人体は、およそ
数十億個という想像を絶するほど多くの
細胞によって構成されています。その細胞一つ一つの中にあり、
役割を決定しているのが、
遺伝子です。細胞は遺伝子に従って、細胞分裂を繰り返し、内臓や血液や骨などを作っていきます。昨年の8月、す
い臓を作る元になる、
遺伝子が新たに
発見されました。その遺伝子とは
「Ptf1a」。「Ptf1a」は、これまで、すい液の分泌量を調節する遺伝子として知られています。この仕組みが解明されれば、
すい液の分泌量を自在に
コントロールすることもできます。すい液の分泌を抑えることが可能になれば、急性すい炎の治療に応用できます。さらに、すい臓の根本的な治療を可能にする。昨年の8月この遺伝子の
もう一つの働きを発見した、京都大学の川口助教授らのグループ。彼らは「Ptf1a」を細胞の運命を決定するスイッチと考えました。つまり「Ptf1a」が、
ONの細胞だとすい臓を作る細胞となり、
OFFの細胞だと十二指腸を作る細胞になります。
そこでマウスの胎児で比較実験したところ「Ptf1a」が、ONの場合矢印の部分のところですが、何とすい臓が作られ始めています。一方「Ptf1a」が、OFFの
マウスの胎児では、十二指腸が作られ始めたのです。
すい臓になるか、
十二指腸になるか。「Ptf1a」が細胞の運命を決めるスイッチであることが、この
実験で立証されました。川口助教授は現在、この「Ptf1a」を利用して「すい炎」や「糖尿病」「すいガン」などで傷ついたすい臓を再生できないか、研究中です。