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2005年4月17日(日)、24日(日)
テーマは『腸内細菌』

今週のドクター
今週のドクターは、
兵庫医科大学 消化器内科
福田 能啓先生


【略歴】

昭和50年

弘前大学医学部卒業
東京都立駒込病院内科

  専門はヘリコバクター・ピロリ感染、
クローン病、腸内細菌叢から見た生活習慣病
現在 兵庫医科大学内科学・下部消化管科助教授

【ドクターの一言】
Patients first(患者さん第一)をモットーに、全人的医療の実践に努め、わかりやすい言葉で説明するようにしています。これからは病気にならないよう予防する時代です。


【著書】 専門書
福田能啓 田村和民 
「腸内細菌叢からみたクローン病患者の栄養管理、消化器病学のの進歩’85」
(大田康幸編集)
  日本医学館
下山孝 福田能啓
「内科学書(消化管・腹膜疾患、肝・胆道・膵疾患、感染症)」
(山村雄一監修)
  中山書店
福田能啓 馬場裕子 田村和民 
里見匡迪 下山孝
「クローン病の在宅栄養管理.内科診療 Q&A」
(永野充 原田尚 藤沢洌 永野志朗編)
追録32号
  六法出版社
福田能啓 
「クローン病の症状・クローン病ってどんな病気」
(里見匡迪、福田能啓編 下山孝監修)
  診断と治療社
福田能啓
 「潰瘍性大腸炎の疫学 潰瘍性大腸炎ってどんな病気」1版
(里見匡迪、福田能啓編)
  診断と治療社
福田能啓 里見匡迪 
「大腸憩室症 専門医がすすめる最新処方128」
  総合医学社
福田能啓 
「クローン病 看護のための最新医療講座」第2版
(日野原重明、井村裕夫監修 岩井郁子、北村聖監修協力 千葉勉編集)
  中山書店

〈素朴な疑問〉
〜善玉菌・悪玉菌って何?〜

データこれが皆さんの大腸の中に住んでいる微生物、腸内細菌です。腸内にいる細菌はおよそ100種類。数にしてなんと100兆。全ての細菌を合計すると、重さは1〜1.5キロにも昇ります。このシャーレに見える白い固まり。これは善玉菌の代表、データ乳酸菌です。乳酸菌を電子顕微鏡で拡大。細長い形をしています。この乳酸菌、ヨーグルトなどに沢山含まれているのは、皆さんもご存知でしょう。よく「身体にいい」と言われる乳酸菌。でも皆さん、その理由を知っていますか?この乳酸菌に、人類が注目しだしたのは1900年代の初め!乳酸菌は身体にいい。その事実に初めて注目したのは、ロシア生まれの細菌学者メチニコフ!メチニコフは、昔からヨーグルトをよく食べていたブルガリアに、データ長寿の人が多い事に着目。研究を始めました。その結果、ヨーグルトに含まれる乳酸を作り出す菌が老化を防止し、長生きに関係していると考え、「ヨーグルト不老長寿論」を唱えたのです。一世紀近く昔から、その存在が注目されていた乳酸菌。実は「善玉菌」とは、乳酸を作り出す細菌の事を指しているのです。では乳酸菌以外、善玉菌にはどんな菌があるのでしょう?例えば、ビフィズス菌もその一つ。腸内で最も多い善玉菌がこのビフィズス菌です。ところで、善玉菌の具体的な働きとは?乳酸菌やビフィズス菌といった善玉菌は、データ食物に含まれるブドウ糖を食べて乳酸を作り、腸内の環境を酸性に保つ働きをしているのです。このことが腸の健康にはとても重要!酸性の腸内では身体に害のある細菌の増殖が抑えられます。同時に体外から侵入してきたサルモネラや、病原性大腸菌オーO157といった病原菌も、退治されたり、増殖を抑えられるのです。また、データ食べたものから、体に必要なビタミンを作り出すのも、善玉菌の仕事!例えば、骨の形成を助けたり、出血した血を固める役割をするビタミンKは、その殆どを、善玉菌が作っているのです。そのほか、詳しいメカニズムは不明ですが、善玉菌は、身体の免疫力を高める働きもしています。このように善玉菌は、私たちにとって、なくてはならない重要な存在です!データでは一方、悪玉菌とはどんな菌なのでしょうか?悪玉菌の代表とされているのが、たとえば大腸菌、そしてウェルシュ菌。これらの細菌は腸の中で、消化吸収しきれなかった肉などの蛋白質を腐敗させて、分解しています。実は、その際アンモニアやアミン、スカトール、といったデータ毒素を作り出してしまいます。レントゲンで大腸の中を見てみましょう。この白い固まりは便。その周りに黒く写っているのがガス、つまりアンモニアやアミン、スカトールといった毒素です。この毒素が大腸内で多量に作られると、腸の働きを悪くしたり、時には血液によって運ばれ、肝臓などにも悪影響を与えます。また、これらの菌が出す毒素は、腸内をアルカリ性に傾け、食中毒を起こす細菌など、有害な細菌の繁殖を促進します。データこうした健康への悪影響から「悪玉菌」と呼んでいるのです。これは日和見感染を引き起こす細菌の一つバクテロイダス。こちらは同じくユーバクテリウム。日和見感染を起こす細菌は、普段はおとなしくしていて悪さを働きません。しかし、一旦善玉菌が減ると、腐敗を起こす悪玉菌と一緒に大増殖!腸の粘膜に炎症を起こすなど私たちの健康を害するのです!実は食中毒を起こすことで有名な、病原性大腸菌O157も、日和見感染を起こす細菌の一種。善玉菌が減って増殖すると、下痢や腹痛といった症状を起こすのです!伊藤先生は現在、腸内細菌と大腸癌の関係に着目。腸内の細菌を使って、大腸癌の発生や、悪化を抑えるシステムの研究に取り組まれています。私達の腸の中をいつでも健康に保つ、そのためには、何よりも善玉菌を減らさず、悪玉菌を少なくしたり封じこめておく、そうした環境作りが不可欠なのです。
『腸内細菌』とからだ
データ私たちの腸内細菌のバランス。じつは食生活だけで左右されるものではありません。これは、年齢と共に移り変わる腸内細菌のグラフです。歳をとると、善玉菌のビフィズス菌が減り、それに代わって悪玉菌の大腸菌、ウェルシュ菌の量が増えていますね。そう、善玉菌を減らす原因の一つに老化があるのです。データ年齢と共に、身体の機能は全ての面で低下します。大腸に限って言えば、蠕動運動が衰えるだけでなく腸内分泌液も、年齢と共に減少します。すると、便がスムーズに流れず、善玉菌には住みにくい環境となります。そのため悪玉菌が増殖。アンモニアやアミン、スカトールといったガスが、どんどん作り出されてしまいます。お年寄りがよく「お腹が張って苦しい」と訴えるのは、このためだったのです。善玉菌が少なく、悪玉菌が多いと、大腸の蠕動運動は更に弱まり、データひどい便秘を起こします。この状態が慢性化すると、便が粘膜の弱い部分を押して、大腸に憩室と呼ばれるくぼみを作ってしまいます。するとさらにその中で悪玉菌が増殖することになるのです!また、悪玉菌が出す毒素によって、長時間に渡り、腸の粘膜が刺激されると、大腸にポリープが出来る事もあります!そしてもっと恐ろしい事も…大腸がんにも悪玉菌は関わっているのです。データ悪玉菌の中には、蛋白質を分解する際、発癌性物質を作るものがいたのです。その悪玉菌とは、緑膿菌。(りょくのうきん)そして、大腸菌の一部!緑膿菌や大腸菌が合成する酵素、ニトロソアミンが大腸癌を発生させる原因の一つなのです!

セルフメディケーションポイント!  
腸内細菌のバランスが崩れると、大腸ばかりか、全身に異常が起こる場合もあります。本来、腸にきたコレステロールの50%は、腸内の善玉菌の働きによって、データ体の外に排出される仕組みになっています。もし善玉菌が減少すると、腸内に多くのコレステロールが残り、粘膜から吸収されてしまいます。その結果、起きるのが高脂血症、また更には動脈硬化などに繋がる場合も、少なくありません。腸内細菌の正常なバランスが崩れ、善玉菌が減って悪玉菌が増える。そうなると、腸だけでなく体全体に、様々な障害を引き起こすことにもなりかねないのです。
『腸内細菌』と病気
データ悪玉菌によって作り出される毒素を、腸が長時間吸収し続けると・・その毒素は、血液中に入り込みます。血液によって毒素が体中を巡ると、だるさを感じるようになります。血液中の毒素の一部は、皮膚から排出されます。その際、データ毒素が直接皮膚にダメージを与えて、肌荒れを起こす事があります。更に近年、増加しているアレルギー疾患!その原因の一つとしても、腸内細菌は挙げられているのです。アレルギー。それは本来、身を守るための免疫力が、自分自身を攻撃。身体の色々なところに炎症を引き起こす病気です。その病気には、鼻炎、喘息、結膜炎、腸炎、そして、データアトピー性皮膚炎などがあります。詳しいメカニズムは不明ですが、腸内細菌、特にビフィズス菌が免疫系の働きを、よい方向に調整しています。そのため、ビフィズス菌が減る事と、アレルギーの発生に因果関係が考えられるのです。これは、日本人の脂肪摂取量の変化を表したグラフ。年々増加しているのが分かりますね。そして、データ同じように年々増加している病気に、潰瘍性大腸炎とクローン病があります。どちらも原因不明の難病ですが・・高脂肪の食事による、腸内細菌のバランスのくずれが、原因の一つではないか?と、考えられています。健康な大腸の内部はこのように綺麗ですが…潰瘍性大腸炎になると、炎症によって潰瘍ができてしまいます。データひどいと大腸全体に拡がってしまうことも。これはクローン病の画像。こちらは悪化すると、大腸だけでなく、食道から直腸まで炎症が広がるのが特徴です。潰瘍性大腸炎で、薬物治療の効果がなく、将来、癌の出来る危険性があると判断された場合、大腸を全て摘出する手術が行われます。まず患者の腹部に5ケ所の穴をあけます。そこから、内視鏡や手術器具を入れ、医師はモニターを見ながら手術を行います。最初に内臓を覆っている腹膜を切り取って行きます。次に大腸に付いている血管を切断。大腸を体外へ出せるようにします。そして、お腹に開けた3センチ程度の穴から全ての大腸全てを、体の外へと引っ張り出します!高脂肪の食事による腸内細菌のバランスの乱れが続けば、この病気が今後ますます増えると考えられます。
セルフメディケーションポイント!  
セルフメディケーション
〜からだにいい生活〜
データ腸内を健康に保つために重要なのは、乳酸菌やビフィズス菌といった、善玉菌の多い腸内環境を作ること!ヨーグルト以外にも、善玉菌を増やす食品、皆さんはご存知ですか?日本畜産大学寺田厚先生は、食品衛生学教室で、食品と腸内細菌の関係を研究しています。「善玉菌を増やす食品、我々日本人が昔からデータ食べていた食事に多く含まれています。」日本人が昔から食べていた食事、つまり和食。でも和食の中でも、何が腸の環境作りにいいんでしょう?「発酵食品です。」例えば、私たち日本人が昔から食べていた糠漬け。糠漬けは、乳酸菌の発酵で作られる食物。当然、乳酸菌が豊富に含まれているのです。そして、味噌汁。データ味噌汁の元となる味噌。そして、我々の食生活に欠かせない醤油は、どちらも、大豆の発酵食品です。発酵の過程で乳酸菌が大量に作り出されます。その乳酸菌が腸内細菌のバランスを整えるのです。そして、大豆の発酵食品の中でも特に優れているのが…「データ納豆です。」そう、先生お勧めは納豆!納豆をつくる納豆菌は、空気や日光に晒されても生きていける、実に丈夫な菌。この納豆菌の強さは体内でも同じ。胃を通過する際も強い胃酸に耐えて、無事、大腸へとたどり着くのです。そして納豆菌に含まれているペプチドが、腸内の善玉菌のエサとなります。そのため善玉菌を活発にして、増殖させるのです!さらにもう一つこの善玉菌の餌としてデータ寺田先生のおすすめが、糖分の一種オリゴ糖。普通の糖分は、殆どが小腸で吸収されますが、オリゴ糖だけは吸収されず、大腸に辿りつき、善玉菌のエサとなるのです。善玉菌がオリゴ糖を食べる時、このようにオリゴ糖に善玉菌がくっつきます。するとそれを核として大量の便が生まれます。この便が腸を刺激。蠕動運動を促進して、便秘の解消に役立つのです。 大豆を使った発酵食品、そしてオリゴ糖。昔の人が自然に学んだ知恵と、医学が結びついた所に、健康な腸に関する未来は広がっているのですね。

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