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2004年7月18日(日) テーマは
『カビによる皮膚病』

(今週のテーマは2003年6月8日に放送したものです。)
今回放送分のドクターQ&Aは、こちら

今週のドクター
今週のドクターは、
順天堂大学医学部 皮膚科学教室
比留間 政太郎先生



【略歴】

’74年 東京医科歯科大学医学部卒業
’78年 東京医科歯科大学大学院 医学研究科卒業
’84年 防衛医科大学校皮膚科講師等を経て
’97年 順天堂大学医学部 皮膚科講師

【ドクターの一言】
好きな言葉「正確、迅速、親切」をモットーに診療に専念しています。


【著書】
知って!シリーズD「水虫のこと」知って! 芳賀書店


CONDITION OF ILLNESS 病気と症状のメカニズム

データ 梅雨から夏にかけてムシムシ、ジトジトが続きます。こんな季節がだーいすき!と大喜びするのが・・・カビ!!その種類は10万以上と言われています。そのうち、人間の体に住み着くカビはおよそ200種類。皮膚に住み着く最も代表的なカビは、おなじみ、水虫。犯人は白癬菌。では、その白癬菌が増える様子をみてみましょう。白癬菌は、太さは、1ミリの200分の1。ケラチンというたんぱく質を栄養にして増殖するのが特徴です。実は、私たちの皮膚で、ケラチンがたくさんある場所は角質層。表皮の一番外側で、熱や寒さ、細菌などの外敵から身を守るバリヤの役割を果たしているところです。この大切な角質層、データ常に作り続けられています。この新しい皮膚の細胞は基底層と呼ばれる皮膚の深い場所で作られます。それがだんだん表面におしやられていく。これが新陳代謝。新しい細胞があがってくると、古くなった細胞はやがて死んでしまいますが・・死んだ細胞が折り重なっているのが角質層。では、白癬菌はどうやって角質層に住み着くのでしょうか?まずは、塵や埃に紛れていた白癬菌が皮膚の表面にくっつく。これがスタートです。くっついた白癬菌は、24〜72時間かけて、大好物のケラチンを栄養素としながら、角質層の奥に、根を張るように増殖していくのです。外にいる白癬菌のほとんどはすでに水虫の人が落としたもの。水虫は人から人へと広がっていきます。水虫がかゆいのは、白癬菌はケラチンを栄養にするとき、データケラチナーゼという酵素を出します。これでケラチンを分解します。このとき、リンパ球がたくさん集まり、炎症に似た状態ができます。これがかゆみの始まり。集まったリンパ球は、サイトカインという物質を出して、白癬菌を攻撃!!戦い疲れた白血球は死んでしまい、そのとき、たんぱく質を溶かす酵素を出します。水虫で皮膚がフニャフニャになったり、水疱ができたりするのはこのせいです。サイトカインには、新陳代謝を活発にして角質ごと白癬菌を追い出そうとする働きもあります。角質層は、常に一定の厚さに保たれるように古いものから垢になってはがれ落ちます。水虫になると皮がボロボロむけるのはこのためです。かゆみは、白癬菌そのものや、白癬菌が出す酵素、ケラチナーゼに対する一種のアレルギー反応です。だから、水虫といってもかゆくない人もたくさんいる。実際にかゆみが現れるのは、全体の3割程度といわれています。水虫になった、皮膚にあらわれる症状は、趾間型足の指の間の皮膚が白くふやけた状態になるものです。じくじくしたり、皮がむけたりします。続いて、データ小水疱型足の裏や指の間に赤いポツポツが現れ、小さな水泡ができます。そして、角質増殖型。小水疱型の水虫を放っておくと、角質が厚くなり、足の裏がかさかさして厚く硬くなり、ボロボロと皮がむけてきます。むけた皮には生きた白癬菌がウヨウヨ。感染の原因に!!さらに皮膚以外にもケラチンがたくさんある場所が存在します!!それは爪。水虫が長く続くと、菌が爪の中に侵入。爪は白く濁って厚くなり、ぼろぼろの状態になってしまいます。床に落ちている白癬菌から感染することが多いため本来なら全身にあらわれる症状ですが実際は、足が全体の85%手(手白癬)が2%、そして、残り13%は体にでるタムシ、頭にでるシラクモなどとなっています。実は最近、子供たちの間に新しい水虫が増えているのです!これは、もともとヨーロッパやアメリカにいたものなのですが、およそ2年前から柔道を習っている子供たちの間で見つかり始めました。新しい水虫。データそれはこのトンズランス。元々、髪のケラチンを好む性質のカビで、感染すると髪が抜けやすくなってしまいます。また、皮膚が擦れたところから入り込んで、水虫の症状を起こすこともあるのです!!さらに、ペットから人間にうつる水虫も…!!猫や犬の体毛にいるのが、カーニスと呼ばれる白癬菌の一種です。なぜか、猫や犬の毛を好んで住み着きます。猫や犬に症状は出ないのですが、データ人に感染すると強い症状が現れてしまいます。脱毛や、頭皮に腫瘍ができることさえあるのです!皮膚をおそうカビは白癬菌だけではありません。たとえばデンプウ菌。これは人間の体のなかに常にいる常在菌の中のカビの一種です。常在菌は通常、細菌などから私達を守ってくれています。しかし、デンプウ菌はふだんは毛穴の中に住んでいて普段は何もしていません。デンプウ菌は、汗と一緒に出る皮脂が大好物!!毛穴に皮脂がたまると、これを栄養にして増えるのです。増えたデンプウ菌は胸や背中に、カサカサした茶色、もしくは白っぽい斑点をたくさん作ります。夏場、汗っかきの人によくみられる症状です。皮膚につくカビには、表皮の下、真皮に住み着くものもいます。こういうカビは、多くの場合、皮膚の傷口から体内に侵入することが多いのです。真皮細胞の一部に成りすまして、増殖する曲者。そのうち周りの細胞を壊し始めるのです。その代表がこの黒色真菌。増えてくると腫瘍や結節をつくります。痛みやかゆみもないままに、どんどんカビに侵食される皮膚。しかし、悪化させるとこのような恐ろしいことになってしまいます!表面は乾燥しているので、慢性化しやすいのです。痛みやかゆみもないままに、データどんどん黒色真菌に侵食される皮膚。表面は乾燥しているので、慢性化しやすいのです。黒色真菌は、血管やリンパ管を通って全身に回る可能性があります!!脳に入ると脳腫瘍ができ、命の危険にさらされることも!!こんなこわーい黒色真菌と同じように真皮に住み着くのが…、スポロトリコーシス!土や植物の中によくいる、珍しくもないカビです。これも人についたとき、自覚症状はほとんどありませんが・・・。小さな傷が大きなかさぶたになったり…離れたところが腫れてきたりします。データこれはリンパ管を使ってカビが移動するためです。この男性は、指先をバラの棘でちょっと傷つけたことがきっかけで、スポロトリコーシスが入り込み、腕のリンパ節に沿って結節ができてしまいました!!水虫を始めとする皮膚につくカビ。あなどっているととんでもないことになることはおわかりいただけたでしょうか?

皮膚に病気を起こすカビ
表皮
白癬菌 すでに感染している人や動物からうつる
水虫の原因
癜風菌 顔・胸なその皮脂の多い所にいる常在菌
褐色または白っぽい斑点がたくさんできる
真皮
スポロトリ
 コーシス
植物や土の中の菌が小さな傷口から入る
かゆみや痛みのない結節ができる
黒色真菌 小さな傷から入り皮下に結節や腫瘍ができる
脳に転移して腫癌を作ることもある
EXAMINATION 検査
カビによる皮膚病の検査
カセイカリ鏡検法
  異常のある皮膚の最外層を顕微鏡で調べる
培養検査法
  白癬菌を培養して種類を調べる
メンタグロフィテス…症状は激しいが治りやすい
ルブルム     …症状は穏やかだが治りにくい
MEDICAL TREATMENT&MEDICINE 治療と薬
カビによる皮膚病の治療薬
外用薬 症状のある箇所よりも広い範囲に薄く丁寧に塗る
風呂上りに塗ると薬が皮膚にしみ込みやすい
内服薬 外用薬と組み合わせて使う
グリセオフルピン…カビの増殖を抑える
テルビナフィン
イトラコナゾール
細胞膜の合成を抑えカビの細胞を破壊する 
アムホテリシンB
…  細胞膜をはかしてカビの細胞を破壊する
FRONTIER 最先端技術
データヒトに感染するカビには、白癬菌のように表皮に住みつくものから、黒色真菌のように皮に住みつくものまでさまざま。糖尿病や白血病などで免疫力が低下している場合は、内臓に住みつく場合もあるんです。内臓にカビがついた場合、副作用の強い薬を使うしか方法がなく、治療は困難でした。そこにあらわれたのが、ミカファンギンという画期的な薬。昨年末のことです。これまでの薬、イトラコナゾールは、カビの細胞膜の合成は阻害するものの、内臓の細胞への吸収が不安定。アムホテリシンBは、カビの細胞膜は破壊するもののほかの細胞膜まで破壊するので副作用が強い、などという欠点がそれぞれにありました。では、データミカファンギンは…?細胞壁の主成分、βDグルカンの合成を阻害し、カビの細胞を破壊する働きがあります。ミカファンギャンは、なんとカビの細胞壁だけを選んで破壊するのです!本来、ヒトが持っていないβDグルカンにだけ働きかけ、カビだけを殺菌することに成功!!そうすれば大きな副作用もなく、安心して治療することができます!!ミカファンギン。他の薬との相性なども次々と報告されつつあり、ますます期待が高まっています!
SELF MEDICATION 自己管理
かびによる皮膚病。そのうち、データ最も多いのが、ご存知、白癬菌による水虫!水虫に悩む方の数は、推定1200万人。つまり国民の10人に1人という数。水虫でお悩みの皆さん。正しい薬の使い方をしていらっしゃいますか?皆さんに伺ってみました。



データ
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データデータ
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【水虫の薬の正しい使い方は?】
症状が出なくなったら、止めてます。
これはよくある間違い
治ったと思っても、皮膚の角質層の中で生き長らえているのが水虫!!薬によって白癬菌の活動が抑えられているだけです。皮膚の新陳代謝で、白癬菌は垢と一緒に剥がれ落ちますが・・・角質層がすべて生まれ変わるには、少なくとも3ヶ月!再発防止のためにも、症状が消えても、半年から1年は薬を続けるのが正しい使い方!!
【薬はいつお使いですか?】
お風呂あがり
正解です
風呂上りの角質は柔らかくなっているので薬がしみ込みやすいんです!!さらに、薬をしっかりしみこませるため、乾いたタオルで水分を完全に拭き取ってから薬を塗るようにしましょう!!
【薬はどのように塗っていますか?】
爪・指の間・かかとによく塗る
これも正解
水虫が広がるのを抑えるためにも、症状が出ているところの周りは、最低4〜5cmの範囲に薬を使うようにしましょう。塗り方は、広く、薄く、ていねいにのばすこと。液状の塗り薬の場合は、先端を軽く押し当てて塗ります。容器の先端をぎゅっと押して、中の空気を抜いておくと、薬が出すぎるのを抑えることができます。アイススプレータイプのものは3〜5センチ離れたところから1〜3秒噴射して使います。このタイプは冷却力が強いので距離が近すぎたり、長時間連続で噴きつけると、凍傷になる恐れがありますので注意してください。距離や時間は種類によって違うので、用法をよく読んで使うことが大切です。

これからの季節が水虫との戦いの正念場
薬を正しく使って、うまく水虫を治してください

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