今週のドクターは、 東京慈恵会医科大学 眼科学講座 佐野 雄太先生
【略歴】
米国エモリー大学眼科学教室に留学 日本眼科学会会員、米国眼科アカデミー会員 専門分野:角膜、移植医療、レーザー近視治療、白内障手術
【ドクターの一言】 常に患者さんの立場にたった医療を実践し続けていきたいと思っています。その上で、最新かつ最善の治療を追求していきたいと心がけています。 【著書】
「眼科オピニオン 屈折矯正手術
いつもと同じように大好きな読書を楽しんでいたのに…。なんだかいつもより目が疲れる。目の奥・頭もズキズキしてきた…。それは眼精疲労というれっきとした病気。私達の脳にインプットされる情報。その8割は目から入ってくると言われています。 情報の大切な入口となる目ですが、ちょっとした負担が掛かっただけで疲れを感じてしまいます。眼精疲労というのはまぶたが重い、充血する、かすんで見える、ぼやけて見える、目がかゆい、様々な症状が現れます。また、恐ろしいことに目そのものの症状以外にも全身の症状にまで及ぶこともあるのです。原因のひとつは「近くのものを長時間見続けるときに必要な調節機能の低下」です。近くを見るための目の働き、これが近見反応。目の前に、人差し指を立て、だんだん目に近づけていってみてください。じっと人差し指を見るために眼球がだんだん内側によってきます。このとき眼球を内側に寄せる筋肉が働きます。それと同時に、どんどん近づいてくる人差し指にピントを合わせるために毛様体筋が縮んで、水晶体が厚くなります。さらに、人差し指をよりくっきりと見るために光の量を調節します。瞳孔を動かす筋肉が瞳孔を小さく絞って入ってくる光の量を変えるのです。眼球と、毛様体筋と、瞳孔の働きによって近くのものを見ることができます。近くのものを長い時間じっと見ていると、目は常に中央に寄っています。すると、眼球を内側に寄せる筋肉が終始緊張を強いられて疲れてきてしまいます。また、ピント調節を助ける毛様体筋も緊張状態が続いて筋肉疲労を起こします。さらに、文字をくっきりと見つづけなければいけないために、瞳孔を動かす筋肉も緊張しっぱなし!3つの筋肉がずっと緊張し続けているので、筋肉疲労が起こって目が疲れてくるのです。もう一つの原因は「屈折異常」という目の状態です。たとえば「リンゴ」をみたとき、リンゴから光が角膜を通して目の中に入り、水晶体を通って網膜の上にリンゴを映し出します。その情報が脳に送られて、私達は「リンゴ」を認識できるわけです。ピントが正しく合わない状態が「近視」「遠視」など、これが屈折異常と呼ばれるもの。屈折異常があると、目は何とかしてピントを合わせようと、けなげに調節しつづけます。ピンとの調節は水晶体と連動している毛様体筋の役目ですが、毛様体筋も必死で働くと…疲れる。近視や遠視、乱視の人はたいてい、メガネやコンタクトレンズで視力を矯正しています。これで、疲れ目もある程度解消!しかし!!なんと!視力にあったメガネをしている人はたった3%という衝撃の調査結果が!毛様体筋はピントを合わせようと働きつづけ、目の疲れがひどくなります。歳をとると誰にでも起こる「老眼」。これも眼精疲労を引き起こす原因。本来、ピントを調節する水晶体は自由自在に厚さを変えて、近くのものや遠くのものに、瞬時にピントを合わせることができますが、年齢とともに、その水晶体は硬くなり、「近くのもの」「遠くのもの」と、とっさにピントを変えることができなくなります。この調節力の低下は、40歳ぐらいから始まり、60歳ぐらいには調節力はほとんどなくなってしまうのです。目の周りで日々働いている小さな筋肉、この大切な筋肉の疲れが大きな目の疲れ、眼精疲労を引き起こしているのです!
「近くの物を長時間見続ける」ことで 調整機能が低下して眼精疲労が起こる
【1 目薬の差し方】 渡辺さん:『まつげに触れないように離してさします』 D: さすが!これは、正しいさし方です。容器の先がまつげに触れると、目薬の中に目やになどが逆流して、目薬が汚染されることがあるのです。容器の先がまぶたやまつげに触れないように、必ず2〜3cm離してさしましょう。 【2 目薬を差したあと】 渡辺さん:『さしたあとはまばたきをします』 D: 残念ながら、これは間違い。点眼したら、瞬きを避け、まぶたを2〜3分間閉じておくことが大切なんです。点眼後に軽く目頭をおさえるのも効果的です。軽く押さえることによって、涙の排水口が閉じられ、目に成分をとどめます。 【3 目薬の回数】 渡辺さん:『1日に何回もさします』 D: 1日に何度も目薬をさす、これはあまりよくないことです。薬の成分が目に残り、負担をかけることがあります。説明書に書いてる回数はきちんと守りましょう。また、寝る直前にさして、そのまま眠ってしまうことは避けましょう。眠ってしまうと目に潤いを与える成分が循環しないため。薬が長時間とどまることにんり、成分によっては刺激を生じてしまいます。 【4 目薬の保管】 渡辺さん:『さしたあとひんやりして気持ちがいいので冷蔵庫で保管しています』 D: なるほど、しかし、目薬は未開封の場合、室温で保存していれば大丈夫。「冷所保存」と明記されていなければ、冷蔵庫に入れる必要はありません。一度開封した目薬の場合は、キャップを固く閉めて、直射日光を避けて保管するのが基本です。ただし!救急箱の中で、開封した湿布薬と一緒に保管しないこと!これは大変危険です!容器ににおいがしみついて、目にしみることがあるのです。