梅雨から夏にかけてムシムシ、ジトジトが続きます。こんな季節がだーいすき!と大喜びするのが・・・カビ!!その種類は10万以上と言われています。そのうち、人間の体に住み着くカビはおよそ200種類。皮膚に住み着く最も代表的なカビは、おなじみ、水虫。犯人は白癬菌。では、その白癬菌が増える様子をみてみましょう。白癬菌は、太さは、1ミリの200分の1。ケラチンというたんぱく質を栄養にして増殖するのが特徴です。実は、私たちの皮膚で、ケラチンがたくさんある場所は角質層。表皮の一番外側で、熱や寒さ、細菌などの外敵から身を守るバリヤの役割を果たしているところです。この大切な角質層、常に作り続けられています。この新しい皮膚の細胞は基底層と呼ばれる皮膚の深い場所で作られます。それがだんだん表面におしやられていく。これが新陳代謝。新しい細胞があがってくると、古くなった細胞はやがて死んでしまいますが・・死んだ細胞が折り重なっているのが角質層。では、白癬菌はどうやって角質層に住み着くのでしょうか?まずは、塵や埃に紛れていた白癬菌が皮膚の表面にくっつく。これがスタートです。くっついた白癬菌は、24〜72時間かけて、大好物のケラチンを栄養素としながら、角質層の奥に、根を張るように増殖していくのです。外にいる白癬菌のほとんどはすでに水虫の人が落としたもの。水虫は人から人へと広がっていきます。水虫がかゆいのは、白癬菌はケラチンを栄養にするとき、ケラチナーゼという酵素を出します。これでケラチンを分解します。このとき、リンパ球がたくさん集まり、炎症に似た状態ができます。これがかゆみの始まり。集まったリンパ球は、サイトカインという物質を出して、白癬菌を攻撃!!戦い疲れた白血球は死んでしまい、そのとき、たんぱく質を溶かす酵素を出します。水虫で皮膚がフニャフニャになったり、水疱ができたりするのはこのせいです。サイトカインには、新陳代謝を活発にして角質ごと白癬菌を追い出そうとする働きもあります。角質層は、常に一定の厚さに保たれるように古いものから垢になってはがれ落ちます。水虫になると皮がボロボロむけるのはこのためです。かゆみは、白癬菌そのものや、白癬菌が出す酵素、ケラチナーゼに対する一種のアレルギー反応です。だから、水虫といってもかゆくない人もたくさんいる。実際にかゆみが現れるのは、全体の3割程度といわれています。水虫になった、皮膚にあらわれる症状は、趾間型足の指の間の皮膚が白くふやけた状態になるものです。じくじくしたり、皮がむけたりします。続いて、小水疱型足の裏や指の間に赤いポツポツが現れ、小さな水泡ができます。そして、角質増殖型。小水疱型の水虫を放っておくと、角質が厚くなり、足の裏がかさかさして厚く硬くなり、ボロボロと皮がむけてきます。むけた皮には生きた白癬菌がウヨウヨ。感染の原因に!!さらに皮膚以外にもケラチンがたくさんある場所が存在します!!それは爪。水虫が長く続くと、菌が爪の中に侵入。爪は白く濁って厚くなり、ぼろぼろの状態になってしまいます。床に落ちている白癬菌から感染することが多いため本来なら全身にあらわれる症状ですが実際は、足が全体の85%、手(手白癬)が2%、そして、残り13%は体にでるタムシ、頭にでるシラクモなどとなっています。実は最近、子供たちの間に新しい水虫が増えているのです!これは、もともとヨーロッパやアメリカにいたものなのですが、およそ2年前から柔道を習っている子供たちの間で見つかり始めました。新しい水虫。それはこのトンズランス。元々、髪のケラチンを好む性質のカビで、感染すると髪が抜けやすくなってしまいます。また、皮膚が擦れたところから入り込んで、水虫の症状を起こすこともあるのです!!さらに、ペットから人間にうつる水虫も…!!猫や犬の体毛にいるのが、カーニスと呼ばれる白癬菌の一種です。なぜか、猫や犬の毛を好んで住み着きます。猫や犬に症状は出ないのですが、人に感染すると強い症状が現れてしまいます。脱毛や、頭皮に腫瘍ができることさえあるのです!皮膚をおそうカビは白癬菌だけではありません。たとえばデンプウ菌。これは人間の体のなかに常にいる常在菌の中のカビの一種です。常在菌は通常、細菌などから私達を守ってくれています。しかし、デンプウ菌はふだんは毛穴の中に住んでいて普段は何もしていません。デンプウ菌は、汗と一緒に出る皮脂が大好物!!毛穴に皮脂がたまると、これを栄養にして増えるのです。増えたデンプウ菌は胸や背中に、カサカサした茶色、もしくは白っぽい斑点をたくさん作ります。夏場、汗っかきの人によくみられる症状です。皮膚につくカビには、表皮の下、真皮に住み着くものもいます。こういうカビは、多くの場合、皮膚の傷口から体内に侵入することが多いのです。真皮細胞の一部に成りすまして、増殖する曲者。そのうち周りの細胞を壊し始めるのです。その代表がこの黒色真菌。増えてくると腫瘍や結節をつくります。痛みやかゆみもないままに、どんどんカビに侵食される皮膚。しかし、悪化させるとこのような恐ろしいことになってしまいます!表面は乾燥しているので、慢性化しやすいのです。痛みやかゆみもないままに、どんどん黒色真菌に侵食される皮膚。表面は乾燥しているので、慢性化しやすいのです。黒色真菌は、血管やリンパ管を通って全身に回る可能性があります!!脳に入ると脳腫瘍ができ、命の危険にさらされることも!!こんなこわーい黒色真菌と同じように真皮に住み着くのが…、スポロトリコーシス!土や植物の中によくいる、珍しくもないカビです。これも人についたとき、自覚症状はほとんどありませんが・・・。小さな傷が大きなかさぶたになったり…離れたところが腫れてきたりします。これはリンパ管を使ってカビが移動するためです。この男性は、指先をバラの棘でちょっと傷つけたことがきっかけで、スポロトリコーシスが入り込み、腕のリンパ節に沿って結節ができてしまいました!!水虫を始めとする皮膚につくカビ。あなどっているととんでもないことになることはおわかりいただけたでしょうか?
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