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2005年5月29日(日)、6月5日(日)
テーマは『カルシウム』

今週のドクター
今週のドクターは、
東京都老人医療センター 院長
林 泰史先生


【略歴】

’64年

京都府立医大 卒業

’65年 東京大学整形外科 入局
’74年 米国テキサス大学骨代謝科 留学
’76年 東京都老人医療センター 整形外科医長
’86年 東京大学 非常勤講師
’90年 東京都リハビリテーション病院 副院長
’99年 東京都多摩医療センター 院長
’02年 東京都老人医療センター 院長
’03年 東京都老人総合研究所 所長併任

【ドクターの一言】
片方の手足が麻痺をしていても「もう片方の使える手足について喜びなさい」という気持ちが大切です。これからの高齢社会では様々な病気を有する高齢者が増えますが、どこかは健康なのです。


【著書】
「X線像から診断する骨粗鬆症」   ライフサイエンス
「骨の健康学」   岩波新書
「日常生活指導のための リハビリ・
テクニック」
  文光堂
「褥瘡の治療と対策」   医療ジャーナル社
「ひざ・あしの痛み」   PHP研究所

〈素朴な疑問〉
〜カルシウムが不足すると、イライラするって本当?〜

データカルシウム。皆さんがそう聞いて、まず思い浮かべるもの。それは、骨ですよね。私たちの全身を支えている大切な骨。骨は主に、カルシウム、そしてコラーゲン繊維から作られています。カルシウムは骨を硬く、強くする、という重要な役割を果たしています。私たちの身体の中には、カルシウムが男性でおよそ1.2キロデータ女性でおよそ1キロあります。こうした身体の中のカルシウムの99%が、骨に蓄えられているのです。では、残りの1%はどこにあるのでしょう?実は、残る1%のカルシウムこそが、人間の生命活動を支えているのです。東京大学名誉教授・唐木英明先生は、カルシウムが体内でどんな働きをするのか、30年に渡って研究を続けられています。唐木先生「カルシウムは私たちの身体の中で様々な働きをしています。筋肉を動かしたり、ものを見たり、情報を伝えるのもカルシウムの働きなのです。」私たちの身体は60兆個もの細胞が集まって作られています。実は、体内の1%のカルシウムは、血液の中を移動し、24時間、全身のあらゆる細胞を出入りしているのです。体内の1%のカルシウムは、24時間休むことなく、全身のあらゆる細胞に出入りしているのです。ところでこの時、細胞では何が起きているのでしょう?たとえば、私たちの腸の筋肉は、便を体の外に送り出すため、絶えず蠕動運動を行っています。この時、腸の筋肉細胞は縮んだり緩んだりしていています。データ腸の筋肉細胞は「筋肉を動かしなさい!」という信号を受け取ると、筋肉細胞の中にカルシウムが入ります。すると筋肉細胞が収縮を始めます。カルシウムが外に出ると、収縮がおわり、細胞は元の状態に戻ります。これが、腸の細胞で連続して起こり、蠕動運動となるのです。同じように、腕や足の筋肉も心臓の筋肉も、カルシウムの出入りが、キッカケとなって動いているのです。筋肉以外の細胞でも、カルシウムは働いています。たとえば、目。網膜に光が届くと網膜の細胞にカルシウムが入ります。すると網膜の細胞は、データ目に入った光の強さや色を信号に変え、脳へと送ります。こうして、目から送られた信号は脳の細胞でキャッチされます。実はその際、脳細胞の中にもカルシウムが入って行きます。この時、脳の細胞が活動を始めて、物が見えるのです。更に、信号が目から脳へと送られる時も、間をつなぐ神経細胞にカルシウムが入り、次の神経細胞へと信号を送っているのです。つまり、全身に張り巡らされた神経も、カルシウムが出たり入ったりするおかげで、情報を伝達する機能を果たせるのです。全身のカルシウムのうち、僅か1%。それが筋肉を動かす・物を見る・情報を伝えるという、大切な働きを支えているのです。ところで、カルシウムが不足すると、本当にイライラするのでしょうか?通常、血液の中に含まれているカルシウムの量は、常に一定に保たれています。しかし、カルシウム不足で血液中のカルシウム量が減ると「自分だけはカルシウムを沢山溜め込もう!」という、欲張りな活動が全身の細胞で始まります。データ一見、逆のように思われますが、血液中のカルシウムが不足している時、全身の細胞の中には、カルシウムがいつもより増えているのです。カルシウムが増えると、細胞は十分に機能しなくなります。実はある病気によって、脳の細胞にカルシウムが増えることが分かっています。1998年、広島大学で山脇教授らのグループが、情緒不安定な人の脳細胞を調べ、脳の中のカルシウム量を計測しました。結果、情緒不安定な人のデータ脳には、普通の人よりも、カルシウムが増えていた事が判明しました。つまり、情緒不安定な人の脳細胞では、血液中のカルシウムが不足した時と似たことが、起こっていたのです。唐木先生「病気の人についてはカルシウムが増えすぎる、そうするとイライラが起こる、あるいは精神障害が起こるというのはかなりはっきりわかっています。ただ、普通の人についてはイライラの状態がそれほどひどくないし、すぐにおわってしまう、ということでなかなか実験や研究が難しい。なのでまだ分かっていません。だから、病気の人から考えると、可能性は非常に高いとは思いますが、まだ、きちんとした証拠が出ていない、そういう状況です。」
『カルシウム』とからだ
〜骨粗鬆症〜
データ推定患者数1000万人。そのうち、女性がおよそ800万人、という病気をご存知ですか?それは大事な骨がもろくなる病気、骨粗鬆症です。骨粗鬆症にかかると骨からカルシウムが失われ、スカスカになってしまいます。骨粗鬆症は、データ全身の骨に影響が現れます。例えば背骨。身体を支えている背骨が押しつぶされ・・腰の痛みや足のしびれ、麻痺などの症状を引き起こします。また足の付け根の骨、大腿骨が骨粗鬆症の影響で脆くなると、骨折しやすくなります。特に高齢者が大腿骨を骨折すると、そのまま寝たきりになってしまうことも少なくありません。なんとこの骨折は寝たきりになる原因として脳卒中、老衰に続いて3番目に多いのです。骨粗鬆症が原因の大腿骨骨折は、年々増加を続け、今では、年間およそ、10万人にも達しています。でもどうしてデータ、骨がスカスカになるのでしょう?実は私たちの骨は、カルシウムを出し入れしながら常に新しく生まれ変わっています。その骨の生まれ変わりに大きく関係するのが骨を作る骨芽細胞。そして、骨芽細胞とは逆に、骨を溶かして壊す破骨細胞です。まずは、破骨細胞が古くなったデータ骨に作用して、骨のカルシウムを溶かし、破壊して行きます。この破壊の作業が四週間ほど続けて行われると・・・すると今度は骨を作る骨芽細胞が登場!骨芽細胞は壊れた箇所に、カルシウムをペンキのように塗りつけて、骨を修復します。この二つの細胞は、同じ一本の骨でも、絶えず違う箇所でそれぞれ活動しています。こうして、破壊と形成を繰り返す事で、一本の骨はおよそ2年かけて、新しく生まれ変わるのです。この、骨を作る機能と壊す機能が、バランス良く作用していれば、丈夫な骨が維持されます。しかし、老化や生活習慣によって、骨を壊す働きだけが強くなる場合があります。データそれが骨粗鬆症に繋がります。でも、なぜ骨を壊す働きだけが強くなるのでしょう?その原因の一つが女性ホルモン、エストロゲンの減少です。エストロゲンには、骨を作る細胞の働きを助ける一方で、骨を壊す細胞の働きを抑えています。しかし、女性の場合、閉経を迎えると共に、エストロゲンは殆ど分泌されなくなります。その結果、それまでは抑えられていた、骨を壊す働きが強まるだけでなく、骨を作る働きも弱まってしまいます。そのため、女性のデータ場合は40代〜50代以降、急激に、骨が脆くなり始めるのです。一方、男性の場合は、男性ホルモンが骨を作る働きを助けています。そのため、40代以降男性ホルモンが減りはじめると、骨を壊す働きはそのままで、骨を作る働きだけが弱まり、骨がもろくなるのです。このように骨粗鬆症は、骨を作る働きよりも、壊す働きのほうが強くなると、起こる病気なのです。また、カルシウムを摂取する量の不足も、骨粗鬆症の大きな原因の一つです。血液中のカルシウム濃度は、常に一定を保つように調節されています。もし濃度が下がった場合は、貯蔵庫である骨から補います。そのため、血液中のカルシウムが慢性的に不足すると、骨からはカルシウムがどんどん放出される事になります。その結果、データ骨粗鬆症になってしまうのです。骨粗鬆症にかかっているかどうか。その目安となるのは骨の密度、骨密度です。測定する装置によって若干異なりますが、1平方センチメートル当たり、1グラムが正常値です。この数値が、7割を下回れば、骨粗鬆症。7〜8割なら、骨粗鬆症予備軍で注意が必要です。
セルフメディケーションポイント!  
『カルシウム』と病気
データ我々の血液に含まれているカルシウム。それは常に一定に保たれています。この血液中のカルシウムは、多くなっても少なくなっても、身体のあちこちに異常が現われます。実は、カルシウムの微妙な調節は、ある場所が一手に引き受けています。データそれが、ちょうど喉の下にある、蝶々型の小さな臓器、甲状腺と副甲状腺です。もしも、血液中のカルシウムが多くなりすぎると、甲状腺から、カルシトニンというホルモンが分泌され、カルシウムは骨へと送られます。反対に、血液中のカルシウム濃度が少しでも下がると、副甲状腺から、副甲状腺ホルモンが分泌され、骨から血液へとカルシウムを引き出します。こうして、血液中のカルシウム濃度は常に一定になるよう、調節されているのです。さらにこの副甲状腺ホルモンには、カルシウムが尿として排泄されすぎないようにする働きがあります。そのため、もし副甲状腺ホルモンが過剰に分泌されるとカルシウムが、骨から大量に引き出されてしまうだけではなく、不要なカルシウムを体外に排泄する働きまでもストップしてしまいます。その結果、血液中のカルシウム濃度はどんどん濃くなってしまデータいます。すると・・まず最初の症状として、動悸や吐き気が起こります。ひどくなると強い眠気が起こり、ついには意識を失ってしまう事すらあるのです。このような副甲状腺ホルモンの増加は、副甲状腺機能亢進症という病気が原因。副甲状腺が、腺腫という腫瘍のために大きくなり、副甲状腺ホルモンが大量に分泌されるデータ病気です。原因はまだ明らかになっていませんが、男性よりも女性が発症しやすく高齢者に多いという特徴があります。この副甲状腺機能亢進症は、長期間続くと、生命の危険に繋がる事もあります。そしてカルシウムの摂りすぎが病気の原因となることもあるのです。お腹や腰の鈍い痛み… 尿に血が混じっていた… データその原因は腎臓にできたカルシウムの固まり、腎臓結石です。本来余分なカルシウムは、骨に蓄えられたり、腎臓から尿と一緒に排泄されるなどして一定に保たれています。もし、いつまでも血液中のカルシウム濃度が下がらないでいると、なんと腎臓にカルシウムがたまって結石ができてしまうのです。もし、腎臓全体に結石が広がると、腎臓の働きそのものも低下してしまいます。データまた、カルシウムの摂取不足から引き起こされるのが、なんと高血圧!動脈硬化を起こすこともあるので皆さん要注意です!血液中に含まれているカルシウムが不足しだすと、それを補おうと、骨から血液中に、カルシウムがどんどん放出されます。この時の骨を削る力は、骨を作る力の5〜20倍も強力!そのため、大量のカルシウムが血液中に出てしまいます。しかも、この大量のカルシウムは、何と血管の細胞の中に入って、そこに溜まり始めるのです。その影響で血管が縮み、高血圧の状態に陥ります。ひどい場合には、溜まったカルシウムによって、血管そのものが石灰化することもある程です。石灰化が起きると、もちろん血管全体は硬くなってしまい、動脈硬化を起こします。このように、体内のカルシウムが不足して、血液中のカルシウムが急激に増えてしまうと血管の細胞をはじめ、あちらこちらの細胞の中に、余計なカルシウムがどんどん溜まって行きます。データ一見、逆に思われるかも知れませんが、身体全体としては不足しているのに、何故か、一つ一つの細胞の中は、カルシウムで一杯という訳です。この状態をカルシウム・パラドックスと呼びますが、これは全身のあらゆる細胞に起こります。カルシウム・パラドックスで最も恐ろしいのは、細胞が正常に働かなくなる事。もしも、心臓へと血液を送る血管がカルシウム・パラドックスで働かなくなってしまうと…命に関わる心筋梗塞を招く危険も出てくるのです。このようにカルシウムとは、多すぎても少なすぎても、私たちの身体に重大な影響を及ぼします。
セルフメディケーション
〜からだにいい生活〜
データ私たちが毎日の食事から摂取すべきカルシウムは、成人で1日600ミリグラムと言われています。しかし調査が始まって以来60年、今だかつて、日本人の平均カルシウム摂取量が、1日600ミリグラムを越えた事はありません。でも、どうして、日本人の食生活は、こんなにもカルシウム不足なのでしょう?戸板女子短期大学学長、江沢郁子先生。骨の衰えとカルシウムの関係を長年研究。現在、「東京骨を守る会」会長を務めています。江沢先生「カルシウムを多く含む食品というのは、限られています。なのでそれらを積極的に摂らないと、1日の摂取量600ミリグラムに到達しないんです。ですから食生活全体の中で、カルシウムを多く含む食品をどう取り入れるか、習慣づけるかこれが大切です。」では、カルシウムを多く含み、しかも習慣的に摂る事ができる食品とは?「代表的なのは牛乳、乳製品です。カルシウムを多く含むだけではなくて、習慣的にとれる、さらにはカルシウムの吸収率がいいというのがあるんです。」データ牛乳コップ1杯分には、220ミリグラムのカルシウムが含まれています。更に、小腸でカルシウムの吸収を助ける、カゼインというタンパク質や、乳糖という糖質も含まれています。さらに牛乳には…、江沢先生「牛乳の中には乳清たんぱく質というのがあります。これは微量ですけれど、これが骨の形成を促進する、また、骨の破壊を抑える、そういう働きがあるんです。」このように牛乳はカルシウムの吸収を助け、骨を丈夫にする性質を持っているんですね。また、データ「牛乳はどうも苦手」という方には…?そう、皆さんお馴染みの納豆!江沢先生「納豆のネバネバの成分、ポリグルタミン酸というんですが、これがカルシウムの吸収を促進する、というのが最近わかってきました。」納豆100グラムには、カルシウムが90ミリグラムも含まれています。その他、納豆にはビタミンKやイソフラボンという、骨を作る機能を助け、同時に、骨の破壊を抑える成分も含まれています。日々の食生活に不足しがちなカルシウムを補うためにも、皆さん、納豆を毎日の食事に加えてみてはいかがデータでしょう?骨を丈夫に保つ。そのためには日々の食事だけでなく、もう一つ大切なことがあります。江沢先生「さらに骨を強くするには、運動が大切です。過激な運動とは限らず、筋肉をしっかりさせることが目的です。だから日常生活の中で活動的な生活をする、これが非常に大事です。」江沢先生は、女性ホルモンを分泌しなくなったラットで、骨の丈夫さと運動の関係について研究しました。運動を全くしなかったラットの骨は、女性ホルモンを分泌しなくなってから6ヶ月後には、スカスカになってしまいました!しかし、毎日欠かさず運動をしていたラットの骨は、女性ホルモンの分泌が止まってから6ヶ月経っても、以前と殆ど変わらない!では、手軽に出来て、骨を丈夫に保つのに役立つ運動とは?それはなんと、意外や意外、腹筋です!骨には、圧力を加えると、カルシウムが沈着して丈夫になるという性質があります。腹筋をすると、骨には縦方向の圧力が加わります。そのため骨を強化するのに効果的なのです。 データでも腹筋はキツイ!!という中高年の方、スーパーマン風に手足を伸ばしましょう!!身体を浮かせるという簡単な方法でも、骨は十分鍛えらます。 食事と運動に気をつけて、骨を丈夫に保つ。健康な骨は長寿の第一歩。皆さんも、是非お試し下さい。

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