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今週のDNA!!
2005年1月30日(日) テーマは『痛風』
(今週のテーマは2004年1月25日に放送したものです。)
今回放送分のドクターQ&Aは、こちら

今週のドクター 今週のドクターは、
東京女子医科大学付属
膠原病リウマチ痛風センター
山中 寿先生



【略歴】

東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター教授。
1980年三重大学医学部卒業以来、一貫して痛風、リウマチの臨
床・研究・教育に携わり、患者教育にも力を入れている。

【ドクターの一言】
これからは患者さんが自分の病気について良く勉強し、医師のアド
バイスを受けて治療方針を決める時代です。正しい知識を持って自
分の身体は自分で守りましょう。

【著書】
痛風で一病息災 保健同人社
尿酸値が高いといわれたら 朝日ソノラマ
痛風といわれたら 朝日ソノラマ
痛風が気になる人の食事 NHK出版
痛風とつきあう法 東京新聞出版局
痛風の人の食事 成美堂出版
やさしい痛風の自己管理 医薬ジャーナル社

CONDITION OF ILLNESS 病気と症状のメカニズム

朝の散歩の途中、足にちょっとした違和感が...何か変だぞ???夕方になると何だか腫れてきたような?そして、真夜中過ぎ。眠っていると....イタタタタ!足の親指にかつて、経験したこともないような激しい痛みが襲ってきた! これが痛風です! 痛風に苦しむ人はおよそ50万人。その予備軍は何と600万人とも云われています。実に95%と圧倒的に男性が罹りやすい病気です。なぜ、足に激痛が走るのでしょうか?痛風。昔から風が吹いても痛い!と云われてきたほど、強烈な痛み。
痛風の痛みは、90%以上が足、それも膝から下の部分で起こります。そのうち最も痛みが起こりやすいのが親指の付け根です。その痛みは「傷口をキリでえぐられるような痛み!」とか、「ペンチで足をつねり上げたような痛さ!」と表現されます。
その激痛の犯人が尿酸の結晶。そもそも尿酸とは一体何なのでしょうか?私たちの体はおよそ60兆個もの細胞から作られています。古くなった細胞は分解されて、新しい細胞と常に入れ替わっています。これを新陳代謝といいます。尿酸とは、古い細胞が分解される際に生まれる老廃物です。我々の体には、通常、1200mg程度の尿酸が全身を流れる血液や、体液に溶け込んでいます。尿酸は毎日、600から800mg作られます。ほぼ同じ量の尿酸が、尿や汗と一緒に排泄され、体内の尿酸の量は一定に保たれています。このバランスが崩れ、尿酸が増えすぎると大量の尿酸が全身を巡り始める状態、「高尿酸血症」となります。この「高尿酸血症」こそ、痛風の第一歩!増えすぎた尿酸は、全身を巡るうち、特に足の関節にたまり始めます。理由はまだ不明ですが、最も尿酸が溜まりやすいのが親指の付け根の関節!関節は骨と骨とのつなぎ目。その関節部分の周囲は、袋のような「関節包」で覆われています。「関節包」は、関節をスムースに動かすため、粘り気のある「関節液」で満たされています。この「関節液」は酸性の物質。そのため、同じ酸性の尿酸は溶けずに、溜まり始めます。実は尿酸には、一定の濃度を越えると結晶化しやすいという特徴があります。溜まった尿酸は、「関節包」の壁にこびりつくようにして、針状の結晶を作ってゆきます。見るからに痛そうな結晶。しかしこの結晶が、チクチクと突き刺さって痛みが起こるわけではありません。じつは血液中のある成分が大きく関わっているのです。
それは白血球。白血球は細菌や体内の異物を攻撃し、私達の身体を守るという大切な働きをしています。尿酸の結晶は、溜まりすぎたり、運動による衝撃を受けたりすると、「関節液」の中にはがれ落ちます。
剥がれ落ちた尿酸の結晶は、人体の防衛システムによって異物とみなされます。異物である尿酸結晶を排除するため白血球による攻撃が始まります。
白血球は、尿酸の結晶を攻撃する過程で分解され、「プロスタグランジン」などの物質を大量に関節の中に生み出します。「プロスタグランジン」は炎症や痛みを起こす物質です。白血球から放出された「プロスタグランジン」が痛風の激痛と腫れを引き起こします。
そもそもどうして尿酸が増えてしまうのでしょう?私たちの細胞一つ一つには、それぞれの細胞の働きを決める遺伝子が組み込まれています。新陳代謝で古い細胞が壊される際、遺伝子も一緒に分解されます。分解された遺伝子の一部が、「プリン体」です。「プリン体」は肝臓で尿酸へと作りかえられます。体内の尿酸を一定に保つために、新しく作られた尿酸と同じ量の尿酸が、腎臓でろ過され、身体の外へと排出されます。しかし、プリン体が増えすぎると尿酸が作られすぎて、体内に溜まるようになります。
体重が急激に増えると、「プリン体」が体内で大量に作られるようになります。また食事によっても、「プリン体」は増加します。遺伝子の一部である「プリン体」は、ほぼすべての食品に含まれています。体内の「プリン体」のうち、約15%は食物から取り込まれたもの。
レバー類など、「プリン体」が多い食品を食べると、肝臓で大量の尿酸が作られます。新陳代謝の異常と、食事によるプリン体の急激な増加が、尿酸を増やす原因となります。一方、「プリン体」と関係なく、尿酸が増える事も!尿酸を体の外に排泄する腎臓の濾過機能。この濾過機能が低下すると、尿酸が体内に溜まり続けます。さらにアルコールも体内の尿酸量を急速に増加させる元。アルコールが肝臓で分解される時、「乳酸」という物質が大量に生まれます。「乳酸」は、不要な尿酸を体の外に出すという、腎臓の濾過機能を妨げる性質があります。しかも、ビールの原料である麦芽には、大量の「プリン体」が含まれています。ビールを飲むと尿酸が大量に作られる上、排泄されにくくなります。尿酸をためる原因はプリン体の増加と腎臓の機能低下です。とても痛い痛風。この、「痛み」にも特徴があります。

痛風の激痛のピークは、ほぼ一週間続きます。その後、二、三週間でゆっくりと痛みが収まり、しばらくは痛みが起こりません。治ったと思ってそのままにしておくと、最初の発作から実に二年から五年。忘れた頃に、再び襲ってくるのです。しかも、二度目以降、回を重ねるごとに、痛風の発作が起きる周期は、段々と短くなって行きます。それだけではありません。腫れや痛みも発作を繰り返すうち、ドンドン悪化してしまいます。通常、痛風で痛みの起きる関節は一箇所です。しかし、発作を繰り返すうちに、関節にはさらに多くの尿酸の結晶が溜まりつづけます。治療を怠っていると、ご覧のように炎症や腫れもますます悪化して、痛みも強さを増して行くのです。遂には手の関節など、全身に腫れや痛みが起こることさえあります。痛風は痛みが治まっても、私達の体を蝕み続ける恐い病気。

EXAMINATION 検査

EXAMINATION 検査

FRONTIER 最先端技術

痛風は、尿酸が体内に溜まり過ぎて起こります。
本来、体内の尿酸は、常に一定に保たれています
尿酸を一定に保つために働く遺伝子が、近年、解明されつつあります。遺伝子の働きはまだまだ不明の点が多く、その働きを探るため、様々な人の遺伝子の配列が比較されています。こうして配列の違いや特徴のある箇所が、幾つか選び出されます。なかでも「URAT1遺伝子」が驚くべき働きをしていることがわかってきました。この遺伝子をアフリカツメガエルの卵細胞に新たに加えるという実験が行われたところ、「URAT1遺伝子」を加えられたアフリカツメガエルは本来より多くの尿酸を蓄えるようになりました。更に、尿酸値が異常に低い病気の人の遺伝子を調べると、「URAT1」が変異しており、尿酸を体内に蓄える働きをしていない事も明らかになっています。また、「URAT1」が腎臓の尿細管で、尿酸を再吸収する役割を担っている事が明らかになってきました。尿酸の排泄を促進する薬を必要としている人は、現在全国に30万人。
「URAT1遺伝子」の働きを抑え尿酸の排泄を促進する、という新たな痛風治療薬の開発へ期待が高まっています。

FRONTIER 最先端技術

痛風の原因となる尿酸は、「プリン体」から作られています。
「プリン体」は常に体内で作られますが、そのほか、およそ15%は食べ物から取り込まれています。遺伝子の一部である「プリン体」は、ほとんど全ての食品に含まれます。「プリン体」を多く含む食品に注意して、尿酸が増えないようにする事は痛風の予防の為にも重要です!では、「プリン体」は、どのような食品に多く含まれているのでしょうか?会社帰りにちょっと一杯! 今のような寒い季節にはたまりませんね!でも注意して下さい!
プリン体を多く含む食品の代表的なものは、レバー類。最も多くのプリン体を含んでいるのが鶏のレバーで100g中312mg。鶏のレバーは極めて小さな細胞の集まりで、肝臓自体、他の臓器と比べて細胞の数も多い。当然「プリン体」も多くなります。プリン体は、干物にも大量に含まれています。中でも多いのがアジの干物。皆さんもよく食卓でお目にかかりませんか?アジの干物100gには246mgのプリン体が含まれています。実は、このように乾燥させた食品は、重量が軽いため、同じ重さで比較すると、細胞の数が格段に多くなります。だからといって、沢山食べていい訳ではありません。一食分でも126mg含まれています。ところでみなさんも「イクラなど、魚類の卵が痛風に悪い」とお聞きになった事はありませんか?そこで早速比べてみました。同じ重さのイクラ、タラコそして鶏の卵のうち、「プリン体」最も多く含むのはどれでしょう?同じ100gで比較すると、鶏の卵は何と「プリン体」ゼロ。一方、イクラは3.65mg。そんなに多くはありませんね。そしてタラコには、何と121mgもの「プリン体」が含まれています。なぜこうなるのか?それは大きさの大小に関係なく、一個の卵が一個の細胞から出来ているからです。という事は、同じ重量で比較すると、卵の大きさが小さいものになるほど、「プリン体」が多く含まれる事になります。しかし「プリン体」と尿酸を同時に、しかも急激に増やす食品があるのです!その食品とは、アルコールです!アルコールが肝臓で分解される時、「乳酸」という物質が大量に作られます。「乳酸」の特徴。それは尿酸の排泄を妨げる働き。結果、尿酸値が急激に上昇してしまうのです。アルコールの中でも、特に注意の必要なのがビール。ビール大瓶1本には、使われる麦芽の量によって、30mgから90mgもの「プリン体」が含まれます。同じ大瓶1本分でも、発泡酒の場合は18mgですから、大違い!プリン体を多く含む食品は摂り過ぎないよう心掛けることが重要です。


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