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2004年6月日(日) テーマは『高血圧と腎臓』
(今週のテーマは2004年1月4日に放送したものです。)
今回放送分のドクターQ&Aは、こちら

今週のドクター 今週のドクターは、
新宿水明クリニック
竹中 恒夫先生



【略歴】

昭和58年慶應義塾大学医学部卒業、同内科入局。
平成2年よりマイアミ大学、チュレーン大学医学部留学。
平成5年大和市立病院内科医長。
平成6年より現職。
平成8年より埼玉医科大学非常勤講師

【ドクターの一言】
病状の診断、治療のためにも、まずは患者さんの訴えをよく聞き、
徹底的に話し合う事。カルテはすでに全面開示を実施。患者さんが
納得された上で、予後改善が期待される治療を実施しています。

当院のホームページのアドレスは
https://www9.ocn.ne.jp/~suimei/suimei_001.htm
ご質問等ありましたら、お気軽にどうぞ


【著書】

メディクイックブック 患者さんによくわかる薬の説明 金原出版
臨床看護 輸液読本 へるす出版
JAMA日本語版 腎障害の進展を抑制するための降圧薬療法


CONDITION OF ILLNESS 病気と症状のメカニズム

命をおびやかす重大な病気!できることなら避けて通りたい。これらの病気を引き起こすのが・・・高血圧。 まさしく病の源。日本人の成人、3300万人が高血圧の疑いがあり、その割合は、なんと3人に1人。高血圧の原因は、肥満や塩分などいろいろありますが、実は、カギは腎臓にあり。腎臓こそ、高血圧と関わりの深い臓器なのです。血圧は、できることなら正常に保っておきたいもの。ご存知のように、血管にかかる圧力、血圧の正常値の基準は日本高血圧学会によると最高血圧130未満 最低血圧85未満。この値を超えて、なおかつその状態が続いていることが、高血圧です。高血圧になってしまう原因は遺伝、そして生活習慣。もし、一時的に血圧が高くなったのなら問題ありませんが、長い期間に渡って高血圧の状態が続くと・・・
動脈硬化を促進させたり脳血管障害心筋梗塞といった重大な病気の原因となるのです。なかでもその影響が強くあらわれるのが腎臓!
左右1対あるソラマメ型の腎臓の働き、一つは、血液の老廃物を取り除いて尿を作ること。毛細血管が集合している腎臓には、糸球体というフィルターが存在します。
この糸球体が集まったものが腎臓なのです。この糸球体は、血液をろ過する働きを担っています。赤血球やたんぱく質はここで残されて静脈へまわされて、体内で使われます。残りは余分な水分と共に、尿として尿細管に送られます。 ひとつの腎臓には、なんと100万個もの糸球体があります。毛細血管でできている糸球体が集まった腎臓。つまり、腎臓そのものが毛細血管の集合体であるといえるのです。この毛細血管の固まり、腎臓は実は、血圧の調整も行っています。もし、血圧が低下すると糸球体にある細胞は、すばやく血流の減少を感じ取ります。すると、腎臓は「レニン」というホルモンを分泌します。このレニンがアンジオテンシンという物質を作り出し血管へ運ばれ血管の外側の平滑筋を収縮させて血圧を上げるのです。血液を浄化して、血圧を調整してくれる腎臓。では、逆に、血圧が高くなると腎臓にどんな影響が現われるのでしょうか?
毛細血管のかたまりである糸球体は一度に大量の血液が流れてくると簡単に壊れてしまいます。そのため腎臓はいつでも糸球体の血圧を50の状態に保つ必要があるのです。
「糸球体の血圧、50」を維持するために働くのが輸入細動脈。血圧が高くなって血流量が増えると、この輸入細動脈が収縮して糸球体への血流量を制限するのです。
輸入細動脈はちょっとした血圧の変化もキャッチして常に働きつづけています。しかし、血圧が高い状態がずっと続いていると輸入細動脈への負担が大きくなって血管がボロボロになり動脈硬化を起こしてしまいます。すると今度は輸入細動脈の血管が狭くなって血流量が減少してしまいます。こうなると腎臓は、血圧が下がっていると勘違いして血圧を上げるホルモン、レニンを分泌してしまうのです。すると、血圧が上昇、動脈硬化も更に進み、血流がまた減って、またもやレニンを分泌! またまた血圧があがる、というまさに悪循環が起こってしまいます。このままの状態が続くと動脈硬化は進み、やがては腎臓への血流が途絶えてしまいます。血液が流れ込まない糸球体は線維化して腎臓は硬く小さくなってしまう・・ 
これが、こわい腎硬化症です。腎硬化症の初期には自覚症状がありませんが病気が進行すると、足がむくんだり・・・ひどい肩こりがあったり・・頭痛やめまいを感じるといった症状が現われます。
さらに腎硬化症をそのまま放置するとやがて腎不全につながり、死の危険さえあるのです。高血圧が原因で腎臓病へとつながってしまう。その逆もあります!腎臓病から始まる高血圧。それが腎のう胞です。ここには遺伝が深く関係しています。腎臓の細胞の間に袋状の細胞の塊ができてしまう。これが腎のう胞。塊が1つなら良いのですが、年齢を重ねるごとにその数や大きさが増えてしまうのです。腎のう胞が増えてしまうと正常な輸入細動脈を圧迫して先ほどのような悪循環が始まります。その結果、高血圧を引き起こしてしまうのです。また、動脈硬化が直接の原因となって高血圧になることもあります。腎臓と大動脈を結ぶ腎動脈に動脈硬化が起こると、腎臓そのものへの血流が減ってしまいます。動脈硬化が原因となって先ほどのようなお馴染みのケースで、血圧が上昇するというわけです。こうした高血圧を腎血管性高血圧と呼びます。高血圧から腎臓病、腎臓病から高血圧、どちらがきっかけであっても悪循環によって、気づかぬうちに病気が進行してしまうのです!


EXAMINATION 検査

EXAMINATION 検査

FRONTIER 最先端技術

慢性腎炎や高血圧による腎硬化症が悪化すると起こるのが腎不全!命に関わる病気です。現在のところでは主な治療法は対症療法である人工透析。患者さんへの負担も大きい治療法です。腎臓移植も行われていますが移植したとしても、新しい腎臓がうまく働くか、拒絶反応は? といった不確定な要素が多いのが現実です。しかし、ついに、新しい治療法を切り開く可能性が生まれました!カギになるのが体性幹細胞です。現在医療界でも注目されているのはES細胞と呼ばれる「胚性幹細胞」、これは培養によってあらゆる臓器や器官を作り出せる可能性がある夢のような細胞です。しかしこの「ES細胞」は、培養に時間がかかったり、思ったとおりの臓器にならなかったり、などといった難しさがあるのです。それに対して、「体性幹細胞」は、既に出来あがっている器官や臓器にある未分化細胞。培養によって特定の臓器や器官へと変化します。この体性幹細胞なら、腎臓を再生することも可能だというわけです。2003年10月帝京大学と早稲田大学の研究グループはマウスの腎臓の細胞からこの体性幹細胞を取り出す事に成功しました。取り出した細胞をおよそ3週間培養したところ見事に、腎臓の血管や尿細管のような組織を作り出す事に成功したのです。更に、遺伝子を分析したところ、実際の腎臓細胞や血管細胞とまったく同じ遺伝子を検出。この技術を応用すれば自分の腎臓を元にして新しい腎臓を作り出せる可能性があるのです。
根本的な治療が待たれていた腎不全にも応用できるのではないか・・・と期待が高まっています。

FRONTIER 最先端技術
高血圧を防ぐ。その第一歩は、やはり自分の血圧をしっかり把握しておくこと。
現在は家庭で手軽に使える血圧計が普及しています。持っていらっしゃる方も多いのではないですか?しかし、ご自分の血圧あなたは正しく計っていますか?血圧は1日中同じではありません。ですから、いつも決まった時間に測るようにしないと、正確に自分の血圧を把握する事は出来ません。お薦めは朝!ただし血圧が変動するので測定前の食事や運動、喫煙、入浴は避けましょう。さらにカフェインの入った飲み物も避けてください。では測り方。15分安静にした後、椅子に座って計ります。心臓の高さにおいたカフは巻き終わったあと指1本入るくらいがちょうどいいきつさです。正しい方法で毎日計ることを習慣にしましょう。
高血圧は遺伝が大きく関わってきます。もしあなたのご両親のどちらかが高血圧だった場合は注意が必要です。高血圧だけでなく、家族に心筋梗塞や脳血管障害を起こした人がいる場合は、さらに要注意です。
高血圧の場合、腎のう胞などの病気を発症する人は血管にトラブルを起こしやすいというデータがあります。特に注意しなければいけないのが脳動脈瘤が原因で起こる「くも膜下出血」。そんな家族歴があるという自覚のある方は、脳を調べるMRAなどを一度は受けておきましょう。遺伝性の高い高血圧を避ける事はとても難しいことです。
しかし、健康管理によってそのリスクを減らす事は難しくありません。あなたの体、あなたが自覚することからすべては始まります。

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