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2003年8月10日(日) テーマは『尿路結石』

今週のドクター
今週のドクターは、
帝京大学病院 泌尿器科 主任教授
堀江 重郎先生



【略歴】

 

東京大学医学部卒
国立がんセンター中央病院
東京大学医学部講師、杏林大学助教授を経て

’03年4月〜 現職
泌尿器手術全般に加え、尿路結石、前立腺癌、男性更年期障害に詳しい

【ドクターの一言】
まず来院された患者様の不安や痛みを和らげることが医療の基本と考えています。どんな治療も患者様とよく相談して進めます。世界標準の治療を心がけ診療チーム全体が絶えず研鑽を重ねています。


CONDITION OF ILLNESS 病気と症状のメカニズム

データこの世のものとは思えない痛み」。そんなふうに表現される痛さ。突然、脇腹や背中が激しく痛み、脂汗を流して、うずくまる!こんなことが起こる恐ろしい病気が「尿路結石」なのです。胆石、膵炎と並んで、3大激痛の病気のひとつに数えられる尿路結データ石。「尿路」というのは文字通り尿の通る道。つまり尿の作られる腎臓から、尿管、膀胱、そして尿道…。そのどこかに石ができてしまうのが「尿路結石」です。石と言ってもその種類は様々。このようなものが私たちの体の中で作られてしまうのです!これは内視鏡による膀胱内の映像です!データこんなにたくさんの石ができることがあるんです!残念ながら石の出来る原因はまだはっきりとは分かっていません。しかし年々、尿路結石の患者さんは増えています。この増加は、動物性脂肪や動物性タンパク質の摂取量と深い関係があると考えられているのです!尿路結石の成分には様々なものがあり、特に食生活と密接に関係しているのがシュウ酸カルシウム結石リン酸カルシウム結石などのカルシウムを成分とする結石です。尿路結石のなんと8割がこのカルシウム結石!カルシウム結石は、尿の中のカルシウムと植物に含まれているシュウ酸が結合して、結晶化したものです。本来なら、シュウ酸とカルシウムは、腸の中で結合して、便として排泄されます。しかし、データ肉などを食べると、腸の中で動物性脂肪やタンパク質に含まれる脂肪酸がカルシウムと結合して排出されてしまい、シュウ酸は結合する相手を失ってそのまま残ってしまいます。この残ったシュウ酸は腸で吸収され、腎臓へ行って、尿の中に排泄されます。そこで尿のカルシウムと結びついて結晶となってしまうのです。このところいわれているカルシウム不足も要因の一つです。腸でシュウ酸と結合するカルシウムが足りないと、余ったシュウ酸は尿の方へ排泄され、尿のカルシウムと結合して結石を作ってしまいます。データ次に「リン酸マグネシウム・アンモニウム結石」について説明しましょう。この結石は別名、感染性結石といわれ、尿路内にいる尿素分解菌という細菌の感染で作られます。尿素分解菌は本来弱酸性の尿をアルカリ性にします。アルカリ性になると、尿の中に含まれているリン酸マグネシウムアンモニウムが結晶化して結石となってしまうのです。その他、摂取する水分が足りないために結石が出来る事もあります。データ水分が不足すると尿の濃度が高くなり、尿の中の様々な成分が濃縮され、結晶化して結石ができるのです。三大激痛の一つと言われている尿路結石ですが実は痛みの度合いは、結石のある場所で大きく変わってきます。まずは、腎臓でできる腎臓結石。結石の多くは腎臓で発生し、尿管へと落ちていきますが…そのまま腎臓に留まっているものを、腎臓結石と呼ぶのです。データこれは超音波検査による腎臓の映像です。この白い点が腎臓結石。実は、腎臓に結石がある段階では、あまり痛みは感じません。そのため自覚症状が少ないのが特徴です。腎臓いっぱいの大きさになる「サンゴ状結石」ができ、腹痛や血尿がでて、ようやく気付くことさえあるのです。腎臓でできた石が尿管に落ち尿管に詰まると尿管結石と言われます。そしてこの尿管結石こそが、最も痛みを感じる結石なのです。尿管は腎臓で作られた尿を、ぜん動運動により膀胱へ送っているのですが、石が詰まるとぜん動運動がそこで止まり、尿管は痙攣してしまいます。データこの「痙攣」がまわりの神経を刺激するのです。これにより吐き気や冷や汗を伴う疝痛発作がおこります。「激痛」と言われる尿路結石とは、この尿管結石のことだったのです!尿管結石の痛みは数時間続きますが、ひっかかった石が膀胱へ落ちれば嘘のように治まります。石が膀胱に落ちる。これは、膀胱結石という事になります。膀胱結石には、膀胱の中で新たに作られるものもあります。尿の出方が悪くなり、膀胱に絶えず尿が残っているようだと、この結石が出来てしまうのです。この膀胱結石、たいていは痛みはあまりなく、小さなものなら尿と一緒に排出されます。ただしその石が尿道につまると大変な事になります。データ尿道結石は、排尿痛が起きたり、尿が出なくなる尿閉という状態になってしまうのです。日本人は腎臓結石、尿管結石が圧倒的に多く、全体の95%を占めています。尿管結石が恐ろしいのは、石が尿管につまると腎臓に負担をかけ、腎臓を駄目にしてしまうのです。また、石には雑菌が繁殖しやすく、細菌感染が起こりやすくなって、膀胱炎や尿道炎、腎孟炎といった尿路感染症を起こすこともあります。尿路結石は、腎臓や膀胱内にあれば症状はあまりでません。しかし、ある日激痛が襲うというやっかいな石なのです。

尿路結石の種類と症状の症状
腎臓結石

腎臓にできる結石

症状はあまりない
尿管結石 腎臓でできた結石が
尿管で詰まる
吐き気や冷や汗を
伴う疝痛発作を起こす
膀胱結石 膀胱内にできる結石
(排尿障害に伴うことが多い)
症状はあまりない
尿道結石 膀胱内の結石が
尿道で詰まる
排尿痛や尿閉
EXAMINATION 検査
尿路結石の検査
問診 過去の結石の有無・生活環境や食生活の様子
を聞く
尿検査 顕微鏡で尿の中の赤血球の数を調べる
尿のpHから結石の可能性とその種類を調べる
エコー検査 超音波を使って腎臓内の結石の有無を調べる
X線検査 単純レントゲン写真により結石の場所を特定する
CT検査 結石のある場所や成分を調べる
レントゲン写真に写らない所
(骨に隠れた所)も検査する事ができる
MEDICAL TREATMENT&MEDICINE 治療と薬
尿路結石の治療法
内科的治療
多量の水を飲んで結石の自然排泄を促す
薬物療法
鎮痛剤・鎮痙剤 結石が詰まり痛みがある場合に服用する
クエン酸製剤 カルシウム結石の予防の為に服用する
外科的治療
体外衝撃波結石砕術(ESWL) 体外から衝撃波を照射して結石を砕く
経尿道的尿管砕石術(TUL) 尿道から内視鏡を入れ 結石を見ながら
超音波やレーザーで結石を砕く
FRONTIER 最先端技術
データめざましい進歩をとげる現代医学。泌尿器の分野で、体外衝撃波結石破砕術を更に進化させたものが登場したのです。「高密度焦点式超音波治療HIFU(ハイフ)です。これは、現在増え続けている前立腺癌の治療法として最も注目されているのです。前立腺は男性特有の臓器です。この臓器に癌が発生した場合には、以前は切開手術や放射線を使った治療しかありませんでした。データ今回開発された治療法では、肛門にプローブと呼ばれる器具と挿入しコンピュータ制御により治療を行います。プローブから出た超音波は、癌のある部分に焦点を絞って、照射することで、そこだけを60〜90度の高温にします。これにより、手前にある直腸を傷つけることなく前立腺の癌の部データ分のみを死滅させることができるのです。治療前、癌のために腫れていた前立腺ですが、治療すると、このように癌は白くやけています。白くやけていたがんが消滅するのです。治療時間はたったの3時間。入院期間も3日間ですむので、患者さんにも負担の軽い注目の治療法なのです。
SELF MEDICATION 自己管理
激痛を伴う尿路結石。もともとこの病気は男性に多いものでした。しかし!現在、データこの尿路結石に苦しむ女性が急増しているというのです。その背景にあるのが女性の社会進出。女性にも尿路結石を起こさせていたのは男性と同じ生活習慣だったのです。中でも食生活の変化が一番の原因肉中心の食生活は、動物性脂肪や動物性タンパク質のとりすぎにつながり、尿の中に、多量のシュウ酸をだしてしまうことになります。尿中にでたシュウ酸はカルシウムと結合し、結石を作りやすくしてしまうのです。
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【食事】
尿路結石を避けたいなら、肉中心の食生活は控えたほうがよさそうです。
【飲み物】
そして意外なところでは、コーヒー、紅茶、緑茶、ココア。これらの飲み物には、シュウ酸が多く含まれています。シュウ酸を多く摂りすぎると、尿の中に多量に排出されて、尿中のカルシウムと結合し結石を作ってしまうことになります。結石を作らないためにも、飲みすぎには注意するようにしましょう!
【カルシウム】
以前は摂りすぎると結石になると考えられていましたが、今ではむしろ積極的に摂ったほうがいいといわれています。カルシウムを多く摂ると、腸の中でシュウ酸と結合し、便として排泄されますが、シュウ酸の量に比べてカルシウムが少ないとシュウ酸が残り、残ったシュウ酸が尿の中へ移動して尿の中でカルシウムと結合して結石を作ってしまうからです。
【食べ方】
絶対にやめたほうがいいこと。それは、短時間に大量に食べるいわゆる「ドカ食い」です。ドカ食いすると、体内でインシュリンというホルモンが分泌されます。このインシュリンにはカルシウムの吸収を減らす働きがあり、尿の中に多量のカルシウムが残ってしまい、結石を作ってしまう要因となるのです。
【食後】
また食事をしてすぐに寝てしまうのもよくありません。食べたものの成分が尿に排出され、さらに睡眠中は水分が補給されないため、尿の濃度が高くなって、ますます結石ができやすくなります。さらに濃度の高い尿は尿管の粘膜をむくませて石をひっかかりやすくするということにもつながります。
【アルコール】
飲みすぎも、尿路結石にはよくありません。アルコールには、シュウ酸やリン酸、糖分が含まれています。シュウ酸はもちろん、糖分は尿中へのカルシウムの排出を増加させる働きがあり、結石を作りやすくします。
【予防食】
最後にカルシウム結石の予防に効果があるものをご紹介しましょう。それはレモンやミカン、グレープフルーツなどの柑橘類の果物。柑橘類に含まれているクエン酸には尿中のカルシウム濃度を抑制してくれる働きがあるのです。

柑橘類をたくさんとって、肉中心の食生活をあらため、
シュウ酸の多い食品はとり過ぎないように気をつけて
尿路結石の激痛と縁のない生活を送ることのできるよう
心がけましょう

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