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2004年7月4日(日) テーマは『虫垂炎』
(今週のテーマは2004年3月7日に放送したものです。)
今回放送分のドクターQ&Aは、こちら


今週のドクター今週のドクターは、
昭島病院 外科

上原 淳先生



【略歴】

    東京医科大学卒業後、東京医科大学大学院卒業
東京医科大学外科 第一講座勤務
’86年  

ネパール(ペリチェ)にて高山病を中心に医療活動

現在   恩賜財団東京都同胞援護会昭島病院 副院長外科学会専門医・呼吸器学会専門医・呼吸器内視鏡学会指導医 Infection Control Doctor

【ドクターの一言】
科学的で温かみのある医療を心掛けています。


CONDITION OF ILLNESS 病気と症状のメカニズム
病気の症状とメカニズム朝食後、みぞおち近くにふと感じた軽い痛み・・・「悪いものでも食べたかな…?」ところが時間が経つにつれて、痛みは激しくなるばかり!これはただ事ではナイ!! ・・と、病院にかけこむと…、虫垂炎、との診断が!!そう、日本人の15人に1人がかかるといわれる虫垂炎。でもよく聞くわりには、その実態は知られていないようです。発見が遅れると命に関わることも…。虫垂炎の最も特徴的な症状、それは、腹痛です。ほとんどの場合、まず、みぞおち周辺の広い範囲に軽い痛みを感じます。その痛みが、半日ほどで、下腹部の、特に右側に集中し始めます。病気の症状とメカニズムそのうち、痛みが増してきて、ただ、歩く、というような、ちょっとした動きだけでも響くような痛みを感じるようになっていきます。さらに症状が進むと、39度を超える高熱が出ることもあります。虫垂は、直径1センチ以下で、白く細長い形をしています。虫垂炎とは、文字通り、この虫垂が炎症を起こし、腹痛や発熱を引き起こす病気です。病気の症状とメカニズム口から入った食べ物は、食道から胃、十二指腸、小腸、そして、大腸を通って消化・吸収されます。小腸から大腸への入り口に当たるのが、盲腸です。そして、盲腸の先端にぶら下がるようにくっついている、袋状の突起、これが虫垂なのです。おへそと右の骨盤の出っ張りを結んだ線その外側から1/3のところに虫垂があります。長さは、わずか5〜10センチ。直径は1pにも満たない小さな臓器です。しかし、この小さな虫垂は、大切な働きをしています。虫垂の断面を拡大してみると…一番内側のヒダヒダになっている、病気の症状とメカニズム粘膜上皮のすぐ下に、非常に発達したリンパ組織を持っています。実は、虫垂の大切な役割とは、腸内の免疫機能のコントロール。私たちの腸の中には、およそ300種類の腸内細菌と呼ばれる細菌が100兆個以上いるといわれています。これらの細菌は、互いにバランスを取りながら、腸内の抵抗力を高めたり消化吸収を助けるなどの役割を果たしています。しかし、腸内細菌のバランスが崩れることもあります。ここで、虫垂のリンパ組織は、バランスを崩そうとしている細菌をすぐさま察知し、白血球を使って攻撃を行います。虫垂は、こうして、腸内の免疫機能を維持しています。喉の扁桃腺が、門番のように、外部からの細菌を監視していることは、皆さんもよくご存知でしょう。病気の症状とメカニズム虫垂は、働きも構造も扁桃腺と非常に近いことから、「腸の扁桃腺」とも呼ばれます。虫垂の炎症は、袋状になっている虫垂の内側が狭くなり、圧力が高くなることによって起こるといわれています。原因は、いまだはっきりと解明されていませんが・・・虫垂のある場所と発達したリンパ組織にその原因があるのでは?と考えられています。小腸から送られてきた食べ物は盲腸にたまり蠕動運動によって大腸の方へ送られます。ストレスなどが原因で、蠕動運動がうまく行われないと、病気の症状とメカニズム盲腸に食べ物が滞り、虫垂の入り口を塞ぎ始めます。やがて、食べものは、石のように硬くなって、袋状になっている虫垂の入り口が完全にふさがれます。すると、内側の圧力が上昇してしまうと考えられています。もう一つの有力な説がリンパ組織。虫垂のリンパ組織は、腸内細菌のバランスを保つため、活発に活動し過ぎると、次第に肥大し始めます。リンパ組織の肥大によって、虫垂の内側は狭くなり、圧力が高くなります。喉の扁桃腺が腫れやすいように、腸の扁桃腺、虫垂にも、ほぼ、同じことが起こると考えられています。虫垂の粘膜には、粘膜組織と、活動を維持するために必要な、酸素と栄養を送る毛細血管が通っています。虫垂内の圧力が高くなってくると、病気の症状とメカニズムこのうちの静脈、細静脈から出血が起こります。同時に、虫垂の粘膜組織が必要とする酸素が不足し始めます。これらは、虫垂の粘膜に備わっている抵抗力の低下につながります。そうなると、これまで、決して侵入を許さなかった腸内細菌が次々と粘膜に侵入し始めます。こうして、腸内細菌の感染によって虫垂の炎症が起こります。病気の症状とメカニズムこれが虫垂炎です。この炎症がひどくなると、虫垂が何倍もの大きさに腫れ上がることもあります。虫垂の炎症が、粘膜部分に限って起こっている場合には、症状が見られないこともあります。この状態を、カタル性虫垂炎といいます。漠然とした不快感や軽い痛み・・・。最初は、胃の調子をくずしたのかな?という程度。実は、虫垂に限らず、内臓には痛みを伝える神経はありません。だから、炎症を起こしていても痛みを感じにくいのです。粘膜に炎症が起こっている間も、白血球と細菌との戦いは続けられています。戦いによって、壊れた白血球や粘膜組織は、膿となります。炎症が悪化するにつれて、虫垂の中には、膿がどんどん溜まっていきます。虫垂内に膿が溜まった状態を化膿性虫垂炎とよび、最も典型的な虫垂炎です。もし膿が、虫垂を飛び出して、盲腸へとあふれ出すと、盲腸にも炎症は広がります。盲腸炎とは、虫垂炎が盲腸にまで広がった状態を指します。化膿性虫垂炎になると少し体を動かしただけでも響くような痛みが起こり始め、虫垂炎の最も特徴的な症状である、お腹の右下の激しい痛みが起こります。虫垂は、腹膜という膜によって覆われ、支えられています。虫垂自体は痛みを感じませんが、腹膜には痛みを伝える神経が張り巡らされているのです。炎症によって、虫垂そのものが腫れ、腹膜にまで炎症が広がると、はっきりとした激しい痛みを感じるようになるのです病気の症状とメカニズム。さらに、この状態を放っておくと・・・血液の循環障害が起こり、虫垂の粘膜層、あるいは壁全体が壊死してしまいます。すると、壊死した壁に穴があき虫垂の中に溜まった膿が外に漏れ出します病気の症状とメカニズムこのまんなかの白く盛り上がっている部分。これが、漏れ出した膿です。膿には、大量の細菌が含まれているため、腹腔という、内臓とお腹の壁の隙間から次々と炎症を起こします。それが、腹膜炎です。腹膜炎は、虫垂の周りに炎症が留まる場合と、腹腔全体に炎症が広がる場合があります。特に、腹腔全体に炎症が及んだ場合には、敗血症に陥るなど、死の危険も伴います。虫垂炎で最も恐ろしいのが、こうした合併症。時間がたてばたつほど、症状が悪化する虫垂炎。決して、「簡単な病気」と片付けてはいけません!

EXAMINATION 検査

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FRONTIER 最先端技術

最先端技術皆さんは、排便障害という障害があるのをご存知でしょうか?事故やひどい便秘などが原因となって、2〜3週間も便が排泄されず、肉体的にも精神的にも、大きな負担を強いられる障害です。しかも、長期間、便を貯めておく事は、大腸がんのリスクにもつながります。排便障害の治療は、通常、浣腸とマッサージ。3時間以上かけて、大腸の中を空にしていきます。治療にかかる長い時間を短縮するため、現在注目を集めているのが、最先端技術虫垂に浣腸液の入り口を作る「盲腸ポート」です。手術によって、浣腸液の通り道となるカテーテルを虫垂に差し込みます。この時、虫垂をカテーテルと一緒に盲腸の内側に入れ込みます。こうすると、何と虫垂が逆流防止弁の役割を果たすのです。カテーテルのもう一方の端を、おなかの表面に固定させ、浣腸液の入り口となります。浣腸液が盲腸に注入されると、わずか、15〜30分でスッキリ排便。最先端技術使わない時は、フタを閉じておくため、お風呂に入ることもできるんです。アメリカでは、過去10年間に3000人がこの手術を受け合併症などの報告は一件もありません。日本でも、すでに30人が受けた「盲腸ポート」の手術。注目されつつある、最先端医療です!

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自己管理盲腸』という呼び方で誰もが一度は耳にしたことがある病気、「虫垂炎」。おなじみなだけに、この虫垂炎・または盲腸に関して、巷にはたくさんの噂があります。では、虫垂炎のウソ!ホント?を探ってみましょう。
【スイカの種を食べると盲腸になる?】こどもの頃、『スイカの種はちゃんと出さないと盲腸になるぞ』と脅かされたこと、ありませんか?実はこの言葉、ヨーロッパの、「ブドウの種を食べると盲腸になる」という話から来ているんです。19世紀以降、ヨーロッパでは虫垂炎・盲腸の手術が盛んに行われるようになりました。そんな中、壊死を起こした盲腸の先で小さくなっていた虫垂を見て、ブドウの種と見間違えた医者がいたんです。この思い込みによって、ブドウの種が盲腸の原因だという説が広まりました。自己管理その後、腹痛を起こした患者の盲腸から、スイカの種が!そこで、“スイカの種を食べても盲腸になる”と言われるようになったのです。しかし!虫垂炎は、粘膜への細菌感染が原因。スイカやブドウの種が詰まっても虫垂炎は起こりませんよ。つまり、これはウソ!
【虫垂は何の役にも立っていない?】虫垂は、長い間、その働きがわからず、退化した臓器と考えられていました。しかし、発達したリンパ組織を持ち、自己管理腸内細菌のバランスをとるという大切な役割を果たしていることがわかってきたのです。ただし、たとえ手術で虫垂を取り除いたとしても、腸内の免疫機能が低下したという報告はないようです。小腸や大腸の少数のリンパ組織が肩代わりを始めるとの説もあります。『虫垂は何の役にも立っていない?』、これもウソ!
【おならが出ると全快?】自己管理『手術後におならが出ると全快?』尾篭な話で恐縮ですが、『手術後におならがでたら全快 ・・・』こんな話、聞いたことありますよね。実は、虫垂に炎症が起こると、その影響で腸内の食べ物やガスを送る蠕動運動がうまく行われなくなります。炎症の悪影響がなくなると、自己管理蠕動運動が再開され、腸内に溜まっていたガス、つまり、おならが排泄されるのです。というわけで、『手術後におならが出たら全快?』これはホント!そもそも別物の虫垂炎と盲腸。知っているようで知らなかった虫垂炎の実態、おわかりいただけたでしょうか?

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