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2003年5月4日(日) テーマは『ペット感染症』

今週のドクター
今週のドクターは、
東京医科医科大学 国際環境寄生虫病院教室
藤田 紘一郎先生



【略歴】

’65年 東京医科歯科大学医学部卒業。
’70年

東京大学大学院医学系研究科修了
テキサス大学で研究後、金沢医科大学、
長崎大学医学部教授を経て
現在、東京医科歯科大学大学院教授。

【ドクターの一言】
ペット動物は単なるペットとしてではなく、コンパニオン・アニマルとして日本人の生活の中で益々重要度を増すでしょう。動物達と楽しい生活を送る為にもペット感染症について知っておきましょう。



【著書】
「笑うカイチュウ」 講談社
「空飛ぶ寄生虫」 講談社
「イヌからネコから伝染るんです」 講談社
「癒す水・蝕む水」 NHK出版
「体にいい寄生虫」 ワニブック
「原始人健康学」 新潮選書
「共生の意味論」 講談社ブルーバックス

など他 多数

 


CONDITION OF ILLNESS 病気と症状のメカニズム

データペットを家族の一員のように可愛がっている人は少なくありません。また、最近は様々な動物をペットとして飼う人も増えています。ペットと過剰に接触する機会が増え、親しみを増す事で、ペットから感染するペット感染症が増えているんです。ペットは可愛いだけでなく、近頃、話題のアニマルセラピーのように、我々にとって心の癒しにもなる存在。でも可愛いからといって、無防備にキスをしたり、口移しで餌をあげたり、一緒に寝るのは感染症を招く元!ペット感染症とは、ペットと人間の両方が同じ菌に感染しますが、人間だけに発症する病気の事。動物の口や毛の中に棲みついている細菌やウイルス、寄生虫などの微生物がその原因なのです。ペット感染症は世界的な問題とされ、現在、WHO・世界保健機関が危険を訴えているペット感染症は、122〜166種類もあります。そのうち、日本で問題となっているのは50種類程度です。ペット感染症には、大きく分けて2種類ありますが、身近な物をご紹介しましょう。まず最初は「日和見感染」が原因のもの。健康な人は罹りにくいのですが、免疫力が低下した時やお年寄り、持病のある人の場合、感染しやすいタイプの病です。最も多いのは猫や犬から移る「パスツレラ症」です。データ猫や犬の口の中に潜んでいる常在菌、パスツレラ菌が原因。例えば、パスツレラ菌は、猫の口の中にはほぼ100%、猫の爪には20〜25%、犬の口の中にも50%以上の菌がいるため、最も感染しやすいのです。特に、猫や犬に噛まれたりすると、その傷口からパスツレラ菌が侵入し、人に感染します。但し、健康で体に抵抗力のある人の場合は、傷口が赤く腫れる程度で、数日もたてば自然に治ってしまいます。しかし、体力が落ちている時や、糖尿病などで抵抗力が弱っていると、手足などがグローブのように腫れる、「パスツレラ症」を引き起こします。また、猫や犬に顔を嘗められた時、口や鼻から菌を吸い込んでしまうと、呼吸困難や気管支炎を引き起こす場合もあります。それが、「副鼻腔炎」。炎症で、鼻詰まりが酷くなります。もう一つ、人の免疫力が低下した時に感染しやすいデータ病気で最近増えているのが「Q熱」です。「コクシエラ・バーネッティ」という細菌が元で、感染源は主に猫の尿や糞。猫の尿や糞に混じって排泄された「コクシエラ・バーネッティ」を、人が埃などと一緒に吸い込んでしまう事で感染が起きます。特に、妊娠中の猫は菌が増えるのて要注意!「Q熱」の症状。それは慢性急性に別れます。急性Q熱の場合は2〜4週間の潜伏期間の後、39度前後の高熱を出すのが特徴。また、全身の倦怠感や呼吸器疾患なども起こります。一方、「慢性Q熱」の特徴は長期にわたる疲労感。最近は、長い間治療をしても治らない「登校拒否」や「鬱病」の患者さんを改めて調べてみたら、実は「慢性Q熱」だった、という報告もある程です。ペット感染症の2つ目は免疫力と関係なく誰でも感染するタイプ。代表的なのは「犬・猫回虫症」です。以前、公園の砂場が野良犬や野良猫のトイレにされ、汚染されている事が問題になりましたが、覚えていますか?データ実はこれが、「犬・猫回虫症」だったのです。原因は犬や猫に寄生している回虫。その感染ルートは主に2つあります。1つ目は、砂場などで犬や猫の回虫の卵を手や指につけ、それを知らずに飲み込んでしまった時。2つ目は、犬や猫を撫でている時、毛の中にいる卵が手や指に付き、そこから口に入った場合。もっとも、大半の幼虫は、肝臓で人の免疫細胞に捕まり死んでしまいます。しかし、幼虫が元気だと肝臓で悪さをしたり、肺に移動します肝臓や肺に幼虫が入ると、風邪をひいたような症状が出て、次第に肝臓や脾臓が腫れてくる、という症状が現れます。さらに、幼虫が肝臓や肺を通り抜けて、目の網膜まで達することさえがあります。こうなると、視力の低下や網膜の炎症といった症状が現れます。ペット感染症の3つ目は、放置すると命に拘わるタイプ。その代表がオウム病です。原因はオウム病クラミジア。オウデータムをはじめ、セキセイインコ、ハトなど、ほとんどの鳥類が、この菌を保有しています。この菌は、鳥の糞に混入しています。そのため、鳥籠の掃除などの際、舞い上がった糞を人が吸い込んで感染するのです。感染すると1〜2週間の潜伏期間があり、その後、急激に症状が出ます。まず咳・頭痛があり、38度以上の高熱が出るなど、インフルエンザとよく似た症状を引き起こします。その後、肺炎を起こしますが、通常の肺炎と区別出来ないため、治療が遅れ、死に至る事もあるのです。ペットを飼っていて何だかダルい、微熱が続く。そんな場合には速めに診察を受けましょう。

ペット感染症の症状
  病名 感染源 症状
(1) 日和見感染
(免疫力が低下していると感染する)
パスツレラ症 イヌ・ネコの
口や爪
皮膚化膿症・
副鼻腔炎など
Q熱 ネコの尿や
フン
39度前後の高熱・疲労感など
(2) 免疫力と無関係に感染する病気 イヌ・ネコ
回虫症
イヌ・ネコの
フン
肝臓が腫れる・
視力低下など
(3) 放っておくと死に至る病気 オウム病 鳥のフン せき・高熱
肺炎など
EXAMINATION 検査
ペット感染症の検査
問診 ペットを飼っているか
身近に動物がいるか
過剰にペットと接触していないか
などを調べる
血液検査 原因菌を特定する
症状によって レントゲン検査
MRI、CT
超音波検査 などを行う
MEDICAL TREATMENT&MEDICINE 治療と薬
パスツレラ症 Q熱
オウム病
イヌ・ネコ回虫症
ペニシリン系
セフェム系の
抗生物質
テトラサイクリン系
マクロライド系の
抗生物質
ペンズイミダゾール系駆虫薬
ステロイド薬
FRONTIER 最先端技術
データ愛くるしいキタキツネが振り撒く「エキノコックス症」という病気があるのをご存知でしょうか?実は、これも「ペット感染症」の1つなのです。「エキノコックス」と呼ばれる寄生虫が、狐ばかりでなく犬にも寄生。その犬や狐の乾いた糞が空気中に飛び散って広がり、それを人間が吸い込んで感染するのです。「エキノコックス」のが人の体内に入ってから、5〜15年経つと、孵化した寄生虫の幼虫が大きく育ち、初めて症状が現れます。まず肝臓や肺・脳に腫瘍を形成。この腫瘍が年々大きくなり、周囲を圧迫するため内蔵が壊死を起こし、命を落とす事もあるのです。さらに、寄生虫の幼虫は、血液の流れにのって肺や脳に達し、そこで大きくなります。あたかも、がんのように臓器を侵し、圧迫して人を死に至らしめるのです。何の症状もないまま、病気が進行。これまで「エキノコックス症」の治療は、病巣を取り除く手術しかありませんでした。しかし、重症患者や高齢者には手術が出来ず、そのための治療が求められてきました。そして近年ようやく、「アルベンダゾール」という薬が開発。日本でもWHOの指定をうけ、北海道大学で臨床研究が行われています。「アルベンダゾール」には、データ血管の中で「エキノコックス」の発育を抑制。除去する効果があります。北海道大学の研究でも、28日間の投与で血管中のエキノコックスがほぼ全滅。また、半分の患者さんで病巣の縮小も認められました。副作用もなく、現在は保険も適用される「アルベンダゾール」には、「エキノコックス」治療の面で更に期待が高まっています。
SELF MEDICATION 自己管理
愛する可愛いペットと毎日を楽しく暮らしたい。だからこそ日頃の生活に気をつけ、ペット感染症を予防したいものです。そう、それは決して難しい事ではありません。
データデータ
データ
データ
データ



データデータ

【1 接し方】
犬猫共に同じ箸で食べ物を与えない事。ペットの口には{パスツネラ菌}がいるものとシッカリ理解しましょう。そして、自分の箸で食事を与えたり、キスはしないように心掛けましょう。
【2 食器の洗い方】
食器を洗うスポンジにも注意が必要です。同じスポンジで洗っていませんか?ペットの食器専用のスポンジを必ず作りましょう。出来れば人間の食器は台所、ペットの食器は洗面所と分けて洗えれば良いですね。
【3 トイレ】
また、ペットの尿や糞などの排泄物は放っておかず、すぐに処理すること。この時、手袋をお忘れなく。これだけで、より一層効果が高まります。
【4 手洗い】
良く手を洗う」習慣も大切。回虫や虫の卵は、界面活性剤で落ちやすくなります。外出から帰った時、ペットと触れ合った後、食事の前は、石鹸でよく手を洗って下さい。更に、ペットの生活環境を整え、ペットと一緒に感染症を予防する事も大切。
【5 爪切り】
貴方の家で飼っている猫は爪が伸びていませんか?もし、引っ掛かれても傷が深くならないよう、爪を短くカットしてあげるケアも必要です。
【6 回虫やノミの駆除】
同様に、犬や猫についた回虫やノミを除去するためにも、ブラッシングやシャンプーはこまめにしましょう。
【7 気配り】
勿論、貴方自身の気配りも必要です。風邪気味の時疲れた時、ペットとの睦まじい触れ合いは避ける。これだけで感染をかなり防げるのです。

ウチの子は特別、なんて思わずに、
本来、外で暮らす動物を室内で飼う。
その事をわきまえて「ペット感染症」を予防しましょう。

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