がんによる死亡者数。わが国では、現在年間30万人にも達しています。がんは、新しい検査法や治療法が研究されながらも、
未だに完治するのは難しい病気です。今年8月、厚生労働省の研究班はがんについての
大規模な調査結果を発表しました。国立がんセンター予防研究部長の津金昌一郎先生を中心としたその疫学調査とは・・・
40代〜60代の男女およそ9万人を1990年から10年にわたって追跡調査するという大規模なもの。調査結果からは、日本人に特有の意外な事実も明らかになりました。
津金教授らは、アンケート調査によって、
がんに対する日本人特有の意識を調べました。質問は、「がんになる最大の原因は何でしょう?」というもの。結果は…
1位「ウイルス・細菌」、2位「たばこ」、3位「ストレス」。さあ、あなたはどう考えますか?実は、アメリカでも同じような質問をしたところ
1位に食事、2位はたばこ、
3位は運動となりました。この意識の元になっているのが、こちらの1996年にハーバード大学が発表したがんの原因。がんの原因は食事。
欧米ではこの研究に基づいたがんに関する意識がもはや常識となっています。しかし、日本人は、がんの原因が、日々の食事にあるという意識がまるでなかったということが分かったのです。
さらに、
ある飲み物をよく飲む女性は胃がんにかかりにくいという調査、今年ご紹介しました。こちらも津金先生らのグループによる研究です。あるものとは、
緑茶。私たち日本人になじみの深い飲み物です。何と、緑茶を
1日5杯以上飲む女性は、1杯も飲まない女性を1とすると、
胃がんになる危険性が、0.67となることが分かりました。さらに、緑茶を1日5杯以上飲む女性は、
胃の出口付近にがんができる危険性が激減することも判明したのです。しかも、この調査で分かったのは、
緑茶の胃がん予防効果だけではありませんでした。実は、
緑茶を飲む時の温度が重要であることも明らかになったのです!!
緑茶も熱すぎると、胃の粘膜を傷付けることがあります。教授らは、胃の出口付近に到達する頃には、熱い緑茶が冷めて、胃がんの予防効果が増すのでは、と考えています。熱いお茶が好き、というあなたも、これからは
少しぬるめのものを飲まれてはいかがでしょう?
さらに、ある体格の日本人男性はがんになりやすい!!この調査結果も今年、番組でご紹介しましたよね。なんと、
やせている男性ほどがんになりやすいということが判明したのです。調査では、がんの発生率や死亡率と、肥満の基準、BMIとの関係を調べました。BMIとは、体重を身長の2乗で割った数値。
日本人の場合、22が標準、25以上は肥満とされています。
BMI23〜24.9、身長170pなら66.5〜71.5kg.と、少し太めの男性のがんの発生率を1とすると…?その前後の標準体型から肥満傾向にある男性では、がんの発生率はほとんど変わりません。ところが、
19〜20.9の
やや痩せ型男性は
14%、さらに、
それ以下のやせっぽち男性はなんと29%もがんの発生率が高かったのです。身長170pの場合、体重60kg以下の男性が要注意。
太っている人は恐ろしい生活習慣病に…、
やせている人はがんに…、それぞれ、気を付けなければならないことが示されました。日本独自のがんに関する疫学調査。その研究は今後も続けられるということです。