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2003年3月2日(日) テーマは『中耳炎』

今週のドクター今週のドクターは、
慶應義塾大学医学部耳鼻咽喉科講師
井上 泰宏先生


【略歴】

’85年

慶應義塾大学医学部卒業

’94年 医学博士
’95年 慶應義塾大学医学部耳鼻咽喉科専任講師
’98年 米国及びイタリア留学。帰国後現在に到る

【ドクターの一言】
子供の頃からの難聴でも、手術で改善できるものがあります。また不快な耳だれを放置すると難聴が進行することもあります。ご不自由を感じる場合には是非一度専門医にご相談ください。

【著書】
「聴力障害 症候からみた小児の診断学 小児科診療」 井上泰宏・神崎 仁 診断と治療社 1997年
「難聴とプロスタグランジン」
井上泰宏・神崎 仁
現代医療 1995年


CONDITION OF ILLNESS 病気と症状のメカニズム
データ子供が風邪をひいたと思っていたら、夜中に急に「耳が痛い」といいだした!もしかたしたら、「中耳炎」かもしれません。子供に多い病気なんです。鼻の中にいる細菌が、鼻から耳につながっている管「耳管」を通り、中耳に入り込んで急激に炎症を起こすのが「急性中耳炎」。急性中耳炎が小さな子供に多いのは、データ子供の耳管が、大人に比べて太くて短く、鼻からの傾きもなだらかで鼻の中にいる細菌が中耳に侵入しやすくなっているからなんです。おまけに、小さな子供は中耳に侵入した細菌と戦う力である「免疫」の力が十分に備わっていないからなんです。正常な鼓膜というのは、透明です。しかし、急性中耳炎になると炎症を起こし、真っ赤に腫れてしまいます。さらに悪化すると鼓膜の後ろに膿がたまり、その圧力で鼓膜に穴があいて、中から膿、いわゆる「耳だれ」が出てきます。急性中耳炎の場合、耳の痛みは2〜3日耳だれは1週間程度続きます。急性中耳炎は痛みを伴いますが、痛みがでない中耳炎もあるのです。「急性中耳炎」が移行したデータ滲出性中耳炎」です。耳の痛みがなくなった後も実は中耳に細菌が残っていて炎症は治っていない事があります。すると炎症によって、中耳の粘膜から液体がにじみでます。これを滲出液といいます。中耳に滲出液がたまると、鼓膜の振動は悪くなり内耳に音が伝わりにくくなって聴力の低下が起こります。滲出性中耳炎は「名前を呼んでもなかなか返事をしない」「テレビの音が大きい」など、難聴の症状が現れてから気がつくことが多いです。子供の頃に細菌を完全に退治してないと、生き残った細菌が悪さをしないように細胞が包みこんで封じ込めようとします。この塊を「肉芽(にくげ)」と言います。肉芽の中にいる細菌が死ぬと炎症は治まりますが、もし、細菌が生き残ってしまうと、そこは細菌のすみかになってしまい炎症が続いたり、何度も繰り返す原因となるのです。大人の中耳炎「慢性中耳炎」は鼓膜の状態によって3つの種類に分けられます。耳だれを繰り返すのが「穿孔性中耳炎」。中耳に細菌が居座ると、炎症が続き急性中耳炎の繰り返しで開いた穴がなかなか塞がりません。その穴から細菌が侵入して、炎症をさらに悪化させて耳だれが出てきます。炎症が強いとたえず耳だれを繰り返します。難聴になってしまうのが「癒着性中耳炎」耳管にいる細菌が絶えず炎症を起こすと耳管の通気が悪くなります。すると、中耳の圧力が低くなり鼓膜がへこんで、外から音が入ってきてもきちんと振動しません。さらに、鼓膜が耳小骨に押さえつけられると、音の振動が内耳に伝わらず強い難聴が起こります。耳だれや難聴以外の合併症を発症するのがデータ真珠腫性中耳炎」原因ははっきり分かっていないのですが、5〜10年もかけて真珠のような白い塊「真珠腫」が耳の中にできる中耳炎です。真珠腫‥、名前は優雅ですが、なんと骨などを溶かす作用があるため、耳小骨や周辺の骨などを破壊してしまうのです。さらに進行すると音を感じる「蝸牛」まで破壊され、強い難聴となってしまいます。恐ろしい真珠腫性中耳炎は、難聴だけでなく様々な合併症まで引き起こします。平衡感覚を司る「三半規管」が破壊されると「めまい」顔面神経にまで炎症がおこると「顔面麻痺」その他「髄膜炎」「脳腫瘍」など命にかかわる病気まで引き起こすこともあります。中耳炎はあなどれない!ここで認識を新たにしてください!
EXAMINATION 検査
中耳炎の検査
問診 中耳炎の症状や原因となる病気を聞く
視診 鼓膜や内耳の状態を診る
細菌・真菌検査 中耳炎を引き起こしている細菌を調べる
ティンパノメトリー
検査
鼓膜の動き具合を測定して滲出性中耳炎を調べる
純音聴力検査 難聴の有無を調べる
CT検査 耳小骨など内耳の状態を調べる
MEDICAL TREATMENT&MEDICINE 治療と薬
中耳炎の治療
急性中耳炎 抗生物質(抗菌薬・解熱鎮痛薬)で
耳の痛みや発熱を抑える
滲出性中耳炎 耳管通気療法・鼓膜穿刺・チューブ
留置療法で滲出液を排出する
穿孔性中耳炎 手術で鼓膜の孔を塞ぐ
耳小骨を修復する
真珠腫性中耳炎 手術で真珠腫を取り除く
破壊された鼓膜や耳小骨を修復する
FRONTIER 最先端技術
データ英字で書かれた山のような論文。ある医師による30年間の研究の成果。その研究こそが、「粘膜ワクチンによる中耳炎の予防」今、世界中から注目を集めています。粘膜ワクチンとは一体何なのでしょう?様々な器官を覆う粘膜から分泌されるのが今回の主役IgA抗体。この分泌型IgA抗体が体内に侵入してくる病原菌を、ギリギリの所で撃退してくれているのです。しかし、長い間、中耳の粘膜は、IgA抗体を分泌しないと考えられていました。そのため、病原菌が侵入してくるとすぐに炎症を起こしてしまう。急性中耳炎は防ぎようのない病気だと思われていたのです。しかし、その説に異を唱える1人の医師がいました。彼こそがあの山のような論文を書き上げた、中耳炎予防の第一人者、茂木五郎先生なのです。データ茂木先生によって、わずかですが中耳にもIgA抗体が存在するいことが初めて分かったのです。すなわち、IgA抗体を分泌する場所があったのです。その場所に多くのIgA抗体を集めてやれば、病原菌と戦うことができる。茂木先生は、急性中耳炎を防ぐことができると考えたのです。2000年、朗報が舞い込んできます。大阪大学の清野教授が「粘膜のワクチン」の動物実験に成功したのです。「粘膜ワクチン」を使うと1カ所の粘膜に多くの分泌型IgA抗体を集めることができる。つまり目的の粘膜により多くのIgA抗体を分泌させることができるのです。マウス実験を行ったところ、ワクチンを投与しないマウスでは100%中耳炎が起こってしまうんですけど、ワクチンを投与したマウスでは相当量抑えられ、中耳炎が発症しないわけです。実験では粘膜ワクチン、つまり鼻からワクチンを投与することによって中耳炎が抑制されるということは充分証明できたわけです。「中耳炎を予防する」30年前に描いた目標に向かって、着実に前へ進む茂木先生。もし、この「粘膜ワクチン」が完成すれば、鼻からスプレーという非常に簡単な方法で中耳炎を防げるようになるのです。
SELF MEDICATION 自己管理
中耳炎を予防することはできるのでしょうか?ある物を使っている子供に中耳炎が多いとうのですが。それは「おしゃぶり」。フィンランドの400人の子供を調べたところ、おしゃぶりを使わなかった子供は、おしゃぶりをいつも使っていた子供よりも、データ中耳炎にかかる割合が33%も少なかったのです。実はおしゃぶりを強く吸い続けると、耳と鼻の圧力のバランスがくずれて、耳管の通気が悪くなって細菌や膿などが排泄されず中耳にたまって感染しやすくなるからです。中耳炎を予防するには「耳」と「鼻」。ここを結ぶ耳管の通気をよくすることが大切です。
データデータデータ
データデータ

【癖】
鼻をすする癖はありませんか?
鼻をすすると、その圧力で鼻の中にいた細菌が「耳管」を通って中耳に吸い込まれやすくなります。 鼻すすりを何回も繰り返すと、細菌が中耳にたまり中耳炎を引き起こす可能性が高くなるのです。鼻すすりをしないで、鼻をかむことが大切なんですね。鼻をかむことで、鼻の中にいる細菌は外に追い出され、中耳に細菌が入りにくくなります。風邪を引いている時はこまめに鼻をかみましょう。
しかし、鼻のかみかたによっては耳に悪影響を及ぼすことが あるので注意をして下さい。両方の鼻をつまんでしまうと、鼻の中の圧力が急激に高くなって鼓膜や中耳に圧力がかかります。すると、鼓膜の内側にある中耳に細菌が入りやすくなり中耳炎を引き起こしやすくなるのです。
【正しい鼻のかみ方】
片方の鼻だけを指でふさいで、もう片方は絶対にふさがず開放した状態でやさしくかみましょう。こうすると、鼻の中の圧力があまり上がらないので耳に悪影響は与えません。

小さな耳でもちからは偉大
耳を大切にする暮らし、こころがけましょう。

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