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2003年1月19日(日) テーマは『急性すい炎』

今週のドクター今週のドクターは、
杏林大学医学部 第一外科
跡見 裕先生


【略歴】

’70年

東京大学医学部卒業

’88年 カリフォルニア大学 サンフランシスコ校客員研究員
’92年 東京大学第1外科講師
’92年 杏林大学第1外科教授。現在に至る

【ドクターの一言】
すい臓の病気は比較的診断が難しく、まず、すい臓の病気ではと疑 うことが重要で、血液検査や画像診断で診断をつけねばなりません 検査も昔ほどつらくないので心配せずお医者さんに相談して下さい


【著書】
「膵臓病学」 南江堂1993年
「実践診断指針」
日本医師会雑誌生涯教育シリーズ 2002
「臨床医のための膵炎」 現代医療社 2002


CONDITION OF ILLNESS 病気と症状のメカニズム
データあいたたたっ…昔は、飲んでも平気だったのに…何か悪いものでも食べたかな?でも、我慢しているうちに、ケロッと治ってしまった。最近、胃腸の具合が悪くて・・・。その痛みの原因、急性すい炎かも知れません。すい炎の特徴は、みぞおちやヘソの上あたりから、お腹全体に広がる激しい痛み。さらに、痛みが背中や腰に現れたり、激しい吐き気に襲われることもあります。こうした症状を起こすのはすい液が原因なのです。すい液は食事をした時に、すい臓から分泌されます。食べ物は胃から十二指腸で消化され、大腸・小腸で吸収されます。食べ物が十二指腸に送られてくると、データすい臓からすい液が分泌される仕組みになっています。すい液の分泌は、食後1,2分で始まり、2,3時間続きます。これが、たんぱく質を原料として、様々な消化酵素を作り出す腺房細胞です。しかし、すい液だけでは、食べ物は消化されません。胆のうに繋がっている胆管から「肝臓で作られ、胆のうに蓄えられた胆汁」を十二指腸に送ります。すい液は十二指腸で胆汁とともに消化の役割を果たします。すい液の出口付近にトラブルがあると流れが悪くなり、すい臓の中にすい液がたまっていきます。そこに、逆流してきた胆汁が混じると、すい臓内で強力な消化液が作られ、すい臓自体を消化し始めます。これは「自己消化」と呼ばれる現象です。すい臓の細胞が消化され、まるで火傷を負ったようなダメージを受けます。データ主な原因はアルコールと胆石症といわれています。アルコールを飲みすぎると、すい液の出口にむくみが生じ、すい菅が狭くなります。胆石は胆のうの中に、石ができる病気です。この胆のうから流れでた胆石が移動してきて、すい液の出口を塞いでしまいます。胆汁がすい臓に流れ込み、すい液と混ざりあうことで強力な消化液に変化。自己消化を起こします。急性すい炎になると、立っていられないほどの、強烈な痛みが出ます。すい臓のまわりに神経が集中しているからです。急性すい炎の炎症はお腹を覆う腹膜を伝わり、お腹全体や背中、腰に広がります。すい臓の炎症が、腹部全体に広がると、腸の働きが低下し腸閉塞のような状態を起こし強烈な吐き気を催します。さらに、すい臓の組織が完全に壊されいくような重症の急性すい炎の場合、すい液が腹部に漏れ出すことがあります。腹部には腹腔と呼ばれる空間があります。漏れ出したすい液がたまります。身体はすい液を薄めるため、大量の水分を血液から腹腔に集めはじめ、腹水がたまります。結果、血液中の水分が足りなくなり、体全体に血液を送ることがデータ出来ず、「ショック症状」を起こします。「ショック症状」が起こると、出血が止まらない、意識がなくなるなどの症状が表れます。さらに、心臓、肺、肝臓、腎臓などの複数の臓器が次々、または同時に、働かなくなる、多臓器不全を起こします。重症急性すい炎は、死亡率が20%〜30%におよぶ大変恐ろしい病気なのです。
急性すい炎
激しい痛み
原因がなくなれば治る
慢性すい炎
持続する痛み
徐々にひどくなる

急性すい炎のメカニズム
アルコール・・・すい液の出口がむくみ、狭くなる
胆石・・・胆石がすい液の出口を塞ぐ

すい液の流れが悪くなる+すい液と胆汁が混ざりあう

すい液が強力な消化液に変化

すい臓が消化され、炎症が起こる

自己消化
EXAMINATION 検査
急性すい炎の検査
触診
  みぞおち周辺の痛みの有無
血液検査
  アミラーゼ値が上昇、重症になると血糖値が上昇、カルシウム値が低下
エコー検査
  すい臓の形・腹水・胆石の有無を調べる
CT検査
  すい臓の懐死の程度と炎症の広がりを調べる
MEDICAL TREATMENT&MEDICINE 治療と薬
急性すい炎の治療
鎮静剤で痛みを取り除く
飲食を控える
電解質の入った水分やカロリーを点滴で大量に補給
たんぱく分解酵素阻害剤を点滴で静脈注射
胆石が原因の場合は、内視鏡手術で胆石を取り除く
FRONTIER 最先端技術
データ人体は、およそ数十億個という想像を絶するほど多くの細胞によって構成されています。その細胞一つ一つの中にあり、役割を決定しているのが、遺伝子です。細胞は遺伝子に従って、細胞分裂を繰り返し、内臓や血液や骨などを作っていきます。昨年の8月、すい臓を作る元になる、遺伝子が新たに発見されました。その遺伝子とは「Ptf1a」。「Ptf1a」は、これまで、すい液の分泌量を調節する遺伝子として知られています。この仕組みが解明されれば、すい液の分泌量を自在にコントロールすることもできます。すい液の分泌を抑えることが可能になれば、急性すい炎の治療に応用できます。さらに、すい臓の根本的な治療を可能にする。昨年の8月この遺伝子のもう一つの働きを発見した、京都大学の川口助教授らのグループ。彼らは「Ptf1a」を細胞の運命を決定するスイッチと考えました。つまり「Ptf1a」が、ONの細胞だとすい臓を作る細胞となり、OFFの細胞だと十二指腸を作る細胞になります。データそこでマウスの胎児で比較実験したところ「Ptf1a」が、ONの場合矢印の部分のところですが、何とすい臓が作られ始めています。一方「Ptf1a」が、OFFのマウスの胎児では、十二指腸が作られ始めたのです。すい臓になるか十二指腸になるか。「Ptf1a」が細胞の運命を決めるスイッチであることが、この実験で立証されました。川口助教授は現在、この「Ptf1a」を利用して「すい炎」や「糖尿病」「すいガン」などで傷ついたすい臓を再生できないか、研究中です。
SELF MEDICATION 自己管理
すい炎を招く大きな原因の一つが、何と言ってもお酒の飲み過ぎです。 飲酒人口は毎年増え続け、昭和40年から比べると、現在まで2倍以上の伸び、それに伴いアルコール消費量も倍増しています。仕事帰り、居酒屋などに立ち寄り、酒を飲み交わし、愚痴をこぼす。確かにアルコールはストレス解消にうってつけですが、飲みすぎると、急性すい炎になりかねません

データ

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【アルコールの適正量】
個人差はありますが、アルコールを無害な酵素に分解する処理能力は、平均すると体重1キロで、1時間あたり0.1グラム程度。体重60キロの人だと、1時間に6グラムから9グラム処理できる計算です。アルコールの適量は、1日20グラム程度。アルコール濃度14%の日本酒だと一合。アルコール濃度5%のビールなら大瓶1本分。濃度43%のウイスキーならダブル1杯と覚えておいてください。アルコールが60グラムを超えると、すい炎を引き起こす可能性が高まります。因みに、アルコールの量60gはダブルの水割りでたった3杯分。飲み過ぎには充分気をつけましょう。普段からお酒を飲み過ぎている人は、すい炎のもう一つの原因である、胆石の有無を調べてもらう必要もあります。
【脂肪の適正量】
さらに脂肪の摂り過ぎも、すい臓に負担をかける大きな要因です。1日あたりの脂肪摂取量を、昭和35年から比べてみると、3倍近くアップ。現代と昭和30年代の平均的な食卓を比較してみると、明らかに食生活の変化がわかります。一日に必要な脂肪の適量は58gです。これを目安に食生活の見直しを心掛けましょう。
すい炎予防のためにも、アルコール脂肪分の摂りすぎ
注意することが何より大切です。

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