BS-i | 健康DNA!!

健康DNA　ロゴ
ONAIR

2004年9月12日(日) テーマは『不整脈』
(今週のテーマは2003年4月23日に放送したものです。)
今回放送分のドクターQ&Aは、こちら

今週のドクターは、
昭和大学医学部　第三内科
片桐　敬先生

【略歴】

’67年	昭和大学医学部卒業、大学院進学。米国留学を経て
	昭和大学医学部第三内科専任講師、助教授
’88年	同主任教授
	現在に至る。専門は循環器内科学、特に虚血性心疾患

【ドクターの一言】
臨床的に患者さんに優しい医師を目指している。治療の方法から生活指導まで納得同意を得ながら、患者さんの身になって診療している。一方では心臓病の研究と医学部学生の教育にも努力している

【著書】

「リンパ管疾患・内科学（第７版）」朝倉書店　1999年

「心筋虚血の心筋代謝・心臓病学」医学書院　1995年

「洞不全症候群の病理・不整脈学」
南江堂　1992年

「遺伝性代謝疾患における心筋病変・
最新内科学体系３２・循環器疾患４」中山書店　1991年

「慢性虚血性心疾患・無症候性虚血性
心疾患・心臓病学」南江堂　1991年

突然、心臓がドキドキする。脈が速くなったり乱れたりする。それは不整脈の兆候かも‥。健康には自信がある人でも不整脈は少なくありません。これは病気と関係の無い不整脈があるためです。反面、不整脈の中には命に関わるものがあるのも事実！規則正しいリズムを刻みながら、血液を脳や全身へと送り出すポンプ。それが心臓の果たしている役割。血液が心臓から送り出される動き。それを現すのが脈。心臓のリズムは脈で確認する事が出切ます。データ

脈と心臓は常に同じリズムを刻んで動いています。その回数は安静時で１分間に６０～１００回。１日約１０万回にも上っています。この脈が乱れる、つまり心臓のリズムに異常が起こるのが不整脈です。心臓の規則正しいリズム、それは心臓の右上の右心房にある「洞結節」と呼ばれる部分から「動け」という電気刺激として出されます。その刺激が「刺激伝導系」と呼ばれる経路から心臓の筋肉へ伝わり、心臓全体を動かしています。しかし刺激の伝わる途中、どこかに異常が生じるとリズムは乱れ、不整脈を作り出します。時々間隔があく、いわゆる脈が抜けるタイプの不整脈。「期外収縮」と言っデータ

て多くの人にみられますが、連続して出たり、たくさん出る場合を除いては、治療の必要はありません。これは「洞結節」以外からも何故か電気刺激が出て、心筋に余分な動きが交じるため、心臓が本来より速いタイミングで収縮する。これが「期外収縮」です。心臓に病気の無い、健康な人でも睡眠不足や過労。また煙草の吸い過ぎ、お酒の飲み過ぎなどが原因で起こる場合があります。脈が速くなる場合は‥突然心臓の動悸が始まり、異常に速く脈を打つかと思うと急に収まってしまう。データ

「発作性頻拍」という不整脈の特徴です。「発作性頻拍」は本来の経路以外にも通り道が出来て、「洞結節」から出た電気刺激が心臓の中をグルグル回るために生まれる不整脈です。この場合、突然脈が速くなり、１分間に１５０～２００回以上も打つようになります。そんな時は息を大きく吸って止め、そのままウーッと力む。または冷たい水を飲むと治まります。もし、それでもダメなら、直ちに医師による治療が必要になりますゾ。脈が異常に遅くなる場合、代表的なものに「房室ブロック」という不整脈があデータ

ります。症状がひどいと目眩も伴います。電気刺激が心房と心室の間で遮断され、伝達に時間がかかったり、途中で途切れた場合に発生する不整脈です。脈のリズムが全体的に不規則になってしまう。これは「心房細動」と呼ばれる不整脈の特徴です。データ

「心房細動」で脈拍が１分間に１３０回以上になると、激しい動悸や胸の痛み、呼吸困難などの症状が現れます。これは心臓の上の部分、心房のあちこちから電気刺激が出て、心房全体がふるえるようになるためです。同じ状態が心臓の下部、心室でも起きるのが「心室細動」。この場合、心臓は正しい収縮が出来なくなり、止まってしまうのと同じで、突然意識を失い、すぐ治療しないと命に関わります。ご紹介したように不整脈が起きると、単に脈が不規則になるだけではなく、様々な症状の現れる場合も少なくありません。自分の不整脈は危険なものか、そうでないのか。心当たりのある方は医師に診断を受け、不整脈の状態を把握しておく事が大切です。

不整脈の種類
脈が速くなるもの	発作性頻拍など
脈が遅くなるもの	房室ブロックなど
脈が不規則になるもの	期外収縮心房細動

不整脈の検査
標準１２誘導心電図	手脚や胸につけた電極で心臓に起きる電気を１２ヵ所からとらえる
ホルター心電図	小型の心電計をつけて心電図を２４時間連続して記録する
運動負荷心電図	運動によって心臓に負担を加え不整脈が発生する条件を作り出しどのような不整脈が現れるかをみる

頻脈性不整脈の場合

薬物療法（抗不整脈薬）
カテーテルアプレーション
…	不整脈を起こす原因部分を高周波で焼き切る治療法

徐脈性不整脈の場合

人工ペースメーカー
…	人工的に電気刺激を送り心臓の働きを規則正しくさせるペースメーカーを体内に植え込む

不整脈の中でも突然死に繋がる危険な種類のもの。特に「心室細動」や「心室頻拍」といった不整脈が起きたら直ちに救急処置を取らなければなりません。緊急の場合、救急車や病院では「体外式除細動器」、いわゆる「電気ショック」を使い、心臓に強い電気刺激を与える治療が行われます。このシステムを小型化。重い不整脈を頻繁に起こす患者さんの体内に埋め込まれるのが「ＩＣＤ」。データ

植え込み式除細動器です。「ＩＣＤ」は「心室細動」などをすぐ察知。心臓に入れたリードに電気ショックを送り、拍動を正常なリズムに戻します。「心室細動」が起きた心臓が、「ＩＣＤ」が働いて正常な拍動に戻りました。また、発作の後は、病院でどんな不整脈だったかをチェックします。皮膚の上から特殊なセンサーを当てるだけで、「ＩＣＤ」内蔵のコンピューターが発作時のデータを

再現してくれるのです。小型化・軽量化が進み、誤作動も少なくなったことから「ＩＣＤ」は急速に普及しています。一度停止した心臓を動かす事さえある「ＩＣＤ」。命に関わる重い不整脈の発作対策として、益々効果を高めて行きそうです。

命に関わる危険のある「心室細動」などの不整脈を起こして倒れ、心臓の拍動が停止した人には救急処置を取らなければなりません。拍動が止まれば脳への血流もストップ。その状態が２，３分続けば脳の障害から死に繋がります。発作から救急車がくるまでの短い間に、適切な処置が行われるかどうか。それが生死を大きく左右するのです。
	【その１】声をかけ頬を叩いて意識の有無を確認。反応が無ければ救急車を呼ぶ。【その２】仰向けにして顎を持ち上げ、頭を後ろに反らして呼吸の出入り口を確保する。【その３】空気が漏れないよう親指と人差し指で鼻をつまみ、口移しで息を吹き込み、人工呼吸を行う。１回の人工呼吸は約２秒くらい。２回人工呼吸をしても胸や肺に動きがなければ心臓マッサージに移ります。【その４】心臓マッサージは腕を伸ばしたまま両手を組み、患者さんのみぞおちよりやや上を胸が５，６センチ沈むくらい強く圧迫します。これを１分間に８０～１００回のスピードでワンセット、全部で１５セット行います。こうして救急車がくるまで、２回の人工呼吸と１５回の心臓マッサージを交互に繰り返すのです。
心肺蘇生法を日頃から心得ておいて下さい。大切な命を救うために。