた音の振動を認識して電気信号に変える、「内耳」などの障害によって起こります。感音難聴でもっとも多いのが、老化による聴力の低下「老人性難聴」です。体の様々な働きは、年をとるにつれて衰えていきます。もちろん、音を聞き取る聴力も、30代前半から両耳ほぼ同時に衰えてくるのです。耳の組織の中で、老人性難聴と、最も深い関わりがある「内耳」。この内耳には、データかたつむりの形に似た「蝸牛」という組織があります。その内部には、音を感じる「有毛細胞」が並んでいます。蝸牛の入口付近の有毛細胞は周波数の高い音を感知し、奥にいくほど感知する音は低くなっていきます。老人性難聴では、この有毛細胞が、蝸牛の入口部分から、徐々に変性します。データそのため、周波数の高いほうの音から、だんだん聞きづらくなっていくのです。音の情報を内耳から脳へ送る聴神経が、老化によって減っています。脳の細胞の数も減っていきます。そのため、言葉を理解する能力が遅くなり、早口で話されると、そのスピードについていけず、話の内容が分からなくなります。そして怖ろしい難聴のひとつに、突然襲う、強い難聴があります。それが「突発性難聴」です。突発性難聴は、何の前触れもなく、ある日突然起こる難聴です。ほとんどは片側の耳だけに発生するため、難聴に気が付かない人もいます。実は、原因ははっきりと分かっていませんが、ストレスが引き金になっていると考えられています。ストレスがかかると、交感神経が刺激され血管が収縮します。もちろん、内耳の血管も急激に収縮して、内耳に血液が通わなくなります。このため、内耳の機能が正常に働かなくなり、データ突発性難聴になると考えられているのです。また、帯状疱疹ウィルスなどが内耳に感染すると内耳が正常に機能しなくなり、難聴を引き起こす場合もあります。最も怖ろしいのが、「聴神経腫瘍」。これは内耳から脳につながる聴神経に腫瘍ができる病気です。耳のMRI写真の丸い部分が聴神経にできた腫瘍です。データ腫瘍が大きくなると聴力が低下します。また、腫瘍が周囲の神経まで侵すと、顔面神経麻痺などの症状も起きます。さらに、腫瘍が大きくなると、脳まで圧迫されて、死に至ることもあるのです。難聴にはさまざまな原因があり、中には怖ろしい難聴もあるのです。

EXAMINATION 検査
難聴の検査
問診・視診
純音聴力検査
どのくらいの音が聞こえているのかを調べる
気導聴力検査骨導聴力検査により伝音難聴か
感音難聴かを調べる
語音聴力検査
言葉の聞き取りを調べる
伝音難聴→音を強くすれば正解が増える
感音難聴→音を強くすると音が響いて聞き取りにくくなる
聴性脳幹反応検査
脳波が音に反応するかどうかを調べる
MEDICAL TREATMENT&MEDICINE 治療と薬
難聴の治療
耳硬化症の治療
手術により動かなくなったアブミ骨を人工の骨に取り替える
突発性難聴の治療
血管拡張薬で血流の循環を促進したり
ステロイド薬で有毛細胞や聴神経の機能を回復させる
キセノン光により血管を拡張させ、血流の循環を促進させる
※高度の難聴の場合は内耳に電極を埋め込む『人工内耳治療』
FRONTIER 最先端技術
データ人工内耳内耳に障害があった場合のみ有効で、聴神経に障害がある場合には使えませんでした。しかし近年、聴神経に障害を受けた、難聴の患者にも有効な治療法が開発されたのです。それが「聴性脳幹インプラント」です。これは聴神経よりも、さらに中枢にある脳幹の聴覚路を直接に電気刺激して、聴覚を取り戻すという最新の治療法です。装置のシステムは人工内耳と同じですが、人工内耳は蝸牛に埋め込まれるのに対し、聴性脳幹インプラントは、中枢にある脳幹の蝸牛神経核の表面に固定するというものです。聴性脳幹インプラントは脳と小脳の間に埋め込みます。データ白い部分が、埋め込まれた聴性脳幹インプラントの電極部分その上から脂肪を置き、電極をきちんと固定します。この手術は全身麻酔で行い、およそ8時間で終了します。一昔前までは夢物語に近かった、聴性脳幹インプラント。重度の難聴患者にとって、聴覚を取り戻す夢が、現実のものに近づきつつあります。
SELF MEDICATION 自己管理
データ人間の聴力は、30代から衰え始めそのため、高齢者などは、生活の中でも、色々と不便を感じるもの。その1つが「電話」。話の内容がなかなか聞き取りづらいこともあるでしょう。そこで耳の遠い人でも明瞭に聞こえるという、「骨伝導電話」という電話が、最近開発されたのです。この電話は受話器にスピーカーの穴がついていません。頬や首筋に受話器をつけることで、声の振動を顔の骨を通して内耳の蝸牛に伝え、相手の声が鮮明に聞こえるという、画期的な電話なのです。

データ
データ
データデータ
データ
データ

データデータ


一方、老人性難聴の方々が生活していく中で、一番重宝しているのが「補聴器」です。この補聴器も品質がかなり向上しているのです。今まで使われている補聴器はこのようにいくつかのタイプがあります。
【耳穴型】
軽度の聴力の人に使われます。
【耳かけ型】
中度から重度までの人に使用します。
【箱型】
さらに重度の難聴の人に使います。しかしこれら従来のアナログ式の補聴器は、聞きたい音を大きくすると、雑音まで大きく聞こえてしまうこともありました。ところが現在、アナログ式の弱点を改善したデジタル補聴器が主流となりつつあるのです。
【デジタル補聴器】
デジタル補聴器には、小さなコンピューター「マイクロチップ」が入っています。そのため、電話の時のハウリングを最小限に抑えることが出来る他、会話と騒音などのノイズを分け、会話だけを強調して聞こえるようにします。このように環境の変化に自動的に対応し、常に快適な音量と音質を保ってくれるようになりました。
【オーダーメイド】
また耳の形や穴は、人それぞれです。そのため、市販の補聴器が耳穴に、フィットしないことがあります。そこで最近注目を集めているのが「オーダーメイドの補聴器」です。病院では「補聴器外来」を設け、患者さんの耳穴の形に合わせる、補聴器選びのお手伝いをしてくれるところもあるのです。まず聴力検査を行い、難聴の状態を把握して、どのように音を補正するのかを決めます。そして耳穴にぴったりおさまるように耳型を取っていきます。耳型はおよそ5分で固まります。耳型を元に、本体を作り、アンプやスピーカーを組み込みます。そして聴力検査の結果をもとに、補聴器の調節をして完成です。これによって、装着感が良いだけでなく、音漏れによるハウリングも防ぐことができる、自分だけの補聴器を持つことが、可能となりました。

難聴を補う器具も、研究が重ねられ、
日々品質が向上し続けています

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