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2003年3月9日(日) テーマは『関節リウマチ』

今週のドクター今週のドクターは、
東京慈恵会医科大学
リウマチ・膠原病内科
山田 昭夫先生


【略歴】

’71年 東京大学医学部卒
米国留学、国立伊東温泉病院などを経験
’88年 医学博士
’99年 東京慈恵会医科大学 リウマチ・膠原病内科 教授

【ドクターの一言】
「書を読み、友と語る」−医師は病気を通して患者さんの人生にも関わって来ます。医学書のみでなく患者さんからも医学・人生を学びます。一緒に悩み、喜び、より良き人生を送りましょう。

【著書】
「慢性関節リウマチはここまで治る」 主婦と生活社 1999年
「慢性関節リウマチ」
(EBMに基づく臨床データブック)
中外医学者 2001年
「関節リウマチ」(内科学)
朝倉書店 2003年


CONDITION OF ILLNESS 病気と症状のメカニズム
データ朝起きたとき全身の関節が、こわばったようになり、特に、手を握ったり、開いたりという簡単な動作がしづらい。この「朝のこわばり」が、関節リウマチの最初の症状です。やがて症状が進むと、手足の指など、小さな関節に痛みや腫れが起こります。関節リウマチの痛みの特徴は、うずくような痛み。その痛み方は、人それぞれです。何もしなくても痛む。関節を押すと痛む。関節を動かすと痛む場合があります。関節リウマチになると、手の関節が太く腫れます。また腫れた部分は熱っぽくなり、指で押すとゴムのような弾力があります。関節は骨と骨のつなぎ目。骨の先端を覆っているのが、軟骨です。軟骨は指を動かす時、クッションの役割を果たします。関節は、「関節包」という袋に包まれています。そしてこの「関節包」の内側には、「滑膜」という厚さ1ミリにも満たない、薄い膜状の組織があります。「滑膜」では、関節をスムーズに動かすための、粘りのある「関節液」が作られています。指がスムーズに動くのは、この軟骨と関節液の働きによるものなのです。データ関節リウマチは、関節の一部である、滑膜の炎症により起こります。そして滑膜に炎症が起こると、滑膜の組織が関節の内側に増殖し始めます。やがて炎症を起こした滑膜は、元の厚さの何倍にも腫れ上がります。この炎症に伴い関節液もたくさん作られるようになり、関節内にたまっていきます。これが、“関節に水がたまる”といった状態です。つまり関節リウマチとは、滑膜の炎症により、関節液がたまった状態なのです。滑膜の炎症が悪化するにつれて、腫れや痛みが起こります。これが関節リウマチの症状。滑膜の炎症が続くと、痛みで指の曲げ伸ばしが難しくなり、箸が持てなくなったり、ビンの蓋が開けられなくなったりします。関節リウマチの症状は、何も指の関節だけに起こるものではありません。肩関節に症状が出ると、腕があがらなくなります。ひじ関節では、ひじの曲げ伸ばしが苦痛になります。データ足首やひざの関節に症状が出ると、歩くことすら困難になってしまいます。関節リウマチは骨を変形させてる病気でもあるのです。関節リウマチがひどくなると、増殖した滑膜の一部が、軟骨にくっついて、軟骨の組織を侵食し始めます。これは、滑膜が自分以外の組織を排除するように働くからです。こうして軟骨、更には骨まで壊されていくのです。結果、関節が動かなくなったり、骨が変形するのです。医学的に現在、その原因は、「免疫システムの異常」と考えられています。外敵を自分の細胞と区別し、攻撃命令を出すのが、「T-リンパ球」です。「免疫システムの異常」とは、この「T-リンパ球」が外敵と間違えて、自分の細胞に攻撃命令を出すことです。この理由は、まだ明らかではありません。この時、攻撃に使われる物質が、滑膜に炎症を起こすのです。滑膜に炎症が起こると、サイトカインという物質が大量に作られます。データこのサイトカインが、痛みや腫れといった滑膜の炎症をさらに悪化させるのです。まずサイトカインは、滑膜の細胞を増やします。同時に関節液がたくさん作られるようになり、痛みや腫れをもたらします。さらにサイトカインは、軟骨や骨に取り付いた滑膜の細胞に、軟骨や骨の組織を破壊させます。また、サイトカインは自分で自分を増やすというやっかいな性質を持っています。増えたサイトカインが、ますます症状を悪化させてしまうという悪循環が続くのです。関節リウマチは、関節以外にも症状が現れます。免疫システムの異常は、血管にも炎症を起こす場合があります。血管に炎症が起こると血液の流れが悪くなり、全身に酸素や栄養が充分に行き渡らなくなってしまうのです。そのために、微熱や倦怠感食欲の不振や体重が減ってしまうといったことや、貧血を起こしてしまうなど、全身症状が現れます。栄養や酸素が行き渡らないことから、皮膚や腸に潰瘍ができます。肺にも大きな影響を与え、呼吸が苦しくなる間質性肺炎を引き起こすことがあります。心臓では、心臓の収縮力を弱める心筋炎や心膜炎を起こします。眼球を包んでいる強膜に炎症が起こると、緑内障を引き起こす強膜炎になる場合があります。現在このような血管の炎症を起こす関節リウマチは、治療が大変難しく、「悪性関節リウマチ」として、難病に指定されています。
EXAMINATION 検査
リウマチの検査
視診・触診 腫れや痛みのある関節の数や状態を調べる
血液検査 赤沈 関節の炎症の程度を調べる
リウマチ因子 診断の参考にする
X線検査 関節や骨の変化を調べる
MEDICAL TREATMENT&MEDICINE 治療と薬
リウマチの治療


非ステロイド性
抗炎症薬
即効的に痛み抑えるが
炎症の進行にはほとんど作用しない
抗リウマチ薬 免疫に働きかけて炎症の進行を抑えるが
効き始めるまで1〜3ヶ月かかる
ステロイド薬 即効的に痛みと炎症を抑えるが
長く使うと副作用も強い
運動療法
人工関節置換術
FRONTIER 最先端技術
データ関節リウマチは関節に炎症が起きて、痛みが出る病気です。関節で炎症が起きると、細胞からサイトカインという物質が次々と放出され、炎症部分を攻撃し、ますます症状を悪化させます。そのサイトカインの一種に、TNF―αという物質があります。TNF―αが細胞表面の受容体という受け皿に結合すると、炎症を悪化させるシグナルが細胞の核に送られます。このメカニズムにより、関節の炎症が悪化するという事実が、最近の研究の成果で明らかになったのです。そこで近年開発されたのが、「エタネルセプト」。「エタネルセプト」とは、遺伝子操作によって作られた、データTNF―αのニセの受容体です。普通は細胞の表面の受容体は、TNF―αと結合します。しかし、ニセ受容体、エタネルセプトを投与すると、細胞の受容体と結合する前に、TNF―αを捕まえます。その結果、シグナルが伝わらず、炎症そのものを抑えられるというものです。アメリカのリウマチ患者、1270人に、この薬を1年使ってみたところ、関節の痛みや腫れが大幅に減っていました。これまで難しいとされていた関節リウマチの完治につながる可能性が生まれました!!
SELF MEDICATION 自己管理
関節に負担をかけない日常生活の工夫とはどんなことでしょうか?
データ
データ
データデータ


データ
データ

【ふたの開け閉め】
指の関節は小指の方向の力に弱い。変形しやすいのも小指の方向です。開ける時は、親指の方向に力が加わるから大丈夫なのですが、閉めるときは小指の方向に力が入ります。ですから開ける時も閉める時も親指の方向に力が加わるように、右手で開け左手で閉めましょう!
【包丁を握る】
指の動きが大きいほど、関節に負担がかかります。ですから、太いものを握る方が、関節の負担が少なく握りやすくなるので、包丁に限らず、「細いものは太くして握る」と関節の負担を減らせます。
【筋力体操】
関節に負担をかけない、筋力体操も教えて頂きました。これは腕と肩の筋肉に効果的な運動です。まず、ゆっくりと腕を前方に上げ、前ならえをした状態で、5〜10秒間保ちます。同じように横にも動かします。回数や動かす範囲など、痛みや疲れが出ない程度に行います。決して無理はしないで下さい。
【肩に効果的な運動】
小さく前ならえをした状態で、腕を外側にゆっくりと開き、3〜5秒キープします。
【太ももの筋肉に効果的な運動】
膝の関節をタオルなどで浮かせ、膝を伸ばした状態で、5秒キープします。最後にお尻の体操。毛布などで少し高くして、両膝を伸ばした状態で3〜5秒保ちます。皆さん試してみてください。

ちょっとした一工夫で、
関節に負担をかけない生活を送るよう心がけましょう。

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