私たちが生きるために、
睡眠はなくてはならないもの・・・。しかし、その睡眠を妨げてしまう、困った病気があるのです。それが、最近、社会問題にまでなっている、睡眠時無呼吸症候群です。現在、患者数は、
推定200万人とも言われています。この、睡眠時無呼吸症候群の特徴は、呼吸が止まることです。この病気は、昼間の生活に悪影響を及ぼします。充分に睡眠をとっているつもりでも、疲れが取れなかったり、強烈な眠気を感じます。ひどい場合は、高血圧、さらには心筋梗塞や脳卒中などの合併症を引き起こす危険を持つ、怖い病気なのです。睡眠時無呼吸症候群といびきは、深い関係にあります。わたしたちが呼吸をすると、鼻と口から入った空気は気道を通って肺へと運ばれていきます。眠っている時も同じ繰り返しですが、いびきは、気道の入り口である、上気道に障害が起こり、空気の通り道が極端に狭くなることによって起こります。空気の通り道は、喉のまわりの筋肉の緊張によって、確保されています。しかし、眠りに入ると筋肉の緊張は緩んでしまうのです。筋肉が緩んだ状態で仰向けに寝ると、口と鼻の間でフタのような役割をする軟口蓋や舌の付け根である舌根が、重力の影響で沈み込みます。こうして、気道の入り口が狭くなりいびきを起こすのです。健康な人は、多少のいびきであれば、問題はありません。ところが、ひどいいびきは要注意。この空気の通り道をさらに狭くする
原因は、まずは肥満。脂肪によって、空気の通り道が、圧迫されて狭くなってしまうのです。そして、鼻炎など、鼻に病気がある場合も空気の通り道は狭くなります。炎症によって、鼻の粘膜に腫れが起き、空気の通り道も狭くなるからです。この炎症が口蓋扁桃や咽頭扁桃に広がってしまうと、ますます空気の通り道が狭くなる場合もあります。鼻による呼吸が不十分だと、自然と口呼吸になります。実は口を閉じているときに比べて、開いているときの方が、空気の通り道は狭いのです。こうして、空気の通り道が極端に狭くなり、呼吸の停止が起こる。睡眠時無呼吸症候群の診断基準とは、7時間の睡眠中に、10秒以上続く無呼吸が、30回以上繰り返される。もしくは1時間に5回以上の無呼吸がある場合です気道が詰まるために起こる
睡眠時無呼吸症候群を閉塞型無呼吸といいます。呼吸が妨げられることによって、血液中の酸素が低下し、二酸化炭素が増加します。すると、血管内のセンサーが働き、延髄の呼吸中枢に刺激を送り、
脳が覚醒するのです。呼吸中枢は、呼吸を促す筋肉の運動を活発にする働きがあります。そして気道が詰まった時、呼吸運動が打ち勝つと、再び大きな呼吸が始まるのです。呼吸が止まったあと、ものすごい音で再びいびきが始まるのはこのためです。睡眠時無呼吸症候群とは、
呼吸の停止、脳の覚醒、そして呼吸の再開を繰り返すことです。 呼吸が止まると、再び呼吸が始まるたびに、無意識のうちに2,3秒目覚めてしまいます。ひどい場合は、一晩で300〜500回も睡眠が分断され
ているため、本来、心と身体を休めるために必要な深い眠りではなくなってしまうのです。充分な睡眠を取っていないため、疲れがほとんど取れず、日中に強烈な眠気を感じます。 ひどいときは、突然、意識を失う程の眠気に襲われることもあります。さらに睡眠時無呼吸症候群がひどくなると、恐ろしい合併症を引き起こしてしまうのです。最も起こしやすいのが高血圧です。
呼吸が妨げられることによって、血液中の酸素が減ると、交感神経が働きます。すると、心臓の動きが活発になり、一種の興奮状態となり、血圧が上昇してし
まうのです。この他、心臓の機能低下による、狭心症や心筋梗塞も起こしがちです。これは無理な呼吸運動が繰り返されることにより、心臓が圧迫され、正常に動かなくなるからです。また、脳へ送られる酸素が不足すると、脳卒中になる恐れもあります。この睡眠時無呼吸症候群は、気道が狭くなること以外でも起こすことがあります。それが、呼吸中枢に原因のある中枢型無呼吸です。原因は明らかではありませんが、呼吸中枢から呼吸筋に対して、「呼吸をしなさい」、という刺激が届かないことによって、呼吸運動そのものが停止してしまうのです。中枢型無呼吸の多くの場合は、無呼吸が周期的に起こります。特徴としては、心不全や脳梗塞の兆候がある人に多くみられます。閉塞型無呼吸と違って、呼吸の再開時に、大きないびきを伴いません。そのため一見すると、安らかに眠っているように見えるので、発見が遅れがちとなります。この他にも、一回の睡眠中に、中枢型無呼吸から閉塞型無呼吸に移行するものもあります。これを混合型無呼吸と呼びます。大きないびきをかく人は、睡眠時無呼吸症候群の疑いがあるといえるでしょう。
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