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2003年1月5日(日) テーマは『高血圧』

今週のドクター今週のドクターは、
杏林大学医学部 高齢医学科
鳥羽 研二先生


【略歴】

 

東京大学医学部卒業

  テネシー大学生理学研究員
  フリンダース大学老年医学研究員
  東京大学医学部助教授を経て
’00年 杏林大学医学部高齢医学主任教授

【ドクターの一言】
21世紀医療は、お薬以外の日常生活、食事、運動療法が重要になる。医者自身が80歳になったことを想像して患者さんに接し病気治療にとどまらず、日常生活の不便を直す医療を心がけている


【著書】
高齢者介護のすべて「おとしよりとくらす」
文光堂
高齢者を知る事典 厚生科学出版
老年医学テキスト(日本老年医学会) メディカルビュー社
新老年学
東大出版会


CONDITION OF ILLNESS 病気と症状のメカニズム
データ特に冬場は放っておくと、突然死を招く要因となる高血圧。要注意の病気なのです。日本人の成人の4人に1人といわれるのが、高血圧。世界保健機構などの基準値に当てはめると、日本人の高血圧人口は、およそ3300万人に達すると推定されています。まさに日本人の国民病といえる高血圧。高血圧がやっかいなのは、血圧が高い状態が続いても、自覚できる症状がないという点。年を重ねた高齢者が、知らず知らずのうちに、高血圧になってしまっている場合が多いのです。また高血圧になると、循環器系合併症を発症する危険性が増します。そのため脳梗塞や心筋梗塞、そして動脈硬化などが、自覚症状がないまま進行し、治療が遅れることから、欧米では「静かなる殺人者、サイレント・キラー」と呼ばれています。放置すると危険な高血圧。血圧とは心臓から送り出された血液が、動脈壁に与える圧力のこと。データ心臓が1番収縮している時に、血管にかかる圧カが最大血圧。一方、心臓が1番拡張した時に血管にかかる圧力が最小血圧。血圧はこの2つを指します。高血圧とはこの最大血圧と最小血圧が、基準以上の数値である時に、診断されます。基準は1999年に世界保健機構と国際血圧学会が共同で設けたものです。血圧は正常血圧、境界型血圧、高血圧に分けられ、高血圧とは、最大血圧が140以上、または最小血圧が90以上の場合。さらに高血圧は、軽度、中度、重度の3つに分類され、程度が上がるほど、脳梗塞などを併発する危険性が増します。また高齢者に多く、動脈硬化によって起こる高血圧として、収縮期高血圧があります。単に高血圧といっても、いくつも分類されているのです。高血圧の主な原因は塩分の過剰摂取喫煙アルコールなどによる長年の生活習慣の不摂生。さらにストレスなど精神的な負担によります。血管は内膜、中膜、外膜の3層から出きていますが、内膜の内皮には重要な役目があります。それは一酸化窒素を作ること。データ血管内皮は一酸化窒素を作り、この一酸化窒素は血管の拡張作用や動脈硬化を防ぐなどの、大事な働きがあるのです。この内皮が正常に働くことで、血圧は正常に保たれています。しかし塩分の摂りすぎや喫煙、ストレスなどが続くと、血管内に酸化ストレスが発生して、内皮の一酸化窒素の合成や働きを低下させます。これが長年続く事で、徐々に血管全体が動脈硬化を起こし、血管内部が細くなったり弾カが失われたりします。すると血液を全身に運ぶのに、より強い圧力が必要になり、血圧が高くなるのです。また遺伝などの要因が複合的に合わさり、高血圧になってしまうのです。そしてこの高血圧は、大きく2つに分けられます。1つは本態性高血圧。これは高血圧全体の85%を占める高血圧です。特に生活環境が強く影響していて、塩分の多い食事や運動不足、さらに肥満、ストレスなど生活習慣が引き起こします。しかし必ずしも、これらの要因がそろったからといって、全ての人が高血圧になるというわけではありません。遺伝的な要素も関係していて、はっきりした原因が特定できない高血圧のことを指します。もう1つが二次性高血圧。高血圧全体の15%を占めています。二次性高血圧とは、腎臓疾患や脳、中枢神経の異常など、原因が特定できる高血圧で、比較的若い世代に多い高血圧です。そんな高血圧で怖いのが合併症。高血圧になると様々な病気を引き起こす危険が高いのです。脳卒中や脳梗塞といった脳血管障害や、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患。そして腎機能障害。また動脈硬化など、命の危険にさらされる病気ばかりです。高血圧は自覚症状がありません。それだけに日頃から血圧に気を配ることが、とても大事です。
高血圧の分類 (mmHg)
正常血圧 最大血圧 130以下
     かつ
最小血圧 85以下
境界型
血圧
最大血圧 130〜139
     または
最小血圧 85〜89
高血圧
最大血圧 140以上
     または
最小血圧 90以上
高血圧の種類
本態性高血圧
二次性高血圧

高血圧全体の

85%

原因が特定できない

高血圧全体の

15%

腎臓疾患など原因が
特定できる

高血圧の分類2 (mmHg)
軽度 最大血圧 160〜179
     または
最小血圧 90〜99 
中度 最大血圧 160〜179
     または
最小血圧 100〜109
重度
最大血圧 180以上
     または
最小血圧 110以上
 
【収縮期高血圧】
 高齢者に多く、
 最大血圧 140以上かつ
 最小血圧 90以下
EXAMINATION 検査
血圧測定
 ※二次性高血圧の場合
   血液検査・尿検査
    心電図・X線
動脈硬化検査
 血圧脈波

 頚動脈波

 血管内皮機能

全身の血管の硬さによる血管年齢を調べる

頚動脈の動脈硬化の有無を超音波で調べる

血管の広がり具合を調べる
MEDICAL TREATMENT&MEDICINE 治療と薬
高血圧の治療
食事療法
生活改善指導
3ヶ月〜半年様子をみる
降圧薬
交換神経抑制剤 利尿薬
血管拡張薬  
レニン・アンジオテンシン系抑制薬
FRONTIER 最先端技術
データ高血圧の治療で今最も注目を浴びているのが、高血圧遺伝子診断です。これは高血圧が遺伝によるものも多いため、遺伝子を調べることで、将来高血圧になりやすいかどうかを、事前にチェックする診断法で減塩体重管理などの予防対策を事前に行ったり、高血圧の場合はどんなタイプの高血圧なのかを特定して、各種降圧薬を処方することができます。検査方法はまず、採血して血液から、遺伝子を抽出します。遺伝子はそれぞれデータをもっていますが、データこの遺伝子に高血圧の情報も、たっぷりと詰まっています。この遺伝子情報には、元となる4つの塩基で構成されています。この塩基が高血圧の人はいずれかが、欠失したり、他のものが挿入されていたり、もしくは他のものに変化したりしているという、はっきりとした特徴があります。これらの遺伝子の量や形で、どのタイプの高血圧になるかわかるというものです。正確な診断結果が得られる上、早期から高血圧の予防が行えるので、新しい検査法として注目されています。
SELF MEDICATION 自己管理
食塩と切っても切れない関係にある「高血圧」。塩分の摂取量があるレベルを超えると、体内の塩分濃度が高くなり、それを薄めようとして水分を補給します。しかし腎臓はホルモンの働きにより、水分を排出しないようにします。そのため循環血液量が増加。またナトリウムが交感神経を刺激して血管を収縮させてしまうため、結果、血圧が上昇してしまうのです。だから塩分の過剰摂取は禁物。かといって全ての人に減塩が効果的というわけではありません。体内に塩分がとどまりやすく、血圧が上がりやすい性質を「食塩感受性」といいます。反対に塩分の処理能カが高く、血圧が上がりにくいタイプを「食塩非感受性」といいます。本態性高血圧でも4割がこの食塩感受性です。つまり塩分の処理能カに個人差があるので、単に減塩すればいいというものでもありません。塩分感受性が大きいタイプの人は、高齢者、女性、腎疾患などがあげられます。




データ



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データ





データ
【食事】
高血圧と塩分は密接な関係にあるので、やはり高血圧の予防には、何といっても食事に気をつけることが大事です。食事のポイントとしては、1日の塩分摂取量を抑える事。現在日本人の平均塩分摂取量は1日、12〜13グラムです。高血圧の人は、1日7グラムを目標にしましょう。次の食事のポイントは、カリウムを十分に摂る事です。カリウムは塩分の働きを抑えて、血圧の上昇を防いでくれます。さらに、最近ではカリウムは酸化ストレスも防止することが分かってきました。カリウムを多く含むのはこれらの野菜や果物です。バナナ、リンゴ、ほうれん草やじゃがいも、トマト、などを摂るようにしましょう。また、マグネシウムも摂りましょう。マグネシウムは血管を拡張して血圧を下げる働きがあります。マグネシウムを多く含むのは、ゴマ、大豆、ナッツ、などです。さらにマグネシウムが働くには、カルシウムが必要なのでマグネシウムとカルシウムを1対2の割合で摂るのが理想的です。
【運動】
また高血圧の予防でもうひとつ大事なのが運動です。運動することで血圧を下げる降圧物質の、ドーパミンなどが体内で作られ血圧を下げてくれます。水中ウォーキングなど、心拍数があまり上がらず、負担の少ないものが最適です。また、早歩きなどもOKです。ただしジョギングなどすぐに心拍数が上がる運動は要注意。また、勝敗を競うスポーツは興奮して血圧を上げてしまうので不向きです。
【ガイドライン】
高血圧のガイドラインでは、適正体重の維持、アルコール脂肪の制限、などが上げられています。
高血圧は普段の生活習慣に気を配るだけで、予防・改善できる病気です。日頃から気をつけましょう!

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