わが国最大規模の疫学調査これにより2005年も新たな事実が報告されました。この調査は、私達の生活習慣と、
癌や脳卒中など、命に関わる病気との、因果関係に関する重要なもの!10年間、この調査を行ってきたのが、東京・築地の国立がんセンター。調査のデータ分析を率いてきたのは、予防研究部長の津金正一先生です。『どのような人が病気になりやすいのかを調べ、
どうすれば病気にならないのかを解明する。』
調査開始は1990年。日本全国の
40代〜60代の男女、約10万人に対して、生活習慣に関するアンケートが行われました。そして、その後、どんな病気に罹ったのか、追跡調査は今も行われています。こちらが、実際に使われたアンケートです。
煙草やアルコールの摂取だけでなく、食事内容も詳しく聞いています。たとえば、
味噌汁を飲むか飲まないか、味の濃い淡いの好み、好きな調理方法、焦げた食べ物の好き嫌いなど。そのほか、
睡眠状態や、ストレスの有無に関する項目も調査されています。10年間、10万人分に上る膨大な追跡調査は今も、癌センターで分析され研究対象となっています。そこから一体、どんなデータが浮かび上がり、津金先生は、どのような情報を読み取っているのでしょうか?『試験管内で、どの物質がどの病気に効くというような分かったと。しかし必ずしも人間は論的通りにはいかないわけですよね。それに比べて
人を対象とした研究というのは人で起こっていることを観察しているわけですから、そこで得られた結果というのは実際起きていることですから確かなことだと思います。』ではこれまでに報告された調査結果を、いくつかご紹介しましょう。まず、
「お茶をよく飲む女性は癌になりにくい」!一日の間に全くお茶を飲まない女性に比べ、5杯以上飲む女性は、胃癌に罹る割合が、
何と40%近くも低かったのです。また、この調査によると、
「太っている人よりも、痩せている人の方が、癌が発症しやすい傾向がある」
という事も分かりました。これはちょっと意外ですね。また、これまで、魚に含まれる
不飽和脂肪酸が、大腸癌を防ぐ、という報告がしばしばされましたが、今回、
「魚を食べても大腸癌は予防出来ない」というデータが調査によって判明しました。事実、魚をよく食べる人も、食べない人も、大腸癌になる確率は、全く変わらなかったのです。癌以外にも、
興味深いデータは少なくありません。喫煙と脳卒中の関係を見ると、
「喫煙者が脳卒中を起こしやすい」だけでなく、
「男性より女性の喫煙者の方が、特に脳卒中を起こすリスクが高い」
というデータが出ています。そして2005年、報告されたのが・・・「野菜・果物と大腸癌の関係」。これまで、野菜や果物は、大腸癌の発生を抑えるとされてきました。食物繊維が、大腸内の発癌物質を、排出すると考えられていたのです。しかし、今回の調査では、
「野菜や果物には大腸癌を予防する効果はない」という結果が出ました。更に、或る飲み物が「肝臓癌の予防に効果あり」という、
興味深い報告もされました。その飲み物は
コーヒー!毎日飲む人の肝臓癌リスクが半減、更に、一日5杯以上飲む人では、リスクが4分の1に減っていたのです!こうした調査から、また、新たな予防医学の研究が生まれていくでしょう!