今週のドクターは、 高山整形外科病院 伊藤 博志先生
【略歴】
医療法人社団高山整形外科病院院長となる
【ドクターの一言】 腰痛にはさまざまな原因がありますが、整形外科単科専門病院にふさわしい専門性を生かし、神経ブロック療法などを駆使してまず第一に“とにかく今の痛みをとる”ことを心がけています。
突然、激痛が腰を襲った!長年、腰に鈍い痛みがある!あなたや、あなたの周りには、必ずいるはずです。そもそも腰痛は、人間が進化し、二足歩行になってから生まれたもの。上半身の体重を支える腰骨に、大きな負担が掛かるようになったからです。こうして人間は、長い間腰痛に、悩まされ続けているのです。60〜80%が、一生のうち一度は腰痛を経験すると言われています。平成13年、全国で2700万人の人が、痛みに悩み、病院に通ったというデータもあるほど。人間の身体の中心には、脊椎という骨が通っています。その脊椎の下、5つの腰椎とその周辺から発せられる痛みを腰痛と言います。腰椎には、骨と骨の間にクッションの役割をしている椎間板があります。この椎間板の異常が原因で起こる痛みがあります。それは前回DNAでも取り上げ、皆さんもよく知っている、椎間板ヘルニアです。椎間板に負荷が掛かり続けることで、椎間板の組織が飛び出し、神経を圧迫して起こる腰痛です。また、骨同士を繋ぐ椎間関節の異常で起こる腰痛もあります。これは、椎間関節の変形や老化が原因で、神経が通っている脊柱管が狭くなってしまい、神経を圧迫して痛くなる、脊柱管狭窄症があります。どちらも原因は、神経。神経が圧迫されて、痛みが起こります。また、足に痛みやシビレがあるのが特徴です。もうひとつ、突然激痛に襲われ、安静にしていても痛みが治まらない腰痛があります。これは、脊椎に出来た腫瘍により起こるものです。脊椎に腫瘍が出来ると、脊椎が破壊されていき、起きて歩くことも困難になります。また、脊椎に細菌が感染して起こる痛みもあります。椎間板ヘルニアなど、神経の圧迫が原因で起こる痛みや、腫瘍や炎症などで起こる痛み以外にも、腰痛で悩んでいる方もいます。慢性の腰痛で、なかなか痛みが取れない。炊事やデスクワークなど、日常生活の中で、すぐ腰が痛くなり、仕事に集中できない、この様な方が意外と多いのです。腰痛の約80%を占めているのが腰痛症です。その原因は、病気以外にあるといわれています。これこそが皆さんを苦しめている、腰痛症なのです。この腰痛症には、今のところ2つの要因があると言われています。一つは、現代社会ならでわの病、ストレスや悩みなど、心理的要因から起きていると言われているのです。なんと腰痛にストレスが関係していたのです!?しかしメカニズムはまだ解明されていません。もう一つは、同じ姿勢を長く続けたり、悪い姿勢をとったりすることで起こる腰痛です。ではなぜ、姿勢が悪いと、腰に痛みが起こるのでしょうか?そもそも人間の背骨は、S字を描いています。正常な腰椎は、「前弯」といって、横から見ると前方に突き出た状態で並んでいます。姿勢が悪いと前弯がなくなり、まっすぐになっています。逆に猫背では、前弯が曲がりすぎて良くないのです。正常な前弯が保てなくなると、椎間関節やその周りの靭帯に負担がかかり、腰を動かすと痛みを感じるのです。また、同じ姿勢を長く続けると、起こる痛みは、筋肉の緊張が関係していると言われています。人間は立っていても、座っていても、上半身の重みは、常に腰椎に掛かっています。背筋や腹筋を中心とした、腰の周りの筋肉が、腰椎への負担を和らげる役割を果たしています。この、筋肉の緊張も、腰痛の原因です。同じ姿勢や悪い姿勢を長時間続けると、筋肉が緊張し、筋肉内の血流が、悪くなっていきます。血流が悪くなると筋肉は、酸素不足の状態になります。この状態が続くと、乳酸、ブラディキニン、プロスタグランディンなどの痛みを起こす物質が蓄積されます。これらの物質が、神経を刺激するため、痛みが起こるのです。この痛みはさらに筋肉を緊張させ、痛みを起こす物質の発生を増やす、と言う悪循環が生まれるのです。同じ姿勢、悪い姿勢が、腰痛症をもたらします。まさに、生活習慣病ともいえます。
【湿布】 シェフ:「立ち仕事が続いて腰が痛くなると冷たい湿布を貼るんです」 D:これは、正しい判断です。激しい運動、仕事による筋肉の炎症や打ち身、 捻挫の時は、患部を冷やす冷湿布で、炎症を取ることが大事なのです。これで、痛みが和らぎます。 一方、慢性の痛みがある時は、温湿布で血流を改善してあげることが、痛みを和らげるコツです。特にお風呂に入って楽になる痛みには、温湿布が効果的です。 【保存】 シェフ:「冷蔵庫に入れて保管してます」 D:残念ながらこれはあまり、良いことではありません。確かに冷湿布を冷蔵庫に保存しておくと、貼った時気持ちがいいものですが、薬品の成分が変化してしまうことがあるのです。冷湿布、温湿布両方とも、なるべく日の当たらない場所で保存してください。 【貼り方】 シェフ:「2〜3時間たってひんやり感が無くなったら代えるようにしてますね」 D:これは良い使い方です。湿布薬を長時間貼り続けると、皮膚が赤くなって、痒くなることがあります。湿布薬を使う時間は、皮膚の弱い人は、1日2,3時間。皮膚が強い人でも、半日が目安となります。 更に貼り方もワンポイント!湿布薬は痛みのあるところだけでなく、痛みのある筋肉全体を覆うようにすると効果が高まります。なるべく覆うように伸ばしながら、貼ってください。 【貼るタイミング】 シェフ:「お風呂からあがったときに貼ると気持ちいいですね」 D:これも良い方法ですね。風呂上りは身体の毛穴が開いているので、薬の成分が早く浸透します。だから一番効果的なのです。ただし、中には風呂上りに使うのを避けるよう指示している、湿布薬もありますので、注意をしてくださいね。