今週のドクターは、 虎ノ門病院皮膚科 大原 國章先生
【略歴】
東京大学医学部卒業 医学部附属病院皮膚科 助手
【ドクターの一言】 患者さんの病状は一人一人違うので、それに応じた最適の治療・対応を心掛けています。医療に100%絶対はありません。また医学教育・良い医師を育てるには患者さんの協力が必要だと思います。
いよいよ夏本番。町を歩く人もノースリーブに短パン、ミニスカートと、お肌を出して涼しそう!でも紫外線が貴方のお肌を狙っています!紫外線が強いと皆さんシワやシミを気にしますよね。でも、忘れてはいけません。紫外線は恐ろしい皮膚がんの原因にもなるのです!皮膚がんは欧米人だけの病気、そう思っている貴方!それは大きな勘違い。日本人にも皮膚がんの患者は増えているのです。前がんと呼ばれるがんの前兆から進行癌へは、40〜50年かかると言われてきましたが、最近では10〜20年で発症する確率が高くなっています。しかも、皮膚がんの原因は紫外線だけではありませんでした。なんと普段の生活の中にも発症の原因が隠されていたのです。皮膚がんは皮膚に出来る悪性の腫瘍。皮膚がんの原因は主に紫外線です。私達の浴びている紫外線には、UVAとUVBの2種類があるのは皆さんもご存知の通り。皮膚は外側から表皮・真皮・皮下組織の3つの層から出来ています。UVAは皮膚の奥・真皮まで届き、吸収されて活性酸素を作り出します。この活性酸素はコラーゲンやエラスチンといった繊維の構造を変化させたり、壊したりしてシワの原因となります。また、遺伝子DNAにも傷をつけてしまいます。一方、UVBは表皮の浅い所にしか入り込みませんが、炎症を起こしてシミを作ります。更に遺伝子DNAに直接吸収されて沢山の傷をつけます。この遺伝子DNAについた傷が実は皮膚がんの元になるのです。とはいえ、皮膚のDNAに傷がついても、すぐがんになる訳ではありません。修復する遺伝子が酵素を作り出し、傷を元どうりにするからです。しかし、日焼けを繰り返すなど、遺伝子を度々傷つけてしまうと、修復が間に合わなくなり、細胞が突然変異を起こして異常増殖を始めます。これが皮膚がんです。皮膚がんには、勿論色々な種類があります。その中でも、日本での発症例が多いのは、基底細胞がん・有棘細胞がん・メラノーマの3種類です。日本で最も多い皮膚がんが基底細胞がん。目の下から唇にかけて発症する事が多く、中央にある黒色の病変の周りを黒真珠を敷き詰めたようなしこりで囲むのが特徴です。ご覧のように中心部分が潰瘍状態になり、出血する場合もあります。但し痒みや痛みはほとんどありません。急激に大きくなったりする事はなく、転移する事もごく稀です。男女共に40歳以上の患者さんが増えており、高齢になる程、発症しやすいのも特徴です。基底細胞癌がんについで多いのが有棘細胞がん。有棘細胞がんは紫外線を長年に渡って浴びた結果起こるため、日光のよく当たる頬や耳、下唇、手の甲などによく発症します。皮膚の表面がザラザラしたり、潰瘍になる傾向があります。痛み・痒みはありませんが、リンパ節から内臓にまで転移する事もあります。紫外線を長年浴びる事が原因なので、患者さんの半数以上は70歳以上です。また、有棘細胞がんは紫外線の他にもやけどの傷跡が原因で起こることもあります。ひきつれになっているやけどの跡が盛り上がったり、潰瘍になったりしたら要注意です。皮膚がんの中で最も悪質で、転移しやすいのがメラノーマ。悪性黒色腫とも呼ばれています。最も発症しやすいのは足の裏や大腿部。爪にも発症しますが、その場合は、爪に縦に出来た黒い線が次第に広がって行きます。また皮膚の一部も次第に黒っぽく変色、盛り上がって行きます。メラノーマの原因は明らかになっていませんが、メラノーマは30代から発症が増える病気です。最近増えている皮膚がんもあります。それがパジェット病。アポクリン汗腺にできるがんで、外陰部に多く、わきの下にも発症します。赤く腫れるため、湿疹やただれと間違えやすく、また恥ずかしさから受診をしない人が多いのですが、転移しやすいため、注意が必要です。男女共に、お年寄りに多い病気です。皮膚の色が濃くなったり、シミが以前より広がってきた等、ちょっとした変化を見逃さないようにしましょう。
まず効果的なのが日傘。これだけで90〜95%もの直射日光を遮ってくれます。でもちょっと待ってください。 実は、日傘の差し方によっては、折角の効果も半減してしまうのです。もし、貴方が日傘と顔の間を30センチ以上離していたら、横からの紫外線や反射光が届いてしまい、かんじんの紫外線カット率はなんと40%も減ってしまいます。日傘は高く上げないようにしましょう。日傘の色でも効果は変わってきます。白と黒では紫外線カット率が30%も違うというデータがあります!日傘は黒いものを選んで下さい! 帽子も効果的です。つばの広さによって効果は変わってきます。つばが7センチ以上あると、65%もの紫外線をカットしてくれます。帽子はつばの広いものを選んで被りましょう。 ノースリーブや短パンなどによる肌の露出をなるべく避けるのも大切。出来れば夏でも長袖を着用するのが良いでしょう。洋服の素材では、ポリエステルが最も紫外線を通しにくくお勧めです。皮膚癌の大敵は紫外線だけではありません。 古傷が痛んだり、ホクロが大きくなってきた等、皮膚の変化を見逃さない日頃の注意も大切です。