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2006年2月26日(日)、3月5日(日)
テーマは『生命科学スペシャル
〜発見!ヒト タンパク質の一生〜 』

今週のドクター 今週のドクターは、
東京都臨床医学総合研究所

田中 啓二
先生


【略歴】

  徳島大学卒業、酵素化学研究所で博士号を取得
’80年 ハーバード大学に留学、蛋白質分解研究を本格的に開始
帰国後、プロテアソームを発見。臨床研に赴任後、蛋白質分解と病気の研究を推進。

【ドクターの一言】
蛋白質分解の研究から生命の謎に迫る。教科書を書きかえるような新しい生命科学を創成。医師は現在の健康を守り、生命科学者は未来の健康を守る使命を帯びており、この観点から、研究を推進。


【著書】

「ユビキチンがよくわかる(わかる実験医学シリーズ)タンパク質分解と多彩な生命機能を制御する修飾因子」

  羊土社 2004年出版
「タンパク質修飾・分解の新機能に迫る(実験医学増刊)ユビキチン研究の進展と、プロテオリシスによる細胞機」   羊土社 2004年出版
「ユビキチン研究の新展開―メカニズムから疾患研究へ(医学の歩み)」   医歯薬出版 2004年出版

〈タンパク質の一生〉
〜どこでどうやって作られる?〜

データ私たちの身体。それはおよそ、60兆もの細胞で作られています。そして、その細胞を形作っているのがタンパク質。私たちの身体には、10万種類ものタンパク質が存在するとデータ言われています。全身の皮膚や筋肉、そして臓器の細胞も全て、タンパク質から作られています。また、眼のレンズもタンパク質が原料。透明で、光を通す種類のタンパク質から作データられているんですね。そして、タンパク質は、身体を形作る材料というだけではありません。食べ物を、胃の中で消化する「消化酵素」。これもタンパク質です!そして、私たちの体内を1分間に10万キロメートル、地球2周半ものスピードデータで旅をする血液。その血液の中で、全身に酸素を運ぶ赤血球も、タンパク質なんです。10万種類にも及ぶタンパク質は、作られたり壊されたりを繰り返しながら、体内で起る大切な働きの殆どを、請け負っているのです。木川先生は、タンパク質の構造を調べ、データそのデータを元に、人工的にタンパク質を作り出す、研究チームのリーダーです。タンパク質とは、アミノ酸という物質がつながったもの。アミノ酸は、全部で20種類あります。その20種類のアミノ酸が、様々な組み合わせでつながって、実に10万種類ものタンパク質が作られます。アミノ酸とタンパク質の関係は、データいわばアルファベットと英単語のようなもの。文字を組み合わせて、単語が出来るように、アミノ酸の様々な組み合わせが、10万種類ものタンパク質を生み出します。その組み合わせ方を決めるのが遺伝子。つまり、タンパク質の設計図です。タンパク質が生まれるのは細胞の中。全身のあらゆる細胞で、作られています。クラゲのタンパク質を作る実験!今回の実験では、試験管の中でタンパク質を作ります。データタンパク質を作るために、必要なものは次の3つ。まずは、設計図の働きをする遺伝子。この液体が、光るクラゲのタンパク質を作るための、設計図なのですね。続いて、こちらはタンパク質の材料。我々の身体にあるのと同じ、データ20種類のアミノ酸です。最後は、アミノ酸同士を繋ぎ合わせる、接着剤の役割を果たすタンパク質です。アミノ酸が入った試験管に、遺伝子と接着剤になるタンパク質を入れれば、遺伝子の設計図通りに、アミノ酸が繋がり始めます。ただし、紐のように繋がるだけでは、まだタンパク質とはいえません。設計図に従い、複雑に折り重なって、立体的な構造を持った時、初めてタンパク質となるのです。まず、遺データ伝子を「ピペット」という、特殊なスポイトで吸い上げます。ピペットで吸い取った遺伝子を、アミノ酸が入っている試験管に注ぎ込みます。その際、何度か出し入れを繰り返し、遺伝子とアミノ酸が、万遍なく混ざるようにします。次に、接着剤の役目をするタンパク質を注ぎます。これで準備は全て完了。最後に、混じりあった液体を、37度のお湯で温めます。待つことデータ一時間。果たしてタンパク質は出来上っているでしょうか…。ご覧下さい。側が試験管の中で誕生しました光るクラゲのタンパク質GFPです。遺伝子とアミノ酸から、新たなタンパク質が生まれる。同じ現象が、私たちの身体の細胞でも、日々、繰り返されているのです。こうして生まれたタンパク質も寿命が訪れると壊されて、新しいタンパク質と入れ替わります。実はここに、生命の維持に関わる重要な謎が!このタンパク質分解の謎に、いち早く注目!真相を追い求めてきたのが田中啓二先生なのです!
〈タンパク質の一生〉
〜プロテアソーム〜

データタンパク質。それは単に、身体を形作るだけでなく、身体の中で起こる働きの殆どに関わる、重要な物質。そのタンパク質は常に入れ替わり、細胞をリフレッシュします。データ3ヶ月前のTake2。タンパク質は1日に2%ずつ入れ替わります。3ヶ月で、総入れ替えされるため、タンパク質レベルでは、全く別人なんです。そして、この入れ替えがスムーズに行かない時、身体に異常が発生します。タンパク質は作られるだけではなく、データ本来の寿命を全うし、壊される事が大切です。タンパク質の寿命。それは、短くて2〜3分、長ければ数ヶ月と、実に1万倍もの開きがあります。その違いを決めているのは何なのか?この疑問から、田中先生の研究は始まりました。田中先生はこの30年間、データ常に「タンパク質の寿命は、どうやって決められるのか?」「タンパク質の分解、その意味とは何か?」にこだわり続けてきました。1977年、25歳の時、田中先生は後に生涯の師となり、また友人ともなる、ハーバード大学、アルフレッド・ゴールドバーグ博士の論文と出会います。その論文には、衝撃的なことが書かれていました。データタンパク質が壊される時にも、エネルギーは使われている』それまでの、タンパク質が壊される時には、エネルギーは使われない、という学会の常識を打ち破る内容を目にして、田中先生は、「この中にこそ自分が生涯を捧げるテーマがある!」と直感。ハーバード大学への留学を決意しました。そして3年後、留学。遂にゴールドバーグ研究室の一員となります。実は、その3年の間に、タンパク質分解のメカニズムに関しては、データイスラエルの2人の科学者による、新たな仮説が発表されていました。その仮説では・・本来の寿命が尽きたタンパク質には、必ずユビキチンという物質がくっつく。ユビキチンがついたタンパク質は、まるで目印でもついているように、速やかに分解される。タンパク質にユビキチンがくっつく際、エネルギーが使われる。仮説には、そう述べられていました。しかし、この仮説をゴールドバーグ博士は疑問視。留学早々の田中先生に、データ「仮説の誤りを証明するように」という、課題を出します。ところが、田中先生は逆に、ユビキチンに関する仮説が正しい事を、僅か三ヶ月余りで、見事、証明してしまいました。その時、生まれたのが、ユビキチンを目印に、タンパク質を壊すのは何か?という新たな疑問。田中先生はその解明を、自らの研究テーマとします。留学を終え、日本に戻ってからも、タンパク質を壊す何かが必ずある筈だと、田中先生は信じて、データ研究に没頭しました。そして遂に、ユビキチンがくっついたタンパク質だけを壊す物質を、発見したのです!プロテアソーム。後に世界の生命科学者を、驚嘆させる物質です!これが電子顕微鏡で捉えたプロテアソーム。ユビキチンの付いたタンパク質だけを、つかまえ分解する酵素です。このプロテアソームは、何と細胞の中に数多く存在しています。でも、どうやって、ユデータビキチンの付いたタンパク質だけを攻撃するのでしょうか?プロテアソームは、ユビキチンを目印として、狙ったタンパク質を飲み込みます。それから、タンパク質の結合部分をハサミで切り離すようにして、元のバラバラなアミノ酸に戻してしまうのです。田中先生が発見したこの働き、身体の機能を正常に保つ上では、どのような役割を、担っているのでしょう?タンパク質は、正常に働いていても、壊れるべき時に、壊れなければいけません。データそれがタンパク質の寿命。プロテアソームが果たす最も大きな役割は、機能が正常なうちにタンパク質を分解する事正常な機能を失ったタンパク質は細胞を傷つけるため、時には、細胞そのものが死んでしまう危険すらあります。そして、もう一つの重要な役割は、細胞に悪影響を与える、出来の悪いタンパク質を壊す事。細胞の中で新たに生まれるタンパク質の、何と三割は不良品!もし、プロテアソームが働かなければ…出来の悪いタンパク質が、データ細胞内にどんどん溜ってしまいます。寿命の尽きたタンパク質や、出来の悪いタンパク質が体に溜まる。実はそれが、パーキンソン病や、アルツハイマー病といった、難病の原因になっていたのです!

〈タンパク質の一生〉
〜どのように壊される?〜

データ東さんが訪れたのは、東京・駒込にある「東京都臨床医学総合研究所」。田中先生を中心に、遺伝子との関係が深い難病を研究。原因の究明、診断・治療、予防法の確立をめざしています。タンパク質が壊れるってどういう事?その疑問を解き明かすため、まず、生命科学の基本ともなる、実験室に案内してもらいました。研究に使う、ES細胞を準備しています。東さんが見たのは研究用のデータ培養皿に、ES細胞を移動させている瞬間でした。このES細胞は、「幹細胞」とも呼ばれており、皮膚から脳まで身体の、あらゆる部分の細胞に変化する、細胞です。また、ES細胞は、タンパク質の設計図になる遺伝子の組み替えを、最も行いやすい細胞でもあります。遺伝子を組み替えると、当然、組み替え前とは、データ違った性質のタンパク質が作られます。たとえば、マウスの遺伝子を組み換えて、そのマウスに起こる異常や変化から、タンパク質が持つ、機能や性質を解明するのです。続いては、研究用の細胞を培養している部屋へ。これがデータヒーラー細胞。世界中の研究者たちが、がん研究に使っています。これは電子顕微鏡で捉えたプロテアソームをコンピューターで解析した映像。その元になった写真はこちら。1993年、西ドイツのマックスプランク研究所で、初めて撮影に成功しました。タンパク質分解の鍵を握るプロテアソームデータ決して肉眼では見られない貴重な映像は、当時、全世界の科学雑誌の表紙を飾りました。そして同時に、田中先生を表す国際的なトレードマークともなったのです!なんと田中先生の名刺にもプロテアソームが!

〈タンパク質の一生〉
〜病気との闘い〜
データプロテアソームの発見により、世界のタンパク質研究をリードする田中先生!2001年には、ノーベル賞受賞者を決める、「ノーベル会議」のメンバーにも選ばれています。プロテアソームの研究、それは今後の医療に、データどんな発展をもたらすのでしょう?事実、プロテアソームの研究で、パーキンソン病の原因が判明しましたパーキンソン病とは、身体を動かす指令が、脳から上手く伝わらなくなる病気。徐々に全身が動かせなくなります。パーキンソン病に冒された脳の神経細胞。その中には、寿命が尽きたのに分解されなかったタンパク質が溜り、指令の伝達を妨害データしていたのです。また、パーキンソン病の患者さんからは、不思議なユビキチンを作る遺伝子も、見つかりました。このユビキチンがタンパク質にくっついても、プロテアソームは、そのタンパク質を壊そうとしません。それは、目印にならない、異常なユビキチンだったのです。そのため、データ神経細胞に不要なタンパク質が次々と溜り、病状を進行させていました。プロテアソームの研究が進み、不要なタンパク質が細胞内に溜まらないように出来れば、将来、パーキンソン病の治療や予防が可能になると期待されています。一方、脳が徐々に萎縮し、データ認知症が起きる、アルツハイマー病の場合、病に冒された脳を調べると・・・・「老人斑」と呼ばれる、このようなシミが見つかります。このシミも、実はアミロイドベータという、異常なタンパク質が脳の神経細胞の外側に溜まったもの。そして、神経細胞の中には、データさらにタウという異常なタンパク質が溜まります。このタウが溜まると、神経細胞は死んでしまうのです。アルツハイマー病の原因も、プロテアソームが壊せない異常なタンパク質が、脳の神経細胞に溜まっていくことだったのです

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