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2003年2月9日(日) テーマは『腎炎』

今週のドクター今週のドクターは、
順天堂大学医学部 腎臓内科
富野 康日己先生


【略歴】

’74年

順天堂大学医学部卒業

’79年 東海大学医学部内科助手
’84年 同講師
’88年 順天堂大学医学部腎臓内科学講座助教授
’94年 同教授

【ドクターの一言】
「人の痛みのわかる医師」と言われますが、患者さんの痛みや苦しみを完全に理解することは出来ません。しかし、大切な肉親をならどうするかを考えながら診療することは出来ると思っています


【著書】

「患者さんと家族のための腎臓病の正しい知識」

保険同人社 1994年
「患者さんと家族のための糖尿病性腎症の知識と暮らしの工夫」 医療ジャーナル社 1997年
「腎臓病ってなあに?もっとわるくならないために」 同成社 1991年
「成人病ってなあに?もっとわるくならないために(改訂第2版)」 同成社 1995年
IgA腎症、内科治療ガイド98 Medical Practice編集委員会(編)
文光堂 1998年


CONDITION OF ILLNESS 病気と症状のメカニズム
データ発病しても気づかないままになりがちで命の危険を招く腎炎。その理由は特有の症状が無く、患者本人が自覚しにくい事にあります。例えば足や顔のむくみ。全身のダルさ。血圧が高くなる。どれも腎炎特有の症状ではありません。でも、これらが腎臓からの重要な警報なんです。腎臓の炎症が起きるのは腎臓の糸球体という部分が多いんです。データ風邪をひいた時、扁桃を腫らす溶血性連鎖球菌や肺炎を招く肺炎双球菌などの細菌に感染し、糸球体に炎症が起きる病気、それが腎炎なのです。糸球体とは毛糸を丸めたような毛細血管の固まりのこと。僅か0.2ミリ程の小さな組織です。この糸球体は尿細管という管とつながっています。糸球体尿細管のワンセットを「ネフロン」と呼び、一つの腎臓の中には約百万個、左右で二百万個のネフロンがひしめいています。この糸球体には体内を巡ってきた血液のほとんどが運び込まれ、ここで水分や小さな蛋白質を濾過します。こうして、糸球体で濾過されたものは原尿と呼ばれ、やがて排泄される尿の元になります。データこれは実際に糸球体で血液が濾過されている様子。白い固まりが原尿です。さらに原尿は尿細管を通る際に、必要な成分と水分の大半は尿細管から再吸収されます。最後に残った液体は尿として、1日約1.5リットル程排泄されます。ところが糸球体に炎症が起きてしまうと血液を濾過する機能が十分に働かなくなります。そのため、水分の代謝がうまくいかず、顔や足にむくみが出る。体内を巡る血液の量が増えて血管に負担がかかるため、血圧が高くなる。濾過機能の異常で、血液中の赤血球や蛋白が尿に漏れて尿異常が起こる。といった症状が現れます。腎炎は大人から子供まで罹る病気です。大人にも見られますが、特に小学生から思春期の若者に多いのが急性腎炎。子供の頃、風邪で扁桃を腫らし、症状が回復した後、身体のだるさやむくみなどが突然出る。それが急性腎炎です。実は、扁桃炎の原因である溶血性連鎖球菌などの細菌が血液によって腎臓に運ばれます。そこで細菌を撃退する免疫グロブリンという蛋白と結合して糸球体の炎症を起こしてしまうのです。また、扁桃で細菌と免疫グロブリンが結合した免疫複合体が腎臓に運ばれ、糸データ球体に炎症が起きる事もあります。ご覧のように正常な糸球体には隙間が沢山ありますが、急性腎炎にかかると細胞が集まって糸球体が腫れて隙間がなくなります。この腫れが原因となって濾過がスムーズに行われなくなり、身体のむくみや血圧の上昇、血尿といった症状が急に現れる訳です。一方、大人に多いのが慢性腎炎。何らかの原因で起きた炎症がジワジワと進行、蛋白尿や血尿、むくみ、血圧の上昇といった症状が1年以上、持続的に現れる病気です。健康診断で偶然発見される場合が多いのですが、気付かずに放置してしまうと、腎臓が30%しか機能しない腎不全に陥る危険性も出てきます。データその慢性腎炎の中でも約5割を占めるのがIgA腎症。細菌やウイルス感染から身体を守る免疫グロブリンの中のIgAという蛋白が腎臓に運ばれ沈着し、糸球体に炎症を起こすもので、精密検査以外では見つけにくい病気です。この白く光っているのがIgAです。そのほか、腎炎には糸球体の毛細血管の外側で細胞が異常に増殖する急速進行性腎炎。血尿や蛋白尿が突然現れ、六ヶ月以内に腎不全になり透析療法を受けなければならなくなります。さらに糸球体の異常で、血液中の蛋白が大量に尿に出てしまうネフローゼ症候群などがあります。いずれの腎炎も症状が自覚しにくく、気づいた時にはかなり進行している点は同じ。そう、腎炎には日頃から体調への細かい注意が必要なのです。


EXAMINATION 検査


MEDICAL TREATMENT&MEDICINE 治療と薬
FRONTIER 最先端技術
データ慢性腎炎の約5割を占めるIgA腎症。この病を発症しやすくする厄介な遺伝子が、昨年1月、東京大学医科学研究所の中村教授によって特定されました。IgA腎症は、体内に侵入した細菌やウイルスによる感染などから体を守る、免疫グロブリンの一つであるIgAというたんぱくが腎臓の糸球体に付着。そのために炎症が起きる病気で根本的な治療法はいまだに見つかっていません。これまでの研究で白血球の働きに関係する「セレクチン」という2種類の遺伝子が発症に関係するとされていました。データ中村教授の研究チームはIgA腎症の患者と健康な人の遺伝子を比較。ある違いを発見したのです。IgA腎症の患者は「セレクチン」という遺伝子の特定部位に変異がある事がわかりました。また、この遺伝子を持つ人は変異がない人に比べ3倍も発症しやすいことがわかりました。これを糸口として、患者個々にあった治療法や薬の開発につながるのではと期待が高まっています。
SELF MEDICATION 自己管理
腎炎を予防するポイントは何よりも生活習慣の改善!
データデータ


データデータデータデータデータ

【睡眠】
まずは皆さん、夜更かし睡眠不足が続いてないか注意して下さい。腎臓の働きを調節するホルモンは、夜寝ている時に出ていますから夜更かしや睡眠不足は腎臓の大敵です!
【冷え防止】
夏冬問わず、体を冷やさないようにしましょう。体が冷えると、熱を逃がすまいと体の表面に血液が集まります。そのため腎臓への血流が減って機能が低下、水分がうまく排泄されず、むくみなどが出るようになるのです。寒いなと思ったら、カーディガンなどを羽織り、冷えないように注意しましょう。
【ウィルス】
風邪に気をつけるのも大切。風邪のウイルスは腎炎の原因。外から帰ったらまずうがい。手もよ〜く洗ってウイルスの侵入を防止しましょう。
【食事】
ウイルスなどへの抵抗力を養うためには食生活も重要です。栄養のバランスが整った献立を常に心掛けるのが何より大切。塩分は1日10グラムまでが目安です。腎炎予防には血液をサラサラの状態に保つ事もポイント!そのためには、血液をサラサラにするカテキンを沢山含むお茶。そして、ビタミンA・C・Eなどの抗酸化食品を意識的に摂るようにしましょう。ただし腎炎を発症している場合には、生野菜に含まれるカリウムが腎臓に負担をかけるので注意が必要です。
【水分】
冬場でも適度な水分の補給をお忘れなく!適度な水分補給は腎臓の活動をスムーズにしてくれます。1日約1.5リットルの水分を摂るよう心掛けて下さい。但し、水分補給といっても、アルコール飲料で補給するのはよくありません。アルコールは体内で分解される際、水分を使ってしまいますし、アルコールそのものの摂りすぎも腎臓にとっては大きな負担の元。あくまでもアルコール類の摂取はほどほどにして下さい。

腎臓の健康を保ち、腎炎を予防するには、日頃から衣食住の細かな気配りが重要。今、皆さんの腎臓は本当に健康ですか?

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